第14回 映画部記録(2021/11/11実施)
『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』(2021年・日本)
公式サイト:https://sumikkogurashi-movie.com/
監督:大森貴弘
脚本:吉田玲子
ナレーション:井ノ原快彦
本上まなみ
予告:
参加者
T.H、小林、K.Y、O.K、加藤
T.H
すみっコたちのかわいさ:★★★★★
報われないエピソード度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
報われない結末に憤る人が続出した、見た目とストーリーの乖離っぷりが話題となった映画「すみっコぐらし」の続編です。
といっても、メインキャラが一緒なだけでストーリーはまったく別の日の話。
ものすごく深読みをしていけば、それぞれのキャラが持つ悩みに共感できる部分も出てきます。ただ、作者はおそらくそんな大人の深読みを期待しているわけじゃなく、キャラを作る際に、身近にいるそういう「すみっこに行ってしまいそうな人たちの特徴」を拾ってヒントにしたんだろうとも思うんです。
この部分をどっちにとらえるかで、「すみっコぐらし」の映画は見る人によってまったく逆の感想をもたらします。
「相手のためを思って」やったことの末路
そして、今回の主人公は、魔法がうまく使えない魔法使いの「ふぁいぶ」。すみっコたちのところにやってきて、すみっコたちの悩みを解決したくて使った魔法が、いろいろな問題をさらに引き起こします。
「相手のためを思って」やったことがプラスにならない例は2通りあります。
ひとつは、相手にとって直接的にマイナスになってしまうこと。「余計なお世話」ってやつで、これはやった側の失敗です。
もうひとつは、本当は相手にとってもプラスになることなんだけど、相手が直視したくなかったり、認めたくなかったりして結果的にマイナスになってしまうこと。善意が悪意に感じられてしまうようなケースですね。
そしてやっかいなのは、この「魔法」はその人自身を変えてしまうということです。その場だけで済むことじゃなく、永続的にその人の行動を変容してしまうので、なんとか解決しないといけません。
キャラに与えられた境遇を「不幸」と思うと見られない映画
「すみっコぐらし」は、ひとりひとりのバックストーリーはほぼひとことで終わるものですが、実はその裏にある「秘密」が作品ごとに少しずつ描かれていきます。
ただ、それが多分子どもにはとてもわかりにくいかたちでしか表現されません。大人ならわかるいろんな心の機微は、小学生くらいの子どもたちにはシンプルにしか伝わらないでしょう。
だから、今回のお話は、ドジな魔法使いが使った魔法で、みんながおもしろおかしくかわっちゃった。でもそのことで、ちょっとだけ悲しい境遇の子もいた、くらいなのだと思います。
子どもたちは多分この映画を、まさにカメラマンとおなじ立ち位置で見ていると思います。つまり、感情移入するのは魔法で変えられたすみっコ側ではなく、そんなすみっコたちと一緒にそれを見ている人=カメラマンの立ち位置で物語には登場しない誰か。
なので、すみっコひとりひとりに感情移入することは、多分この映画を見るときには余計なんでしょう。まあ、大人はえてして、子どもの思いに共感したりしてしまうので、仕方ないんですけど……
そういう意味で、この作品を見るときに大人的な目線ですみっコたちを「かわいそう」な子たちとして「おもんぱかってしまう」と、作品の本質が見えなくなってしまう気がします。
いろんな境遇の子たちがいて、ちょっと傷ついてるけど、みんなでなかよくやってるお話。
それくらいの感度まで下げて見てみると、素直に楽しめるような気がします。かくいう自分は、そんなに感情移入せずにふわっと見ることができました。
誰の立場に寄り添うのかで、見ている人の感想が大きく変わる、そんな作品なのかなと思います。
小林
キャラクター癒され度:★★★★★
呪いの恐怖度:★★★★★
考えさせる良い映画度:★★★★★
夢と呪い
昔仮面ライダー555という番組のキャラが「夢は呪いだ」と言ってた。ミュージシャンになるという叶わない夢に呪われ続けるというシリアスなストーリーだった。
今回のすみっコの映画では、見習い魔法使いがすみっこたちに魔法をかけた。どんな魔法かと言うと、叶わない夢を消す魔法である。叶わない夢は消してあげた方が幸せなはずだ。
そのせいで魔法をかけられた、すみっコたちはキャラが変わってしまう。
魔法をかけられていないすみっコたちは、キャラが変わってしまったすみっコ達を元に戻そうと奮闘する。
夢とキャラの設定が結びついているのは面白い。夢がすみっコたちの生き方やキャラ付けをしているので、夢がなくなってしまうとすみっコ達は別なキャラになってしまう。
この映画の中では叶っていない夢でも、それがすみっコたちらしさなのだから、夢を消してはいけないとなる。
でも現実はそうなのだろうか……。
いつまでも役者の夢やミュージシャンの夢を追い続けて、周りに迷惑をかけている人も呪われてるんじゃないかと思う。
もうその生き方しかできないって、突き抜けられる人もいるけど、自分を変えられないって思いこんで不幸そうにいつまでも役者やミュージシャンをやっている人もいる。
同じ呪いを同じタイミングで受けていると演劇ユニットだったり、同じバンドのメンバーだったりで仲良くなることもある。
でも呪いが少しずつ解けていくと1人また1人と去っていく。呪いが解けても一緒にいられる友達とは違うのだ。
すみっコたちは夢の世界の住人だ。彼らはいつ会いに行っても、同じ姿で同じ性格で同じ夢を同じメンバーで見ている。だから僕たちは癒される。安心だ。
でも現実の僕らは、同じ夢を見ていても、歳もとるし、それぞれ違った病気になり、少しずつ変わりながら生きていく。
現実は厳しい……。
だからこそ、すみっコたちキャラクターはいつまでも変わらない姿で、私たちに夢を与えて欲しい。
K.Y
癒し度:★★★★★
トカゲ度:★★★☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
絵本をよんでもらっている感じの癒しがある映画
すみっコたちが平和に暮らしている感じがすごい癒されます。
少し癒され過ぎて、うとうとしそうになるかもしれません。
多少のトラブルは起きていますが、進撃の巨人などに比べると平和!
ただ、刺激は少なめでした。
仕事帰りだと、うとうとなります。
途中、とんかつの端を見て、とんかつ食べたくなったのですが、脂身らしく、申し訳ないですけど、食べる気がしなくなりました。
そのため、星3つです。
加藤
癒され度:★★★★★
応援したくなる度:★★★★☆
夢ってなあに?度:★★★☆☆
古傷えぐられた度:★★★★☆
総評:★★★★☆
待望の『映画 すみっコぐらし』の第2作。
個人的に心に傷を負わされた前作のことはほぼ無かったことになっているのか、平穏なすみっコたちの日常から始まりました。
すみっコスーパーの新装開店大安売りやら、すみっコたちがいつも遊んでいる公園やら、キャンプで行った「すみっ湖」の紹介に、そこに住むすみっしーととかげの関係など、とにかくすみっコたちの毎日が盛りだくさんの前半。
そういえば、こんな世界観だったよなぁ……とぼんやり、ふわふわ。
いろいろおかしなところもありましたが、それもすみっコぐらしの醍醐味。メインすみっコたち以外は、ちいかわみたいに顔なし・モノクロになっていても気にしてはいけません。
誰かの立場に立つ難しさ
今回のゲストキャラクターは、5年に一度の青い満月の夜にすみっコたちの街に遊びに来る魔法使いのきょうだいたち。
5人きょうだいで、名前から上から順に「わん」「つー」「すりー」「ふぉー」「ふぁいぶ」です。上の4人はそれぞれ得意な魔法がありますが、まだ小さな「ふぁいぶ」はまだまだ上手にできないようで……とにかくいろんな失敗をします。
ティーセットを出すつもりがバケツを出しちゃったり、ホールケーキのカットすらうまくできません。
しょんぼりと落ち込むふぁいぶを、わんたちは優しくなぐさめてフォローしてくれます。このときのふぁいぶの気持ちは、うれしいよりもきっと「なさけなさ」が勝ってしまうんだろうなぁ……と、ちょっとだけ悲しくなりました。
こちらから見れば、「ふぁいぶ」はまだまだ小さくて、そんな背伸びしなくていいよ~できることからやっていこう? って思います。それはきっと、わんたちも同じ。だから、フォローしてくれるのでしょう。とってもかわいい末っ子なのです。
そんななか、いろんな手違いですみっコたちの世界に残ってしまったふぁいぶ。すみっコたちは優しいけれど、気軽に頼れるきょうだいたちはいません。
ふぁいぶはきょうだいたちの前でも“きちんと頑張れるコ”。でも、これまでとは違う環境で“きちんと頑張る”って疲れちゃいます。