映画部活動報告

月1くらいで開催される映画部の活動報告場所

第11回 映画部記録(2021/7/9実施)

SNS -少女たちの10日間-』(2020年・チェコ

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

公式サイトhttp://www.hark3.com/sns-10days/

監督:バーラ・ハルポヴァー
   ヴィート・クルサーク

概要:
巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋で、幼い顔立ちをした3名の女優(18歳以上)は偽のSNSアカウントで12歳のふりをするという任務を与えられた。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

各々の部屋のPCで、連絡をしてきたすべての年齢の男性とコミュニケーションを取る。当初のプロジェクトと同様、大多数の成人男性は性的な要求をし、なかには恐喝する者もあらわれる。

精神科医、性科学者、弁護士や警備員など専門家の万全なバックアップやアフターケアを用意しながら撮影を続けること10日間。児童への性的搾取者が徐々に尻尾を出し始める……。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

現代の子どもたちが直面する危険をありのまま映し出した恐るべきリアリティーショーは、SNSと常に接するジェネレーションZ世代やその親たちに恐怖と共に迎えられ、本国チェコでドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録。児童への性的搾取の実態を描いた映像として、チェコ警察から刑事手続きのための映像が要求された。

実際の犯罪の証拠として警察を動かした大問題作である。(公式サイトより引用)

予告


参加者
小林、K.Y、加藤

小林

映画を見終わった後、気まずくなる度:★★★★★
男たちのモザイク顔が夢に出てくる度:★★★★★
もう一度見たい度:★☆☆☆☆

気持ち悪いのその先へ

この映画には気持ち悪い男がたくさん出てくる。

SNSで知り合った12歳の少女(という設定の女優)に対して卑猥な言葉や画像を投げたり、卑猥な行為を見せつけてくる。

もはや気持ち悪い男の動物園だし、そんな男たちが次から次へと出てくる。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

撮影に関わった弁護士はそういう男を取り締まらないプラットフォーマーを問題視する。

映画が進むにつれて、スタッフの知り合いで子供キャンプ運営者の男が、SNS上では卑猥な行いを少女たちに行っていることを発見する。

最後はその男の自宅に押し掛けて悪事を追及するところで終わるー。

あぁ気持ち悪かったで終わる映画。
こんなことが現実に起きていた事実には驚かされるが……そこまでで終わる映画、いやこれは「ニュース」である。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

なぜ監督は12歳の少女に群がる男たちにインタビューをしないのだろう?
なぜ子供キャンプの運営者はプライベートで少女と遊んでいるんだろう?子どもたちはいつも周りにいる。
なぜSNSを運営する会社に取材に行かないのか?
なぜ少女たちはSNSで中年男性と話すのか?
この問題の本質は何なのか?性欲なのか、浮かばれないストレスフルな社会なのか、テクノロジーの発展に伴う新たな恐怖なのか。

様々な展開が考えられるのに、この映画はとても表面的な「気持ち悪い男たち」の先には進んでいかない。

途中12歳の少女に対して性的な言葉を発しない、画像を送らない、ただ友達になりたいという男が出てくる。

スタッフや監督はこんな良い男性がいたなんてと涙を流しているが、お前らはバカなのか!と言いたくなる(笑)

卑猥な言葉や行為がなくても、言葉巧みな大人たちに騙された友人はいなかったのか? 自分で体験してこなかったのか?

すごく表面的な部分で映画は進行していく。

この映画を気持ち悪い男に見せたとしても、「僕はそこまでやっていない」で終わりである。

人は冷静には自分の行為を振り返れないし、自分だけは特別だと思っている。
この映画を気持ち悪い男たちに見せても、猥褻な行為は阻止できないし、この映画を見ても少女に猥褻な行為を行う男たちはいると思う。

多分この映画の賞味期限は短い。スカイプfacebookを誰もが忘れてしまったときには、もはやこの映画を誰も見ない。
というか1回しか見ないけど(笑)

もしもっと踏み込んだ議論に映画が進んでいったら、この映画は100年生き残れたかもしれない。

気持ち悪いのその先に、気持ち悪い男たちの数を本当に減らせるきっかけが見つかるかもしれない。

大人たちはもっと深く考えないといけないし、子供たちにも深く考えて欲しい。
そんな深い映画を大人と子供もみんなで一緒に見なきゃいけない。

K.Y

不快度:★★★★★
おすすめ度:×

ドキュメンタリーだからとんでもなく不快。これ以上不快な映画は無いと思う。

児童の性的な虐待がテーマ。

12才の少女がSNSを顔出しでやったらどうなるかと言うドキュメンタリー映画(※実際は童顔の成人女性が12才に扮してSNSに登録)。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

「変な人たちを見てみたい」程度の甘い考えでみてはいけない。

「変な人たちを見てみたい」とは、ある種の狂気をみてみたいという意味かと思うが...…この映画に出てくる人は、「ただただ不快な変態」だけ。

狂気は狂気だが、底が浅く、ただただ変態なだけ。そんな人たちが何人も何人も出てくる。

通話をしたら、「脱いで」だけ。会話もみんなワンパターン。ただただ不快でただただ変態。

児童の性的な虐待の実態を知りたいのでしたら、本を読むことをおすすめします。

この映画は真面目に検証しようとしている。しかし、世の中には変態が多すぎた。ただただ不快だった。

人間ってここまで、気持ち悪くなるんだなぁと、ただただ不快だった。

加藤

2度は観たくない度:★★★★★
覚悟をしてみたほうがいい度:★★★★★
総評:★★★★☆

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

久しぶりに映画を観て、“胃が重たく”なった。

グロ系の映画は何回か見れば感覚がマヒするから、大体どんな映画でも観れるようになるが、この手の映画は本当に耐性をつけることができない。

作り手が伝えたい“シンプルすぎる”メッセージ

この映画が何を伝えたいのか。

これはとても明快で、「ネット上で子どもに対して性的なメッセージを送っている輩がいる。これおかしいよな?」ということだけ。

1年に何回かは、日本でも未成年者に性的な写真を送るように言って……などといったニュースは耳にする。そのたびに、「またか、バカだなぁ。」と思うのは私だけじゃないだろう。

でも、こんなに軽く思えるのは完全に他人事だから言えることなのだと、この映画で自覚させられた。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

どこまでがノンフィクションなのかはわからないが、それでも「ありえない」と思わなかったのは、この映画が映していた光景が非日常と言い切れないことを知っているから。

自分が経験をしていないことでも、「このくらいのことをする人は普通にいるだろう」という想像が容易にできる。

「どこまで本当なのかな?」

というのは、観終わった私たちの口から自然とこぼれた言葉だが、少なくとも私は“現実だとは信じたくない”気持ちが含まれていた気がする。

“大人の責任”はどこに?

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

この映画では、少女に対して性的な要求や写真を送り付ける大人の男性=オオカミの姿を、隠すことなく映している。

鑑賞をするとなれば、そのやりとりを私たちも強制的に見せられることになるが、これが本当に苦しかった。

性的な写真もそうだし、送られてきたメッセージも本当に酷いものばかりで、気持ち悪すぎて、見ながら胃のあたりがズキズキした。まさに、「性暴力」という言葉がぴったりだった。

何とは言わないが、誇張なしに一生分は見たと思う。

大人であってもこんなにヘビーなのに、子どもが、誰にも相談ができない・しづらい状況でこんなものを送り続けられたらどんな気持ちになるだろう。

この人たちは、どうして自分のことだけしか考えられないんだろう。

さまざまに湧いてくる感情のなかで特に強かったのは、「怒り」だ。

子ども時代の出来事は、そのあとの人生に大きく影響を及ぼすことは大人なら誰もがわかっているはず。それなのに、子どもなら自分のいうことを絶対に聞いてくれるからという理由で踏み荒らしていく様が本当に許せなかった。

そんなことをしているのに、子どもに関わる仕事をしている人もいて、これには呆然とした。

頭おかしいんじゃないの? 脳みそ入ってる?

言葉は悪いが、かける言葉がそれ以外に見つからない。

子どもは未来だから大切にしよう! なんて綺麗ごとを言う気はない。しかし、子どもが大人の悪意に傷つけられることは、あってはいけない。

なんでそんなことも分からないのだろう。

全員つかまって、一生出てこなければいいのに。

異常事態を浴び続ければ感覚はおかしくなる

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

おぞましい性的なやりとりがSNS上で繰り広げられている場面で、スタッフも女優もケラケラと笑っていたことが印象的だった。

たしかに、オオカミたちが起こすアクションは冷静な目で見れば面白い。50歳、70歳の男たちが12歳の少女に向かって「年の差なんて関係ある? 愛してるよ、裸見せて」などと言っている姿なんて、なかなか見れるものではない。

そう思えば、笑えることは確かなのだが、みんな感覚をおかしくしなければ見ていられないのかもなぁとも思った。

そんななか、一人だけオオカミとして扱われない青年が登場した。

この青年は現実世界として見ればまともなことを言っているが、彼も彼で12歳の少女にSNS上で接触していることは事実。異常である。

しかし、みんなが彼の言葉に涙を流して感動し、単純な私もつられて泣いてしまった。

異常な状態を目の当たりにし続けると、感覚はいとも簡単にバグってしまう。性的な要求をしないだけで、なんていい人なんだ! と感動してしまう。

でも、この感覚は完全に危ない。

「この人なら大丈夫かも。」

すんなりと受け入れてしまうその感覚こそ、実は一番疑わなければいけないものなのかもしれない。

とにかく、ショッキングな映像が続くから、気軽に「観てほしい! 」とは勧められない。でも、私の知っている地獄を見てほしい気持ちはあって、語りたいことも確か。

私は、この先この映画をもう一度観ることがあるのかは分からないけれど、この映画に叩きつけられた“弱者として生きる窮屈さ”は忘れられないと思う。

※2021/7公開。2022/7/10再編集。動画・画像はお借りしています。