第21回 映画部記録(2022/9/30)
『インクレディブル・バルク』(2022年・日本)
監督:ルイス・ショーンブラン
脚本:キース・シャフナー
キャスト:テレンス・ローディング
シェヴァウン・カストル
ランダル・マローン
ジュリエット・アンジェリ
ジェド・ローウェン
メガーン・ファルコネ
予告:
参加者
T.H、O.K、加藤
T.H
なにがどうしてこうなった?
3DCGの進化を確認できる度:★★★★★
悲しい恋の結末度:★★★☆☆
記憶に残らない度:★★★★★★★★★★
90年代の3DCGを回顧できる作品
20年ほど前、ゲーム業界に3Dがブームになったことがあった。その時に同時に模索されたのが3Dの映画。ポリゴンなどを駆使した映像は、作る手間がかかる割にクオリティが低く、当時は背景や一部のオブジェクトにしか使われていなかった。
その技術がいち早く採用されたのがゲーム業界。インタラクティブに動かせるキャラクターが、立体として存在し、当たり判定などもよりリアルに近く(決してリアルではない)なっていった。
この「バルク」という映画も、そんな時代を経験してきた人たちのノスタルジーから生まれたんじゃないかと思う。
バルクの動きのパターンはほとんど使いまわし。多分3パターンくらいしかなかった。街の映像などのクオリティは当時の3D作成ソフトのそれよりもはるかに劣る。これを2000年代に作るということは、メールの時代に手紙を書くことと似ている。だからこそ、その古さに共感し、新鮮さを感じるのだろう。
今の時代にこれだけ稚拙に見せることが逆にどれだけ難しいか。当時を知る人ならよくわかると思う。
例えば、3Dのゲームとして一世を風靡した「Dの食卓」
サターン初期に発売された「真説・夢見館」
なので、このあたりを経験してきた人からすると、意外とまあこんなもんか、と思えてしまった。「下手くそ3Dで作ったよ、面白いだろ、ハッハー」という監督があえて狙ったであろう出オチで、まったく笑うことができなかった。
小物の科学者の悲哀を感じる
ストーリーは、科学技術開発に取り組む若者、その恋人、恋人の父親で彼の研究に期待している(実は利用している)学者というしごくシンプルなもの。結婚を申し込むために実績が欲しい、でもその要求が高く焦った彼は禁断の果実を……という話で、原作とはちょっとテイストが異なる。
残念ながら、研究自体にも学者の思惑にも、どこにも大義がない。父親も実績を上げればよりよい待遇になれると期待している時点でやはり下っ端であり、研究が成功したとしても何もなしえなかっただろう。世界征服くらい考えてほしかった。
残念ながら、最後の展開もごちゃごちゃしていてあまり記憶に残っていない。それくらいストーリーのスケールも小さければ、世界の中で起きた事象としても大したことはなかった。
その意味では、実は国家レベルの殺人兵器にもなりえた「ウィジャシャーク」や「ランドシャーク」の方が、圧倒的なスケール感を感じさせてくれただけマシだった。
こんな感想など、誰にも全く役に立つものではないが、当時の3DCGの技術を思い出してみたい人は流し見するくらいはいいかもしれない。ただ、誰にも何にも残らないし、ただの時間の無駄だ。監督自身もわかっているだろうから、レビューに星ひとつだけ残してあげて、あとはそっとしておいてあげてほしい。
加藤
世界が求めしZ級映画:★★★★★
期待超えてきた度:★★★★☆
もう一度観たい度:★★★☆☆
Z級映画に求めるクオリティ
Z級映画に求めるのは、壮大な世界観でも、素晴らしい映像美でもない。監督や役者のひたむきさのみである(個人の意見です)。そこに、空回り要素もひと振り……となると最高。陳腐さがたまらない。
ということで、本作の感想。正直、期待以上の映画である!
サメ映画界隈に現れた某ミスティック・シールドお父さんをじわじわと楽しんでいたところに投下された「インクレディブル・バルク」。Z級映画界隈でも大いに話題になった。
それもそのはず、予告の映像があまりにも過ぎるのだ。この映画のクオリティは「ウィジャ・シャーク」以下だろう。きっと眠くなるはずだ。
そう思っていたが、2回も鑑賞した今となっては、そう考えた自分に張り手を食らわせたい。
何度見ても、冒頭の10分で死ぬほど笑えるのである。前回見ていたときも急に始まった公園での鬼ごっこに「死ぬwwwwww」となりながら見ていたが、やはり今回も「死ぬwwwwww大好きwwwwwww」となった。こんな冒頭から陳腐さと意味不明さで笑わせてくる映画を他に知らない。ヒャッハーくらいかな? でも、あの映画そこまで意味不明でもないんでね……比べるのはちょっと違うというか。
“安っぽさ”を楽しめるか否か
予告を見ればわかる通り、戦闘シーンはもちろん背景までフルCGである。めちゃくちゃ安っぽいタイプの。分かってはいたものの、しかしネズミや犬までCGだとは思ってないから!しかも、ブサイクってどういうことなの……映画史上ナンバーワンの可愛く無さでしょ、この犬。
最終的にはゴブリンまで出てくるし、トカゲはPCをいじってるし、何をしたいのかさっぱり分からない。どうして、こんな意味の分からないCGが出てくるのか謎なんだけど……大量にCGを発注したものの、使わなかったからと登場させたのだろうか。見るたび、思い出すたびに不思議で仕方がないんだよな。
そして、ロケットぶっ放しシーンにも触れておきたい。私はセックスの隠喩表現だと思っていたんだけれど、全然そんなことはなく。物理的にロケットをぶっ放していたのであった。「ロケット×下ネタ」はどう考えても隠喩以外にないだろ! と思うのだけれど……いや、あれは隠喩だったのもしれない。2回見ても、さっぱり意味が分からないけど。
でも、本当に世界文化遺産をぶっ壊してるから……高等すぎるギャグ(?)なんだろうね。きっと。
映像は本当にひどいし、こんな映像いらんだろ! みたいな部分が無くはないんだが、Z級映画にしてはヒロインが可愛かったのはポイントが高いと思う。女性陣は、珍しくみんな比較的可愛かったんじゃないかなぁ……。
カットインは教育番組みたいだし、映像の切り替えは小学生が作ったパワポみたいだけど、脚本自体はそこまで不満はなかった。
個人的には本当に楽しい時間だった。道連れにするという点においては、また誰かと観たい。
※画像はお借りしています。