映画部活動報告

月1くらいで開催される映画部の活動報告場所

第2回 オンライン映画部活動記録(2020/7/9実施)

『スケアリーストーリーズ』(2019)

監督:アンドレ・ウーヴレダル(『ジェーン・ドウの解剖』)
脚本:ダン・ハージュマン
   ケビン・ハージュマン
   ギレルモ・デル・トロ(『パンズ・ラビリンス』『シェイプ・オブ・ウォーター』ほか)
出演:ゾー・マーガレット・コレッティ
   マイケル・ガーッサ
   ガブリエル・ラッシュ
   オースティン・ザユル

公式サイト:https://scarystories.jp/

参加者
小林、T.H、O.Y、加藤

小林

『映画の中身よりも遥かに怖いもの』

この映画は書かれた人物が死ぬ、呪いの本を見つけた若者たちが、自らに降りかかった呪いを解くまでのお話しである。

呪いの本に書かれた人物は惨たらしい殺され方で死ぬ。

でも一番怖いのはこの映画の背景にあるベトナム戦争である。

この映画の合間合間にはベトナム戦争に関わるシーンが挟まる。

TVのニュース。徴兵の申し込み。

ヒーローの青年もベトナム戦争へ行くことを拒絶したことでどこにも居場所がない。戦争へ行かない彼は腰抜け扱いされ不審者扱いされている。

彼の境遇によって若者たちは警察に逮捕されたり、ピンチにも陥るが、それを乗り越えて自分たちに降りかかった呪いを解いていく。

ラスト、呪いを解き、消えた友達を探す前向きなシーンでこの映画は終わる。

だがあろうことか徴兵を拒絶したヒーローの男はベトナムへ行ってしまう。

その心変わりは正直わからないが……。

戦争という大きな物語からは逃れられないことを象徴しているのだろうか。

監督のしたたかな思いは映画の中身よりも遥かに怖い。

T.H

ファンタジー度 ★★★☆☆
グロテスク度 ★★☆☆☆
総評 ★★★★☆

とある館で手に入れた本をきっかけに、一緒に行動していた子どもたちが次々に怪奇現象に襲われる中、原因を探っていくというホラー映画。

オカルティックでファンタジックな「呪い」のためか、現実感があまりないので、それほど怖くはないですね。じわじわ迫ってくる超常現象とかの方が自分は怖く感じないから、でしょうか。

オカルトな描写を除けば、ストーリーはあくまで本にまつわる謎を解くだけ。ただ、この監督特有のヤバさ感は至るところに入っているので、その圧が嫌な感じはするかもですね。

ファンタジー映画の延長ってイメージで楽しめました。

 

加藤

題名があまりにも期待を盛り込みすぎていたために、少し拍子抜け感が否めなかった。

ヌルっと怖くさせる系の映画ではあるが、対象年齢を子どもに向けているためか大分表現はマイルド。もっとガチで怖がらせに来ても良いんだよ!と思ったが、私自身の感覚はぶっ壊れている気もしているので、なんとも言えません……。

最後は、想像以上に爽やかに終わるので、スタンドバイミーを観る感覚でぜひ観ていただきたいです。

 

※2020/8公開、2022/7/2再編集。画像はお借りしています。

第3回 映画部活動記録(2020/2/21実施)

『パラサイト 半地下の家族』(2019)

カンヌ国際映画祭パルムドール・第92回アカデミー賞作品賞受賞


監督・脚本:ポン・ジュノ(『吠える犬は噛まない』『殺人の追憶』『母なる証明』『スノーピアサー』他)
出演:ソン・ガンホ
   チャン・ヘジン
   チェ・ウシク
   パク・ソダム

公式サイト:http://www.parasite-mv.jp/

参加者
小林、O.Y、加藤

2020年、最初の映画部の活動でした!

大注目の作品ということで、見ごたえは抜群。観終わったあと、かなりの盛り上がりを見せました。

一つのシーンに対しても、さまざまな見解が出てくるのがこういった会の良いところだなぁとしみじみ感じます。

小林

バカ映画度:★★★★★
韓国のことを勉強したくなる度:★★★★★
もう一度観たくなる度:★★★★★
総評:★★★★★

個人的には数年来の傑作で大好きな作品。

スラップスティクなブラックコメディで1900円の価値はきっとあると思います。
是非劇場での鑑賞をお勧めします。

いかに感想を述べますが、大前提として韓国の文化に根ざしたシーンやセリフが散見されたので、本来は韓国の文化的背景や歴史などを認識する必要性を感じます。

今回は調べていると時間がいくらあっても足らないので(笑)割愛しますが、そうした文化を背景にした監督の「企み」を感じさせるのもこの映画を傑作だと思う所以です。

▼▼ネタバレありあり感想▼▼

計画と絶望、無計画な夢、そして現実という名の悪夢

「計画」と「無計画」という言葉が、この映画には何度も出てくる。

「計画」によって金持ちを騙し、幸せを手に入れた半地下家族。

しかし幸せを掴んだのもつかの間、金持ち宅の地下に住んでいた想定外の邪魔者によって、その「計画」は崩されていく。

自分たちが建てた「計画」に自惚れていたことに気づいたところから、半地下家族は「無計画」の奈落へと落ちていく。

夢破れた半地下家族

彼らの境遇も計画通りではない。

大学に行けなかった息子。偽の身分証を作れるほどの洞察力がありながら美大に行けなかった娘。事業に失敗し続けた父。はっきりは示されていないがオリンピックへ行けなかった母。

彼らは計画がうまく行かず夢破れた人々だ。

だからこそ金持ち家族を騙す計画がうまく行けばいくほど、その計画にのめり込んでいた。

無計画で猥雑な街

また彼らの住む街も「計画」と「無計画」が反映されている。金持ち宅の水平・垂直の取れた家。整然と計画された街。

それに比べて半地下家族の住む町は看板や電線が猥雑に溢れかえり、「無計画」の極みを見せている。ブレードランナー攻殻機動隊をイメージさせるようなデストピアな街並みである。

思うにまかせぬ豪雨

さらに彼らに追い討ちをかけるのは、究極に計画できない「豪雨」だ。豪雨をきっかけに「計画」は綻びを見せ、豪雨の引き起こした水害は半地下家族の家を飲み込んで行く。そして計画することの虚しさを家族に突きつけて行く。

現実という悪夢

この映画の終盤は「無計画」な殺人を犯し、不本意ながら金持ち宅の地下住人になってしまった父を、息子が本物の金持ちになる「計画」を立て、金持ち宅まで父を迎えにいくシーンである。ハリウッド映画ならココで終わる。しかし監督はさらに残酷な現実を観客に突きつける。父を迎えに行ったのは「夢」であり、息子は半地下で薄ら笑いを浮かべながら、ぼんやりと「計画」を夢想している。

そのシーンを半地下を象徴する窓から、さらに「下」へカメラがパンして主人公を捉える秀逸なカットで象徴している。「計画」しても決して上手くいくことのない虚しさを観客に感じさせる。それは例え「無計画」でももう二度と行けるものではないだろう。

そもそもこの映画全てが夢だったのではないだろうか。あまりにうまく行き過ぎた家族寄生計画。あまりにアホな金持ち家族など、類型的な描写は全て半地下家族の「夢」だったのかもしれない。

夢は必ず覚める。そしてその前に現れるのは半地下から覗く猥雑な日常とその匂いだけなのだ。

※上記の写真は1年間のTVシリーズ全部夢でした!という夢オチで、小林の人生を変えた超光戦士シャンゼリオン(笑)

O.Y

高低差度:★★★★★
是枝・新海度:★★★★☆
もう一度観たい度:★★★★☆
総評:★★★★☆

初の映画部でした。
元々観たかった映画なので、企画していただいた加藤さんに感謝です!

黒澤の『天国と地獄』みたいに、「富裕層/貧困層」という上下関係を居住地(高台/低地)で表現するのって多分古典的だと思います。しかしこの映画では、「下には下がいる」っていう部分に一捻りを加えていて、ベタを超えてるなと思いました。

高低差としては、他にも、「コメディ/サスペンス」の演出や、脚本の急展開にもクラクラきました。結構長いわりに飽きたりはしないんですが、疲れました。

同じ東アジア圏の人間として、中国や韓国の映画や小説に対して、自分の日常や文化・社会と似ているんだけどどこか違う感じ、リアリティと微妙な違和感を楽しんでいます。ある種のSFと同じような感じです。この映画にもそのような楽しみがありました。
これは、各所で散々言われていることですが、長雨や貧困家族って点で『万引き家族』や『天気の子』とのつながりを強く感じました。

私ごときが点をつけるまでもなく、全世界的に評価されている映画ですし、観て損はしないと思います。

ものすごい血が苦手とかだとやめたほうがいいかもしれません。

加藤

展開が読めない度:★★★★☆
誰かに話したくなる度:★★★★★
もう一度観たくなる度:★★★★★∞
総評:★★★★★

人間の本質は“善”か、“悪”か

性善説」と「性悪説」というものがある。対照的な二つの説のどちらを支持するかは、人それぞれで、どちらが正しいということもない。

孟子が唱えた「性善説」は、生まれながらにして人間は善の心を持っているというもの。荀子が唱えた「性悪説」は、人は生まれつき利を好み、人を憎み、快楽を求める生き物だとし、人は善人となるために努力をしなくてはいけないと説いている。

この作品の主人公たちは、半地下に住む一家である。タイトルの通り、彼らが金持ちに“寄生”する様子が描かれている。

寄生する彼らは、生まれながらの善人か、それとも悪人か。展開が予測できなくなったあたりで、分からなくなる。物語がはじまったとき、彼らはきっと「善人」に分類される存在だからだ。

彼らが暮らす「半地下」は、Wi-Fiもなく電波の“おこぼれ”を探さなくてはいけないような場所だ。しかし、生活には本格的に切羽詰まった様子はないし、生活の改善に本腰を入れる様子もない。

いわゆる“完全な悪”ではない彼らが、寄生のために手始めに行うことは、「ちょっと魔が差した」の一言で片づけることもできる。

スーパーヒーローに倒されるべき悪人がいない物語は、どこに終着するのか。この作品は、それを見届けるためにある。

寄生するなら、スタイリッシュに

寄生される家族は、分かりやすいほど目に見えて裕福な一家。

IT企業を経営する父、“シンプル”を重視する美しい妻、可愛らしくて素直な娘、感受性豊かな息子。この一家には、きっと足りていないものはない。幸せの象徴のような家族である。

この一家に寄生するまでが、とにかく面白い。分かりやすい展開とも言えるが、王道にハズレはない。寄生方法だけ見れば単純だが、いちいちこだわりが見られて、いつの間にかお気に入りのシーンが盛りだくさん。

無駄にカッコいい、底辺家族の寄生シーンは見所の一つである。

視点が変われば、“正しい”は変わる

「正義の反対は、別の正義」

そこかしこで聞くようになった言葉だが、初出はよく分かっていないらしい。少し調べたら『パワプロクンポケット7』に登場する、自称マッドサイエンティスト黒野鉄斎(黒野博士)のセリフとのこと。野原ひろしが言っているというのも見かけたことがあるし、つい最近まで放送されていたアニメのセリフにもあった。

寄生する家族は、正しいことをしているのか。これは、一般的にはNOだ。そもそも、寄生って言葉はあまり良いイメージがない。でも、仕事にもありつけない人だったら……? この人たちの気持ちを痛いほど分かるかもしれないし、これくらいなら許されると思うかも。

しかし、寄生された家族に視点を変えると……。

視点を変えれば考えも変わる。一つの出来事として事実はゆるぎないが、その事実に対しての見解はたくさんある。たぶん、私が想定するよりもずっと多く。

作品の紹介として、貧富の差ばかりが取り上げられるが、それだけじゃない。作中には、たくさんの対比が散りばめられていて、それを見つけるのが楽しい。張り巡らされた伏線が回収されるのも爽快だ。

1度でも十分楽しめるけれど、数を重ねれば見えるものも変わってくる。いくつかあるキーワードを追っていくのも良い。何度も見返したくなる、楽しみ方が無限にある作品だと思う。

※2020/3公開、2022/6/26再編集。画像・動画はお借りしています。

第2回 映画部活動記録(2019/12/20実施)

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(2019)

監督:まんきゅう(「アイドルマスターシンデレラガールズ劇場版」など)
脚本:角田貴志(ヨーロッパ企画
ナレーション:井ノ原快彦
      本上まなみ
主題歌:『冬のこもりうた』原田知世

公式サイト:http://sumikkogurashi-movie.com/

参加者
K.K、小林、N.A、O.K、加藤

 

N.Aさん、最後の参加となりました。
子ども向けのアニメ映画だけど大人にも響く、『ジョーカー』と内容が似ているなど、さまざまな前評判を聞いての鑑賞だったので、期待値が高すぎて響かなかったらどうしよう等と上映前に話していたのですが、杞憂におわりました。鑑賞後は、殴りあうかのごとく白熱した意見のぶつけ合いが……。


論文くらいは書けそうな勢いで、いろいろ考えることができました。

 

小林

カップルが映画の最中いちゃつける度:★★★★★
大人にこそ見て欲しい度:★☆☆☆☆
もう一度観たい度:★☆☆☆☆
総評:★☆☆☆☆

幸せなクリスマスのカップルには嫉妬しか湧かない!

映画の中のすみっこたちは幸せである。彼らはすみっこにいることで幸せを感じ、それを否定する人もその場所がなくなるような災難に見舞われることもない、ユートピアを生きている。

彼らはそれぞれにすみっこにいる理由はある。「とんかつ」は食べられなかったとんかつのはしっこの脂身だし、「エビフライ」も食べられなかった尻尾である。
でもそれを受け入れて、すみっこに暮らしている幸せものである。

幸せな者たちに感情移入は出来ない。赤ちゃんを見て「可愛い〜」と言うくらいの感想しか出てこない。
もしくは幸せなクリスマスのカップルを見て、あの男は絶対浮気しそう!と嫉妬することになる。

キャラクターは見てるだけで可愛いと思えるのが価値であるから、幸せなものたちで十分である。
しかし映画になったら「かわいい」だけで1時間は辛すぎる。楽しいことと辛いことがあって、それを経験した主人公の変化を追体験出来るのが映画の良さであると思う(そうじゃない映画もあるけど…)。

映画の中のすみっこたちには彼ら自身のアイデンティティを脅かすような災難には巻き込まれない。
と言うか彼ら自身の気持ちを揺り動かすようなドラマはほとんどない。
幸せな彼らは、迷い込んだ絵本の世界でひとりぼっちの可哀想なひよこを見つけ、元の世界に戻してあげようと冒険するが…結局は助けられず、「出来る限りのこと」をして、それぞれの幸せな日常に戻っていく。

変化も何もない……

『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』公式Twitter

是非すみっこぐらしパート2では、四隅が世界中からなくなって、世界の中心に行かざるを得なくなった「すみっこたちの物語」すみっこが行方不明の子供を見つけたことで「スーパーすみっこ」としてマスコミに追いかけられるとか、すみっこのアイデンティティを揺るがすようなドラマチックな映画を期待したい。

N.A

2019年、映画館で観る最後の映画がすみっコぐらしになるなんて、なんとも消化できない気持ちで年の瀬を迎えるなんて、思ってもみませんでした。

『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』公式Twitter

部屋のすみが好きなすみっコたちが、絵本の中ではそれぞれが脱すみっコして、童話の主人公として奮闘する姿にほっこりしてたのに、突然の非情な展開。まだ、気持ちの整理がついてないんだけど……と置いていかれます。

普通ならもう一悶着か二悶着ありそうなところですが、上映時間65分の妙とゆうか、気持ちぐわんぐわん揺さぶってきます。120分は必要だったんじゃないかな。

“すみっコたちが3日3晩寝ずに考えて出した答えです”

”それでも彼らは自分たちが下した決断が果たして正しかったのか、自問自答せずにはいられませんでした”

と言ってほしいぐらい。

ただ、やさしい気持ちになれる映画だったことは間違いないので、ぜひ親しい人と一緒に観に行ってほしいなぁと思います。

O.K

心がぐちゃぐちゃになる度:★★★★★∞
大人にこそ見て欲しい度:★★★★★
もう一度観たい度:★★☆☆☆
総評:★★★★☆

アニメ映画は久しぶりでしたが、期待以上に感情が揺さぶられる映画でした。正直見終わったあとは怒りと悲しみと切なさで、この映画にどうやって決着をつけたらいいのか放心状態に(笑)。ちなみにもう一度見たい度の低さは、見るのに体力がいるからです(笑)。

※※なるべくネタバレなしでまとめましたが、気になる方は注意してください※※

「大人になりすぎて感情を忘れてしまっている方、ぜひ見てください」

『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』公式Twitter

映画前半はほのぼの進み、すみっコたちの行動がただただ可愛いくて、クスクス笑えるシーンも満載。もともとこういったキャラものに弱く、本上まなみさんとイノッチのナレーションの力もあり、癒しの空間にズブズブ浸かってしまいました。ストーリー的にも、だれかを助けたり、何かをしてもらったら感謝を伝えたりと、人生で大切なことを改めて教えてくれます。


そんな調子で、かわいいな~~癒されるな~~と油断していると、後半、いきなり現実を突きつけられます。

「え、ちょっと待って、うそでしょ……」

人間、予想していなかったことが起こると感情が追いつかないものですね。のほほんストーリーもこのためには必要だったのでしょうか? それにしても辛すぎる(泣)。

オチは結構よくある話だと思いますが、前半との高低差が激しすぎて、心がぐちゃぐちゃになりました。心して見たほうがいいです。ただし、感情移入しすぎると危険です。私のように我を忘れて製作陣に怒りを覚えることになります(笑)。
私個人の意見としては、ハッピーエンドではなかったと思います。人によって違うと思うので、ぜひみなさんの感想が知りたいところです。

この映画は癒しだけではありませんでした。笑って、泣いて、怒って……久しぶりにこんなに自分の感情を感じることができたかもしれません。生きるってこういうことだなあ……(壮大)。

大人になりすぎて感情を忘れてしまっている方、ぜひ見てください。
映画部は初参加でしたが、いろんな年代、立場で語り合えるいい機会でした。次も参加したいです!

加藤

道徳の教材に使ってほしい度:★★★★★
自分の立場を顧みる度:★★★★★
“自己満足”を考える度:★★★☆☆
もう一度観たい度:★★★★★
総評:★★★★

(以下、ほんのりとネタバレあり)

とんでもないジェットコースター

「かわいい~~」と、膝に出していたハンカチで口元を押さえながら悶えていた前半。手足が短くて、ぽよぽよと歩いている生き物を見れば、自然と口角は上がるものである。

すみっコたちはセリフは話さず動くだけ。「どうする? 」等のちょっとした言葉はあるものの、基本的にはナレーションと映像で物語は進んでいく。すみっコの世界観を壊さず、ナレーションの声もやさしい。大人が癒しを求めて、こぞって観に行くのも頷ける。

いつものメンバーで過ごすすみっコたちは、ひょんなことから飛び出す絵本のなかに入ってしまう。そこで出会ったのは、どこから来たのか、自分はだれかも分からない「ひよこ? 」。

『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』公式Twitter

この、ひよこ? のお家や仲間を探していこう! というのが本筋なのであるが、その間にもちょっとしたハプニングが満載。そのハプニングへの対応がまさしくすみっコたち、それぞれの個性が出ていて本当にかわいい。かわいいんだけど……かわいいからこその、終盤の絶望感がすごい。何もわからず、「かわいそうだねー」と話せない自分が憎い。邪推しかできない大人になってしまった。

教室での自分の立ち位置はどこだった?

すみっコたちの設定を見てみると、みんながちょっとしたコンプレックスを拗らせて“すみ”が好きになっているのが分かる。

たとえば、「とんかつ」。とんかつは脂身が多すぎて食べてもらえなかったとんかつの端で、誰かに食べてもらうのが夢。仲良しのえびふらいのしっぽも同じ理由ですみっコになった。ほかのすみっコたちも同様に、それぞれがうつむきがちになる理由を抱えている。

『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』公式Twitter

すみっコたちの教室での立ち位置は……映画を観る前は、それこそ片すみ(ヒエラルキー最底辺)かなと思っていたが、映画を観てからは下から2番目、陽キャに憧れる陰キャといったところではないか。

陰キャになりきれず、自分と似たような仲間とつるんでいるやつら。羨望と、嫉妬のまじった目で、クラスの真ん中で弁当を広げる陽キャを見つめる、そんなタイプだ。

すみっこが好き、と言って、それを譲ろうという殊勝な気持ちをすみっコたちは持ち合わせていない。すみはすみ、とでも言うように、誰かの上に重なっていく。
結局、自分の居場所のことしか考えられないのである。

“誰か”のためは、本当に“誰か”のため?

今回、ひよこ? のお家探しに一番はりきるのは「ぺんぎん? 」である。緑で、自分がペンギンなのか自信がない。昔は頭にお皿が乗っていたかも……なぺんぎん? は自分探し中で、自分のことが誰かわからないひよこ? に親近感を覚えて、お家さがしてあげるね! と初っ端から走り回る。

自分探し中と看板を掲げるやつがロクでもないのは常識中の常識ではあるが。そもそもの前提が違うことを、ぺんぎん? が理解していない。

ひよこ? は、友だちもおらず、自分が何者か見当もつかない。それに比べて、ぺんぎん? は友だちがいて、自分が何者かいくつかの候補がある。小学3年生ですら、実験をするときは前提条件を変えてはいけないことくらい知っている。これでは、「ぼくたち一緒だね! 」にはならないのである。

結局、ぺんぎん? は、「ひよこ? の居場所をみつけることで得られる疑似的な満足感」が欲しかったのではないか。ぺんぎん? がひよこ? に与えたのは、所詮自己満足にすぎない。劇中、ひよこ? にすみっこをおすそ分けしていたが、これはひよこ? が仲間じゃないからできたこと。仲間じゃないから、気軽に優しさを与えたにすぎない。

もし、ひよこ? がすみっコたちの世界に来たら……ぺんぎん? はひよこ? とずっと仲良くできていただろうか。ひよこ? は新しい世界に馴染めず、さらにツラい思いをしたのではないだろうか。

最後、すみっコたちはひよこ? のために、ひよこ? のいるページに自分たちとそっくりの鳥を書き足している。しかし、これらの鳥たちが本当にひよこ? の仲間になったのかを、私たちは知ることはない。一応エンドロールで、ひよこ? が書き足された鳥たちと過ごす姿は映されるが、そのあとにはすみっコたちが眠っている姿がある。つまり、すべてすみっコたちの夢の中で起こったこと、妄想である。

また、すみっコたちが今後絵本を開く可能性はあるだろうか。絵を描いたことに満足して、絵本は今後開かれない可能性は極めて高い。自分にとって都合のよい解釈をして、忘れていく。切ないけれど、それが生き物のもつサガで、当然のことなのだ。

ひよこ? の住んでいるとびだす絵本は、また少しずつ忘れられて、ホコリかぶっていく。ひよこ? が救われることはない。すみっコたちのエゴを押し付けられて、すみっコたちとの記憶を思い返して、その幸せな記憶が消えていくことにおびえながら生きていくことになっただけだ。

自分はどの“すみっコ”?

帰り道、一人になったときに私を襲ってきたのは、これまでの自己満足による行動とそれに付随する後悔だった。ぺんぎん? のことを散々なじっておいて、私も結局は自己満足のかたまりなのである。

誰かと関わる判断をするとき、本当にその判断はその人にとっての一番なのか、最終的に“誰か”を傷つける結果にならないか。
子どもに「ひとに優しくしないとだめだよ」と言う立場にある大人には、考えるきっかけをくれる作品と言えそうだ。

ひよこ? に寄り添っていた、とかげ?(恐竜の生き残りだが、見つかると大騒ぎになるためとかげのフリをして生きている)のようになりたいものである。

 

※2020/1公開、2022/6/26再編集。画像・動画はお借りしています。

第1回 映画部活動記録(2019/11/28実施)

ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)


監督:ティム・ミラー(『デッドプール』シリーズ)
脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー(『バッドマン ビギンズ』シリーズ)
   ビリー・レイ
   ジャスティン・ローズ
製作総指揮:ジェームズ・キャメロン
出演:リンダ・ハミルトン
   アーノルド・シュワルツェネッガー
   マッケンジー・デイヴィス
   ナタリア・レイエス
   ガブリエル・ルナ

第1回参加者
T.H、K.Y、小林、N.A、加藤

T.H

アクション爽快度  :★★★★☆
シュワちゃんの存在感:★★☆☆☆
もう一度見たい度  :★★☆☆☆
総評        :★★☆☆☆

懐かしのターミネーターの復活作です。
ターミネーターというと、超強いロボットがひたすら追っかけてくる恐怖に震える映画、というイメージですが、そこは今回も健在。とにかくなにやっても死なない。まあ、そういうものだというのは1と2でわかってはいるのですが。

ストーリー的には、過去2作(1と2)を踏襲しつつも、世界観はいわゆるパラレルワールド。1、2の後の話だけど、それらとは異なる出来事が起きた結果、さらに未来からまた奴らが襲ってくるという話です。

本作でもいろいろとやっつけようとしても死なず、観客の中に「こいつ、なにやったら死ぬわけ?」とやきもきする気持ちを育てていく。それはとてもうまかったと思います。その結果としての「奥の手」には、あまり疑問に思わず素直に乗っかっておいた方が楽しめるでしょう。

モブキャラは容赦なく手をナイフにして切り刻むのに、主人公たちは原始的に殴るだけなところなど、絶対相手を刺さない90年代後半くらいからの時代劇を時代劇を見ているようで、日本人には親しみやすい気がします。終わった後、初代「ロボコップ1」冒頭のマーフィーが打たれるグロシーンの話もしましたが、ああいうグロさはないので比較的見やすいんじゃないかと思います。

飛んだり跳ねたりぶっ放したりしても決して主人公は死なないという、安心感と爽快感は、いかにもアクション映画の王道。気分とかもあまり関係なく、いつみてもいい映画なのかなと思いました。

K.Y

暗殺者のAIと守る人間が未来から来るのですが、AIの方が人間に馴染むのが上手いと感じました。
確かに、AIは現在の法律や常識をデータで持っているはず。
未来からきた人は現在の常識もわからないのですから、馴染めないのは当然ですね。
AIの馴染む技術をうまく利用できないかと考えてしまいました。

アクション・ホラー感はいい感じで、個人的には満足でした。
ストーリーは単体で見れば面白かったですが、ターミネーター2のことを思うと、ちょっと残念な部分があった気がします(ジョンを倒したのに消えたスカイネットは、何をしたかったんだ...…)。

映画部の活動に関して

ターミネーターは個人では見ようと思っていませんでしたが、でかいスクリーンでは、アクションの迫力がいいと感じました。
見ようと思っていなかった映画を見て楽しむのも、皆さんで映画を見る面白味だと感じました。
平日に映画館で映画を見るのは、平日を楽しんでいる感があり、満足しました。

小林

映画部の活動について

久しぶりに大人数で映画を見ました。映画を見終わった後にファミレスで皆と食事をしたのですが、見た映画っていう共通項がきっかけで普段は聞けないような話も出来て良かったです。

弊社はオフィスも分かれていたり、職種も違う人が働いている会社なので、普段は話しかけずらかったり、話すタイミングすらないことも多いかもしれません。映画に限らず共通の話題があると話しやすくなる部分もあると思うので、こういうイベントをキッカケに親睦を深められればと思います。

史上最強の悪のヒーローは?


1・2の監督であるジェームズキャメロンがプロデューサーとして復帰。人気の1・2の正統な続編として公開された本作はアクションもCGも凄いしファンサービスは満載。1・2が好きならオマージュ満載のシーンがてんこ盛りである。

しかし目新しい要素が全くない映画でもある。ジェームズキャメロンはアバターシリーズの完成が毎年のように延期しているが、制作資金獲得か何回目かの離婚費用を調達するために作ったとしか思えない……。

特にまた液体人間かよ!とツッコミを入れたくなる敵に新しさがないのは残念。2体に分裂するという新しい?の要素を持っているが戦っている最中しか分裂しない。


是非2体で分裂して愛しのカイル・リースとジョン・コナーに変身して、サラ・コナーに悪夢を見せるとか、ドラマに繋がる使い方をして欲しかった。

そもそもターミネーターって、不死身の殺人マシーンが追いかけてくるホラー映画だったはず。1は腕だけになっても襲ってくる機械の身体のサイボーグ。2は味方になったサイボーグでも敵わない液体人間。どれだけ倒しても追いかけてくる最強の敵に襲われるのが1・2だった。

しかしパート3以降2の液体人間を凌ぐ敵は現れず、今作もまた液体人間かよ!っていったぐあいである。
一方で仲間はどんどん強くなっている。今回はターミネーターシュワちゃん)とサラコナーに加えて未来から来た改造人間も仲間に加わった。
味方はドラゴンボール状態でどんどん頼もしくなっている分、それを上回る敵が現れることがターミネーターらしさだと思う。


冷酷!!非常!!残虐!!史上最強悪ヒーローが次作は現れて欲しい。

N.A

ターミネーターは1作目しかまともに見たことなく、直前に2のあらすじを加藤さんに聞いてから見ました笑

が、これは大してあらすじを知らなくても楽しめます!
むしろ、知らない方がツッコミどころにツッコまずに済むのでは……。

ニューフェイトですから、ただただアクションを楽しめばいいんです。
宿敵のターミネーターもめっちゃパワーアップしてて超強い、全然死なない。

戦う→液状化→復活→(この間に物語が進行)→敵に見つかる をひたすら繰り返すテンポのよさも良かったです。

今作は、シュワちゃんよりもリンダ・ハミルトンリンダ・ハミルトンよりもグレース役のマッケンジーデイビスがカッコよかった……。
これから観る方は、グレース様の二の腕と背筋をぜひチェックしてください。

映画部第1回目、すごく楽しかったです!
世代が違うので色んな話が聞けて面白かったです。12月中に是非2回目を...!

加藤

基本的に映画は一人で観に行くので、大人数でというのは新鮮で楽しかったです。小林さんがターミネーターに詳しく、前作までのことを色々と話してくださったのも勉強になりました。シリーズものとなると、それぞれ思い入れがあったりして、その人の背景まで見えるような気がして面白いですね。

***

メインどころを女性が固め、それをサポートするシュワちゃん。大変頼もしかったです。
女性がメインの映画が増えてきているのは時代ですね。これに伴って、ハリウッドのギャラ事情も向上していくとよいのですが……。

マッケンジー・デイヴィスがカッコよすぎる

ブロンドのショートカット、細いながらもしっかりと筋肉のついた腕と脚のしなやかさ。最高でした……!
グレース役のマッケンジー・デイヴィスがカッコよすぎて、なんどため息をこぼしたことか。ぜひ、お姉さまと呼ばせていただきたい。
シュワちゃんの登場は後半だったので、それまでのアクションはほぼマッケンジーが請け負っているが、頼もしさが溢れかえっていた。というか、無駄なぜい肉のない二の腕の尊さ。ずっとタンクトップで闘ってくれていたので眼福。マッケンジーのトレーニング風景はぜひ公開して……。
個人的に飛び道具での戦いが好きなので、鎖を手に巻き付けはじめたときは歓喜で心が震えました。私も鎖使いになりたい。

シュワちゃん&リンダの関係性が熱い

シュワちゃんとの共闘をする2を観たあと、なぜサラ・コナーは予告でお前を殺す宣言をしていたのか疑問に思っていたが、その謎は開始5分程度で結構雑にまとめられる。なんでもアリというか、ご都合主義というか。
ターミネーター2』でシュワちゃんはアップデートしたために、ジョン・コナーを狙わない設定だったが、今回は愛する人を見つけて考え方が変わったって……ターミネーターのプログラムガバガバな気がするんだけど。そりゃあ、サラ・コナーもぶっ飛ばしたくなるよね(そういう理由でぶっ飛ばしたいのではない)。

サラ・コナーへの引け目があるために、サラ・コナーにボコボコにされても動じることなく、黙々と太い腕をフル活用したパワー系の戦闘を担っていました。職人みたいです。シュワちゃんって、つぶらな瞳(?)をしているので黙っていると、どこかから庇護欲的なものが湧いてくる謎。二の腕なんて、私の3倍はありそうなのに。

エドワード・ファーロングへの私の期待を返してほしい(若干ネタバレ有)

ターミネーターを観たことがなくても知っていたエドワード・ファーロング。世界の美少年で検索して出てくるのは、ビョルン・アンドルセン(ベニスに死す)、ブラッド・レンフロ(マイフレンドフォーエバー)、リヴァー・フェニックスなどに並んで、エドワード・ファーロング。だから、顔だけは知ってた!現在の悲しき姿も知ってたけど!!!
失礼を承知で言うが、ガッカリさせられることが多いエディ。しかし、本作でジョン・コナーとして出演すると聞いて私はワクワクしていた。しかし、実際は……。

CGということは承知していたが、これで出演といえる!? というレベル。スタン・リーのカメオ出演のほうがなんぼか尺取ってる。
それに、思い切りクビ宣告されている(気がする)のが切ない。シュッとした姿をCGで出すとかできたのでは。色々と言いたいことはあるが、登場した少年時代のCGは、実際にエディが演じてギャラも発生しているらしい。しかし、大きすぎた期待は納得できていないから、ぜひご返却願いたい。

エディ自身は続編(あれば。ありそう……)への出演を希望しているらしいが、それはダイエットが成功して、諸々克服しないと叶わないだろうな……。ジョンのそっくりさんとして登場し共闘、なんてやり方は考えられるが、それをするにはリンダ・ハミルトンが不可欠となるはず。リンダの腹筋が割れているうちにダイエットを成功させて、企画を持ち込むくらいの気概を見せてほしい。

 

※2019/12公開、2022/6/26編集。画像・動画はお借りしています。