第19回 映画部記録(2022/7/15実施)
『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021年・アメリカ)
監督:ケヴィン・ルイス
脚本:G・O・パーソンズ
キャスト:ニコラス・ケイジ
ベス・グラント
ケイリー・コワン
予告:
参加者
T.H、小林、K.S、T.K、O.K、加藤
T.H
ホラー度:★☆☆☆☆
ニコラス・ケイジの存在感:★★★☆☆
ぜひ見てほしい度:★★★★★
映画部の歴史上最大の駄作(誉め言葉)
シボレー・カマロで疾走する主人公。こんなクルマに乗れるくらいだからまあまあ金はあるはずだ。
それが、とある街を通りかかったときにタイヤのパンクに見舞われ、なぜか修理するまで一晩、レジャー施設を掃除すればタダになるという。この時点で、この映画の設定にかなり違和感を感じた。
北米のスポーツカーブランドであるシボレー・カマロは新車で600万円以上する。
現地で買ったとしても500万円はくだらない。
標準タイヤはフロント245/40R20、リヤ275/40R20。
当然ながら、こんなタイヤでパンクなんかしたら命に関わるので、パンク時に内部からゴムで穴を封じてある程度の距離を走れるようにするランフラットタイヤを標準装備している。
LTグレードには、グッドイヤーの「イーグルF1」が、SSグレードには、ブリヂストンの「ポテンザS001」が標準装備だった。
https://response.jp/article/2015/05/22/251732.html
https://www.taiyakan.co.jp/shop/nanrinji/tech/showcase/1347095/
百歩譲って、今回のまきびしが大きすぎてタイヤ交換が必要だとして。1本あたり4〜5万円、交換工賃も含めれば20万台後半はいく作業を、80年代くらいのトラックに乗ったおやじに任せる気が知れない。当然クルマ自体が盗まれる方を心配するに決まっている。
この時点で、映画を作った人間が無知なのか、この主人公がおかしいのかの2択になった。
「恐怖」は「勇気」で打ち消される
この映画で一番違和感を感じたのは、恐怖を感じなくなってしまうこと。
ひとつは、死ぬ人間が圧倒的に少ないこと。
実はやられているのは人形が多く、壊れ方も油が飛び散っているものの、血ではないので恐怖心は煽られない。
確かに途中から人も死ぬのだが、その死に方に怖さが感じられない。怖さを感じさせないために遊園地をロケートしたのかも知れないが、血が飛んだり体が飛んだりする様子も描かれている。正直狙いなのかよくわからない。
もうひとつは、一切恐怖心を抱いていない主人公の存在だ。
街の人間たちは、その昔起きた凄惨な殺人事件と、その恐怖に脅かされ続けている。
しかし主人公は彼らを怖がらない。最初は少しはビビるのかと思ったが、一切それがない。
ピンボールとビールの合間に人形を片付ける。まさに掃除でしかなかった。
主人公が人形に立ち向かってくれるおかげで、観客には勇気が湧いてくる。
頑張れ、負けるな、なんか人形怖くない、だんだんそういう気持ちにさせてくれたのは、もしかしたらニコラスケイジの演技力のおかげかもしれない(いや違う)。
トラウマを映画内で解決してしまう自己矛盾演出
極めつけは、序盤で人形に追いかけられる男女が逃げる廊下で、人形を引きずり回してぶっ壊すシーン。
普通、前半に出した恐怖シーンと同じ場所を後半で出すのは、前に見せたあの場所で「ああ、またこの場所で……」と怖がらせるためだ。
なのにこの映画では、前半のトラウマシーンを、後半で「こんなん怖ないわ」と主人公自ら乗り越えてしまった。
このシーンまではまだホラーだったかもしれないが、このシーンから後はただのアクションになった気がする。明確にそういう演出だったのだろうとも思う。
結局、何十年前の人殺しのおばけなんかよりも、狂った生の人間の方が何百倍も怖いってことを痛感した。そういう意味では結論として「ホラー映画」なのかもしれない。
ニコラスをしゃべらせないことでB級映画になった
全体的に映像はしっかりしていたし、カメラワークとかもB級映画ではなかった。
キャストとしてはニコラスケイジ以外はほぼ知らないので、圧倒的に主人公にフォーカスが行ってしまうように仕向けている。
なのに、まあまあ名俳優なのに、ひとこともしゃべらせない。
その無駄遣い感が、B級の証しともいえるのか。「大怪獣のあとしまつ」とかにも近い、期待を裏切られる感がどこかに残っているような気がする(ニコラスケイジに期待なんてしてないんだけど、どこかにあるような)。
これらすべてが計算されていたのだとしたら、監督はもしかしたらすごい人なのかもしれないとも思う。でも、儲かる映画は撮れないんだろうなぁ。
とここまで書いてみて、この映画を見たことがない人にはぜひ見てみてほしいと勧めたくなっている自分に気づいた。
「駄作」というのは、演出がダメなのでも、映像のクオリティが低いのでもなく、こういう映画のことを言うんじゃないかと思う。そのことを誰かと分かち合って話してみたい。そのために、いろいろな人にぜひ見てみてもらいたいと思ったりする。
小林
ヒーロー映画度:☆☆☆☆★
ただただ王道のヒーロー映画
流れ者のヒーローが、狂った街の秩序を壊し、正義を貫き去っていくというという西部劇や時代劇の王道ストーリー。本作はまさにその王道に則った正統派ヒーロー映画だ。
狂った犯罪者たちが作った遊園地で起きた連続殺人事件。犯人たちは捕まる直前に闇の儀式で遊園地のぬいぐるみたちに乗り移る。ぬいぐるみたちは傍若無人な振る舞いの限りを尽くす。
街は犯罪者のぬいぐるみたちを抑えるために「生贄」として通りがかった人間を罠に嵌めて差し出すことを繰り返していた。そこに主人公であるヒーローが偶然通りかかる。
主人公がとにかく強い。無敵。
素手でぬいぐるみ(ロボット?)をバンバン倒していく。
葛藤もない。
ピンチも一瞬ですり抜ける。
もはやぬいぐるみをぶっ壊すニコラスケイジを見るだけの映画だ。笑
そして街はニコラスケイジのお陰で平和を取り戻す。主人公だが名前すらよく分からない。凄い、よくこんなにシンプルな映画の企画が通ったのかと驚くほどだ。
日本ならくだらない説明がたくさん入るはずだ。
主人公は何者だ?
背景は?
なぜこんなに強いのか?
そんなことなどどうでも良いと言わせられるくらいのカッコいい映像と音楽でニコラスケイジがぬいぐるみをボコボコにしていく!
もう爽快感だけを楽しむ映画なのだ。
確かに物足りない。
オリジナリティを感じる要素はない。
狂気を感じる要素もない。
そこがあれば更に傑作だったのだが……。
だが90分弱を飽きることなく楽しめるB級の良作も必要だと思う。日本にも90分現実を忘れさせてくれて、何も残らない。ただのエンタメ映画が見れる時代が来ることを願っている。
K.S
ニコラス・ケイジが悪魔にとりつかれたロボットを淡々と殴り殺していく映画です。
ジャンルはホラー映画なのですが、あまりに淡々と殴り殺していくので怖さは無いです。
個人的な意見なのですが、悪魔とか幽霊は物理で倒されて欲しくないです。
超常的な存在なので、霊能力とか、お祓いとか、物理でなくて何かこう超常的な力で倒してほしい……
寺生まれのTさん 的な倒し方が好きです。
余談ですが、主演のニコラス・ケイジは B級映画に出演しまくって、借金を完済したそうです。
T.K
オススメ度:★★★★★(ニコラスケイジの元気な姿を観察できます。一言も喋りませんが)
ドキドキ感:★★★★★(最後まで「何かあったら良いな」って期待するだけで終わりました)
AmazonPrimeとかで見るとざっくり紹介文があるじゃないですか。だいたいあれが本編のすべてを説明しているのでオチらしいオチを期待していると肩透かしになります。
驚くほど特徴なくすぅ〜っと終わるので、とりあえず映像ダラダラ再生するのには良いかもしれません。
ニコラスケイジ……ナショナルトレジャーの印象のまま観始めると「あれ、こんなにムッチリしてたっけ?」ってなります。良くも悪くも印象は薄いですね。
加藤
B級映画度:★★★☆☆映画
完成度:★★★☆もう一度
観たい度:0
で?っていう
一切言葉を発しないニコラス・ケイジ。最後まで何者なのかは明かされないし、そもそも一晩であんなに綺麗に掃除できるものなのか?3日位泊まったんじゃね? という疑惑がぬぐえない。
マジのマジでB級映画。心に残るものが何もなく、淡々と文字通りにニコラス・ケイジが悪霊を殴るだけの映画なので期待以上の何も得られずに終わる。
高校生たちもただ殺されるためだけに出てきて、もう少しストーリー広げられるんじゃない?みたいな余白をのこして死んでいく。いや、せめて告白くらいはさせてあげなよ……。
ホラー映画に欠かせないセックスシーンも微妙。服を脱がせるところまでは良かったのに……。そもそもなんであの部屋でクラクラ来てたのかも説明されないし、ヒロイン(?)にあの女の子が妙に優しい理由もわからなかった。消化不良〜〜〜!
じゃあ、悪霊が怖いかっていったら、これまた絶妙なラインで怖くねぇのよな。着ぐるみめいたロボットたち、CGが鮮やかすぎて怖くない。着ぐるみ特有の狂気がゼロ。
モデルにしてるシリアルキラーは、ジョン・ゲイシーかしら……とドキドキしてたのに、深堀はせず。そもそも仲間も何人いて、どんなキャラクターで、背景は?みたいなのがゼロだから恐怖心が煽られなかった。
尺的なことを考えれば淡々と見れるしテンポも崩れないんだけど、そうじゃないんだよねぇ……な雰囲気が延々と続いて、もう一度観たいかと言われるとそんなことはなく……。シャークネードのほうが心に残っているという、残念な後味だった。
※画像はお借りしています。