第18回 映画部記録(2022/6/24実施)
『ゾンビ津波』(2019年・アメリカ)
監督:アンソニー・C・フェランテ
脚本:アンソニー・C・フェランテ
ダービー・パーカー
ジョシュ・ルブラン
キャスト:アイアン・ジーリング
エリック・チカシ・リンズビクラー
シェルトン・ジョリベット
チェリー・キャシディ
テイタム・チニキー
予告:
参加者
T.H、小林、K.Y、K.S、O.K、加藤
T.H
B級度:★★☆☆☆
アメリカ映画の王道度:★★★☆☆
タイトルもう少しどうにかならなかったのか度:★★★★★
ゾンビと津波、どうつながるのか
原題「ZOMBIE TIDAL WAVE」と聞いて一瞬頭がバグりました。ゾンビと津波がどうつながるのか、大量に押し寄せるという比喩の意味での「津波」なのか、はたまた津波によって病原体が撒き散らされてゾンビ化するという意味なのか。
B級、C級ばかり見てきたこの映画部の活動の中で、ある種の刷り込みをされてしまっていたのかもしれません。
本当のところは、なぜか海にゾンビが現れて、津波によってゾンビが街に押し寄せてくるという、これだけ聞いたら「?」が止まらないわけのわからない設定です。
ところが、映画としてはとてもしっかりした脚本と演出、カメラワーク。設定にもゾンビが存在する世界線ということ以外、それほど無理がなく、登場人物たちの関係性なども自然とわかります。いわゆる「普通の映画」です。
「ゾンビ」の存在を肯定するための設定も、ある程度映画なりゲームなりをやっていれば、「ああ、そっち系ね」とすぐ理解できるレベルでした。
いい人もやな奴もバランス良く登場する幕の内弁当
役者さんもしっかりした人が揃っていて、あまりイモ役者はいません。よほどおかしい演技もないし、アングロサクソン、ヒスパニック、アジアなど人種のバランスも取れている気がします。
恋愛、親子愛もあれば、生存のために他者を犠牲にするひどいやつも登場して(ちゃんと伏線も回収)、いい意味で観客の感情の起伏をうまくコントロールしてくれました。脚本家とプロデューサーがしっかりした人なのでしょうね。
とはいえ、ゾンビ映画なので時には亡くなってしまう人も出てきます。身内がゾンビになったり、恋人を犠牲にしたり、人間の方を殺してしまったり、無駄死にみたいな人も結構いるので、そういう茶番が好きな人も楽しめる部分は結構あります。
最終的にゾンビをどう滅ぼすのか、対抗策を考える部分も、まあまあちゃんとしてるかなと。最後はキスで終わるのも、「バックトゥザフューチャー」や「ゴーストバスターズ」や「スピード」なんかと同じで、アメリカのパニック・アクション系映画の王道ですが、めでたしめでたしって感じです。
予想を裏切る展開がないことの「退屈さ」
映画の構成もとてもセオリー通り。最初に嫌なやつを懲らしめるいい主人公が出てきて、恋人もいるけど、この街を出ていくことになっている。仕事は警備みたいなもので、恋人が医者、警察とも知り合い、それぞれ大きな子どももいてと、少しずつ登場人物が出てきます。
そして、関係している人の中で比較的ショックが少なそうな人から犠牲になっていく。恋人の娘とつるむバンドマンは、3/4くらいで突然始まるミュージカル調のオリジナルソングに絡んできます(これが出てくるとそろそろ終わりだーって気がする)。
唯一B級感を感じたのは、ゾンビの動きとキャラクター性。初期の血が濃い(っぽい)ゾンビは肌も青くて体も欠けてたりしますが、2代目、3代目になると血色もよくて動き以外はゾンビに見えない。普通に見えるこの人たちが恐怖と違和感を台無しにしてくれました。
文化祭の出し物で記念出演でもしたのか、人数が足りなかったから身内を急遽集めたのか、素人っぽい演技が逆にゾンビらしさだと思ったのか。いい演出とも言えるかもしれませんけど。
もっともっとB級っぽさがないとバカにするポイントが少なくて逆に退屈、というのは、完全にこの部活動に毒された証拠でしょうね。
(良くも悪くも)印象に残ることとは
普通の映画を普通に1本見終わったという感想でしたが、ふと冷静に考えてみると、なぜこのタイミングでゾンビが出てきたのかとか設定が怪しい部分もいろいろあります。でもまあ、そこは言わない約束なのかな。
ただ、これだけおかしなところが少ないと、印象に残るシーンがあまりないのも事実。しっかり楽しめはしましたが、記憶に残る映画でもないんですよね。
誰かの印象に残るものって、言動も、メイクも、映像も、言葉も、音楽も、いわゆる「フック」が必要だと思うんです。その意味ではあまりにも予定調和なアメリカの映画って感じで、とても気持ちよくスルーっと流れていってしまった。
意外な秘密の暴露もすぐに解決してしまって、後に残る謎もそれほどない。となると、印象に残らないのも仕方ないですかね。
多分、インパクトを残すこと自体は簡単です。超絶有名な俳優、超絶グロテスクな映像、超絶やきもち焼きな女性、超絶チープなサメ、超絶意味がわからないハンドスピナーを回すおじさん……
でも、「ゾンビ津波」はあえてそれをしなかった。きっと正統派の映画として評価してほしかった、そんなスタッフの思いを感じます。
だから、やっぱり「B級映画」なんでしょうね。
小林
面白い度:★★★☆☆
語りたくなる度:★☆☆☆☆
ジャケ再現度:★★★★★
ジャケットへの裏切り
遂にゾンビが海からやって来るようになった。それもゾンビが大波に乗って海岸の街に襲いかかるのだ。
大体この手の映画はジャケットにあるビジュアル、今回で言うとゾンビが津波でやって来るようなシーンが無かったりするのだが、今回は文字通り大量のゾンビが津波と共にやって来る。
東日本大震災を思い出すので、正直ゾンビよりも津波の方が圧倒的に怖いが…津波の跡に、街にゾンビが襲いかかるのは、傷口に塩を塗るような感じで怖い。
よく考えられたシナリオだと言えるし、ゾンビを感染症だと位置付ける医師の対応など、東日本大震災やコロナを意識したシナリオなんだろうと思う。
でも全体的に真面目な展開で、90分飽きずに見られ反面、あまり語る気が起きないのはなぜか……。
一応B級ですよ。とギャグもあるが面白くない。語る気は起きないという映画って本当に難しい。
おそらく展開通りにストーリーが運び過ぎなんだろう…
- 自分探しで街を出たい主人公
- ゾンビ出現
- ゾンビが街を襲う
- 街を守らざるを得ない状況に陥る主人公
- 街を守り、街へ残ることを決める。エンドロール
オーソドックスな西部劇のようなストーリーで破綻がないけど、新鮮味も無い。シンウルトラマンみたいにディテールやジャンルに対する愛のある描写もない。
ウィジャシャークやランドシャークには徹底的なz級作品、サメ映画への愛を感じた。めっちゃ楽しそうに作ってるだろう。
今作にはそれを感じなかったのが、1番ジャケットに裏切られたと思ったところかもしれない。
と書いていて思ったが、邦題をつけた日本の配給会社が悪い気がしてきた……笑
K.Y
三流度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★☆☆☆
深く考えなければ楽しめる、深く考えたら負け
あまり考えず見ると、みんな演技(一部エキストラは除く)しているし、特殊メイクもしているので、それなりに楽しめました。
でも、ちょっとでも深く考えたら負けです。
「津波の被害少なすぎない?」「逃げる時、ドア閉めて時間稼ぎしろよ」
「ゾンビ弱くない?」「そもそも津波要らなくない?」
など、引っかかりは満載です。
ちょっと金をかけたコントとしてみれば、なかなか面白かったです。
ただ、真のクソ映画ハンターには中途半端な作品と見られてしまうので、あまりおすすめしません。
K.S
映像がきれいでしたが、ツッコミどころも多い映画でした。
なんの前触れもなく起こる津波。津波に巻き込まれても、砂浜に打ち上げられて普通に助かる主人公たち。
地震のない国では、津波をただの大きな波としか思っていないのか……?と考えさせられました。
ドラマーがスティックを武器にゾンビに立ち向かうシーンが、個人的に一番好きなシーンです。
スティックでポコポコ、ゾンビに攻撃をするんですが、すぐ負けます。
スティックじゃ無理だろ……なんでいけると思ったんだよ……
O.K
もう一度見たい度:★☆☆☆☆
B級にしてはキャストがしっかり演技をしており、ストーリー展開もまあまあちゃんとしていたので“ちゃんと見られる映画”、悪く言えば平凡な映画でした。
後半にかけて突き抜けた何かが欲しい!と、どこか物足りなさも感じてしまい……。
あ、見られる映画とか言ってますが、当たり前にCGは粗いし緊迫感もないのである意味期待通りです。ゾンビのクオリティに関しては動きなど統一されていないのが気になりました。
でも今思えば、足の速い子、遅い子、武器で戦う子などゾンビにも個性がある、ということだったのかもしれませんね。
個人的に好きなシーンをまとめておきます。
- しょっぱな津波に襲われたのにほぼ濡れずに生き残った主人公。強運すぎる。
- 周りをゾンビに囲われたため、苦肉の策(?)で車の屋根に乗りギターをかき鳴らす青年。ちょっとかっこよかった。爆笑したけど。
- 妙に力の入ったゾンビ粉砕ソング「ミートマシン~♪」
今回少し厳しい評価となってしまいましたが、これは今作の前に『ウィジャシャーク』を見てしまい、ハードルを上げてしまった私がいけなかったのだと反省しております。
『ウィジャシャーク』未見の方とは意見が異なるかと思いますのでご了承ください。
加藤
B級映画度:★★★★☆
映画完成度:★★★☆☆
もう一度観たい度:0
出来過ぎてもつまらない
私自身、新たにB級映画に向き合うことができた作品でした。
B級映画に求めるもの、それは監督のこだわりを詰め込んだ“ハチャメチャ感”である。
そりゃあ、脚本に矛盾がなければこっちは変なところで突っかかりもしないし、なんだか満足! みたいなテンションにもなる。役者の演技だって、巧いに越したことは無い。
はずなのだが、それをB級に求めるのは間違っている。小ぎれいなだけの作品には面白みを感じない。
本作はよくまとまっていたと思うし、それなりにツッコミどころもあった。でも、それが心に響く“粗さ”だったかというとそんなでもなく……。
アクションだって悪くないし、役者だってそこそこカッコいい。ストーリーだってしっかりとしてるし、予算がたっぷりあることも伝わってくる。
それなのに、どうしてこんなにも微妙な後味なんだろう。
とりあえず、ツッコんでみよう
ある意味スムーズに進んでいくので、正直そこまで残っているシーンがないことは確かなのだが、とりあえずいちいちツッコんでみようと思う。
津波を何もわかってない
改めて、アメリカって津波とは無縁の国なんだなぁと思った。私たち日本人が思い浮かべる津波といえば、東日本大震災などそりゃあ大きな大災害である。
巻き込まれたら最後。二度と平気な顔をして歩くことはできない。
しかし、この映画では歩けちゃってるんだなぁ……。ゾンビが歩けることは100歩譲っても理解できるけれど、津波が起こったときに浜辺にいたら、人間は二度と大地に足をつけることなどできないだろう。
ゾンビ映画にリアリティを求めるなんて間違っているかもしれないが、ゾンビ映画だからこそ、そういうリアリティは大事にしていきたい。
青血ゾンビ、赤血ゾンビ……違いは?
冒頭で登場する青い血のゾンビは、諸々あって海のなかで生まれた初期ゾンビ。しかし、その青血ゾンビに噛まれたゾンビシーズン2の血は赤色。
私が(寝ていたわけではなく)白目をむいていた可能性は否めないが、このへんの説明ってされてますか……?
一応その後も2周くらいしたが、全くその辺に触れられている感じはせず。だから、なんでそういうところを抜かすのよ! と私はむかむかしちゃうのである。
ゾンビのクオリティ
ゾンビ映画に欠かせないものはなにか?
これは、ゾンビ映画愛好家の人なら十分ご存知の通りだと思う。
まず、「ゾンビの設定」だ。ここに矛盾があるだけで、ゾンビの存在意義について視聴者が考える隙を与えてしまう。絶対に適当にしてはいけない。
そして、「ゾンビの演技」も大切だ。
本作では適当に歩いているゾンビが多すぎた。ゾンビの演技は、ゾンビの存在意義そのものである。
適当に歩いているゾンビが散見されるようでは、極上のゾンビ映画にはならない。
また観たい映画とは
あまり実感としてはわからないが、私はB級映画が好きなタイプの人間だと思う。
少女漫画原作の予算たっぷりかけた、ヒットがある程度約束されたアイドル映画を観るのなら、監督がやりたいことをやりたいだけ詰め込んだトンデモ映画を観たい(超大作が嫌いだということではない。MARVELとか大好きだし……)。
今回、スタッフの熱意が伝わらなかったかといったら、そんなことはない。やりたいことやってることは分かるし、「こんな奴いたら笑えるよね? 」みたいなシーンだってある。笑えたシーンだって、ないわけじゃないのだ。
しかし、もう1度観たい! という欲求は生まれない。
これは、私のほうが製作スタッフよりもゾンビ愛に溢れているということなのかもしれない。
当然だがゾンビを堪能したくて、ゾンビ映画を観る。そこが満たされなければ、もう1度観たい作品にはならないだ。