第13回 映画部記録(2021/9/17実施)
『ビューティー・インサイド』(2015年・韓国)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/beautyinside/index.html
監督:ペク・ジョンヨル
出演:ハン・ヒョジュ
ユ・ヨンソク 他
予告:
参加者
T.H、小林、O.K、加藤
T.H
ヒロインのかわいさ ★★★★★
予想を裏切る度 ★★
おすすめ度 ★★★★
爽快感や恐怖感よりも、幸福感や安心感が欲しいと自分が希望してO.Kさんや加藤さんに選んでいただいた「ビューティー・インサイド」。韓国ドラマは突拍子もないことが予定調和のぶっ飛びストーリーですが、映画はなぜが落ち着いてますよね。
恋愛ものかと思いきや、思いっきりSFで、ある意味ホラーでした。
容姿を選べない人生ではなく、容姿が勝手に変わる人生
主人公は、朝起きると「別の人間」になってしまう病気というか体質の人。映画は、一夜の情事のあとでこっそりベッドから抜け出すところから始まります。これだけ聞いたらさぞかしおもしろおかしい人生だろうと思えますが、起きたときの姿が太ったおじさん。多分みられたら昨夜知り合った女性は悲鳴を上げ、警察を呼ぶでしょう。
毎回まったく違う姿になるという突拍子もない人生をリアルに感じさせるのは、部屋に無数にある服や靴など。そうか、いろいろ用意しておかないといけないんだ、他にはどんなものが必要だろう、よくある性転換モノに照らして変な想像もさせてくれます。
主人公が課されているのは、毎日別人を演じることを一生強いられる人生。本物の自分は自分の心だけ。それだって何が本物かを証明する物理的なものはありません。
「イノセンス」で姿形のない大佐の存在を誰が証明できるのかが問われたのとはちょっと違いますが、姿形が変わり続ける人間の心ってどんなものなんだろう? なんて想像もしてしまいました。
いいも悪いもひっくるめた「入れ替わり系ドラマ」のひどい版
そんなときにひとりの女性に恋をしてしまいます。当然、とびきりいい姿になるのを待って声をかけ、デートに誘う。ちょっとだけうらやましくもなったりします。
ここで、「朝起きるとってことは、今のイケメンな姿を維持するためには……」ということを観客に想像させます。無茶なことだけどどうにかしたい。観客も一緒に考えて、「〜〜すればいいんじゃね?」と思っていると、そのとおりに行動する。
でも、どれだけ無茶をしようと、多分2度と彼女が知るその姿にはなれないことも、観客にもわかりはじめます。
このあたりで、「ああ、この人の人生きついな」と、じわじわ実生活を想像して怖くなり始めていく。
たいていの物語はそんな感じで、最初は能天気に過ごしていたものが、だんだんと世界のほころびを感じ、自分が嫌が応にも世界を救う目的を背負わされる。使命感を感じるか逃げようとするかは作品の方向性によりますが。
でもこの映画の主人公は、「単に生きたいだけ」です。何者にも変わりたくない主人公があえぐ姿を見せつけられる。苦しい。
そして、自然と観客が自分と主人公を投影させて、「自分だったらどうだろうなぁ」とか考え始める。多分エロい妄想とかもあるでしょうよ(まあ、心の中では何を考えようが自由ですから)。
そんなこんなを経て思考がぐっちゃぐちゃになったところに、多くの観客にとって想定以上であろう爆弾が、目に見えて空から降ってくるんじゃなく、不意打ちのように地面の下でいきなり爆発します。
人は人のどこに惹かれ、何に恋をするのか
クライマックスは、告白してからの彼女との関係が描かれていきます。別の人間に変わる彼の視点から描かれてきたものを、彼女側に立って考えたらどうなんだろうということを、彼女の体調の変化や気持ちを聞きながらで、徐々に考えさせられていきました。
そしてここから、「彼が別の人間になる体質を克服して幸せになるための話」だったはずが、「別の人間になる体質の人と付き合う女性の不安と恐怖を描く話」に自然とシフトしていく。不幸な生い立ちの彼の話ではなく、彼に知り合ったことでどうしていいかわからなくなった不幸な彼女の話へ。
この時点で、彼と彼女、どちらに感情移入しているかによって、見方が変わるみたいです。自分はずっと彼の側に立って考えていたけど、一緒に見たO.Kさん、加藤さんは彼女視点に立っていたようで、見方・感じ方が全然違いました。
だからこそ、この映画をカップルで見終わった時の視点のズレ、感じ方のズレがものすごく明確になる。面白いかもしれないけど、大きく違ったときに「あれ、こいつこんなこと考えるやつだったっけ?」「え?この人そんなふうに考える人だったの?」と、関係を二分しかねない気もする。
その意味で、この映画はやっぱりホラー映画かもしれません(笑)。
あ、ホラー要素で言うと、当然誰もが考える「姿形が変わる瞬間ってどうなるんだろう?」という疑問。映画でどんなふうに描かれるか、ここもホラーっぽいです。
さわやかじゃない恋愛映画ってきつい
触れてこなかった要素でいうと、主人公の彼女がものすごくかわいい。初めて知った女優さんですが、アジア系の顔の中ではほんとにトップクラスに。吹き替えの声が坂本真綾というところも手伝ってるのかな。
また、日韓がまだ仲がよかった時代らしく、随所にわざとらしい日本の商品とかが出てきます。今見るとなんか目立ちすぎる感じがするので逆効果っぽかったですね。
俳優さんはあまり知らないけど、上野樹里もいいところで出てきます。言葉が通じないはずなのにわかっちゃうのはファンタジーだしまあ……。
それと、全体的に映像がとてもおしゃれで、彩度が抑えられていて、淡い感じの光の入れ方がきれいでした。イス工房の夜のシーンとか、彼女の家に歩いて行く夜道とか、最後のシーンの工房とか。
全体的にどぎつい色味がまったくなく、すごくナチュラルだったのもなんか韓国らしい感じがしました。この辺は勝手なイメージですけど。
総評・「これはあくまで架空のお話」
恋愛映画って、多かれ少なかれ恋愛の経験とかテクニックとかを学べる要素があると思うんですが、実は実際の恋愛にはまったく役に立たない要素しかない映画です。
あまりにもファンタジーすぎて、感情移入はできても終わった後に「まあ、あんなことないしなぁ」「自分がもしこんなことあったら……ってあるわけないわ」とさっぱり忘れてしまいそう。
その意味では、あまり後を引かずにみられる映画かなとも思いました。
ただ、自分のことで精一杯な時、大切な人のことをどれだけ考えられるか、という点においては、ものすごく考えさせられる映画でした。
仕事が大変だったり趣味に没頭していたりして、パートナーをほったらかしにしているその瞬間、相手が何を考えているかなんて、言葉に出されなければ読み取れないことは多いです。そういう喧嘩もたくさんあるしね。
でも、考えてもわからないような悩み、自分には伝えられないような悩みもあるかもしれない。それは男女の差とかもあるし、いってしまうことで関係が壊れたり離れてしまうんじゃないかということもある。
そういう思いをどうやって伝えよう、どんなふうに解消しよう……と疑似的に考える練習にはなるかもしれません。
まあ、あまり深く考えずに、物語の展開と顛末をただ見届けるだけ、という見方でもまったく問題ないです。ただし、どうせ深く考えたってこんなの現実にありえないんだから、と割り切れるなら、見ている間だけでもどっぷり浸かってみるのもいいのかな。み終わった瞬間はつらいけど、あまり長期間精神にくることはないと思います。
と、ここまで思考を巡らせてくると、タイトルの「美しさは心に宿る」はなんだかしっくりくるようなこないような、という気もしてきたので、後は見た方が自由に考えてみてください。
小林
この後、男女がどうなるかを是非続編で描いて欲しい。
オープニングうまい度 ★★★★★
続きが気になる度 ★★★★★
毎日姿が変わる男性がどう女性と付き合っていくか、女性の側もどう男性と付き合っていくか。
一人の友達でも恋人でも良いが、誰かと一緒にいることで生じる問題を、SF(ファンタジー)を使って描いている。
冒頭が上手い。姿が変わる男性がワンナイトでベットから起き上がるシーンから始まる。前夜のイケメンからおっさんに変わっていてユーモラスだし、薄い関係性の中でしか生きられない男性の寂しさも描いている。設定だけでは描いているのではなく、誰かと関係を続けていくというテーマを匂わせているのも素晴らしい(一番遠い状況から)。
物語は男性の父親も同じく姿が変わる人間だったことで、母親を置いて蒸発してしまったこと。女性の父親が亡き妻「一緒に年を取りたかった」ということを聞き、一度は別れてしまった男女がもう一度出会うところでハッピーエンドである。
だが気になるのはこの後だ。
一緒に暮らしていく二人には今後もいろんな障害があるだろう。
毎日、違う父親がいる家庭。子供は父親をどう認識するのだろう……想像すると色んな妄想が産まれてくる。
是非、今後の二人の関係性を通して、さらに新しい物語、素晴らしい感動をもたらす映画を期待したい。
O.K
愛とは何?考えちゃう度:★★★★★
もう一度見たい度:★★★★☆(人生で愛に迷ったら見たい)
目覚めるたびに外見・性別など姿が変わってしまう男性が恋をする、結構ファンタジーなお話。
演出のおかげでこのあたりは意外とすんなり受け入れられるので安心してください。
何回見ても毎回違った視点や自分の気持ちに気づけるのもこの映画のいいところだと思います。
今回私は“結婚した自分”として見ていたのですが、自分もこんな風に人を好きになれる?「好き」「愛する」とはどういうことなのか……?(迷宮)
……と、答えのない問いをぐるぐる考えてしまいました。
いつか答えが見つけられたらいいなあ。
1年に1回見たくなるくらいにはこの映画が好きで、これからも人生の節目で見たくなるのだと思います。
「愛」とは何か、本質的な問いを投げかけてくれる映画です。
加藤
少し迷ったときに観たい度:★★★★★
名作度:★★★★★
もう一度観たい度:★★★★★
キム・ウジンは、性別・年齢・人種に関係なく毎日違う容姿に変化してしまう。
だから、長く付き合う友だちなんて作れないし、恋人なんてもってのほか。だって、明日の自分は男なのか、女なのか、それとも子どもになるのかも分からないのだから。
好きな人の姿が毎日変わるとしたら、私はその人を好きでい続けることができるのか。
観るたびに自問しているけれど、私はいつも「自信がないなぁ」と思ってしまう。
外見は印象の一つだ。会うたびに変わっていくとしたら、やはり戸惑ってしまうに違いない。
ハン・ヒョジュ演じるイスが、徐々に疲弊していく理由がわかる。音楽の趣味もあって、自分のことを好きでいてくれて、性格も大好き。
こんなに彼は愛してくれているのに、顔を合わせるたびに戸惑ってしまう自分がいてきっと申し訳ない気持ちになるのだろう。
それに、ありもしない噂だってたてられる。
「イスはいつも違う男と歩いている。誰が本命の彼氏なの? 」
放っておけばいいし、気にしなければいい。そんなことは分かっているけれど、誰かとのつながりを断つことができない世界で、“気にしないこと”がどれほど難しいか。
ごまかすように笑って、その場から立ち去ろうとするイスの姿が切ない。
「好きなのに」と「好きだから」が積み重なると、こんなにも身の置き場がなくなってしまう。
誰かを好きになるって、どういうこと?
外見だけが大事なの?
日々、姿を変えていくウジンと、彼の恋人イスを通して、私たちは問いかけられる。
でも、結局何も答えられることなんてない。ささやかだけど、大きな決断をした2人に泣けてしまうのだ。
※2021/9公開。2022/7/10再編集。動画・画像はお借りしています。
第12回 映画部記録(2021/8/13実施)
『新 感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年・韓国)
第11回 映画部記録(2021/7/9実施)
『SNS -少女たちの10日間-』(2020年・チェコ)
公式サイト:http://www.hark3.com/sns-10days/
監督:バーラ・ハルポヴァー
ヴィート・クルサーク
概要:
巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋で、幼い顔立ちをした3名の女優(18歳以上)は偽のSNSアカウントで12歳のふりをするという任務を与えられた。
各々の部屋のPCで、連絡をしてきたすべての年齢の男性とコミュニケーションを取る。当初のプロジェクトと同様、大多数の成人男性は性的な要求をし、なかには恐喝する者もあらわれる。
精神科医、性科学者、弁護士や警備員など専門家の万全なバックアップやアフターケアを用意しながら撮影を続けること10日間。児童への性的搾取者が徐々に尻尾を出し始める……。
現代の子どもたちが直面する危険をありのまま映し出した恐るべきリアリティーショーは、SNSと常に接するジェネレーションZ世代やその親たちに恐怖と共に迎えられ、本国チェコでドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録。児童への性的搾取の実態を描いた映像として、チェコ警察から刑事手続きのための映像が要求された。
実際の犯罪の証拠として警察を動かした大問題作である。(公式サイトより引用)
予告:
参加者
小林、K.Y、加藤
小林
映画を見終わった後、気まずくなる度:★★★★★
男たちのモザイク顔が夢に出てくる度:★★★★★
もう一度見たい度:★☆☆☆☆
気持ち悪いのその先へ
この映画には気持ち悪い男がたくさん出てくる。
SNSで知り合った12歳の少女(という設定の女優)に対して卑猥な言葉や画像を投げたり、卑猥な行為を見せつけてくる。
もはや気持ち悪い男の動物園だし、そんな男たちが次から次へと出てくる。
撮影に関わった弁護士はそういう男を取り締まらないプラットフォーマーを問題視する。
映画が進むにつれて、スタッフの知り合いで子供キャンプ運営者の男が、SNS上では卑猥な行いを少女たちに行っていることを発見する。
最後はその男の自宅に押し掛けて悪事を追及するところで終わるー。
あぁ気持ち悪かったで終わる映画。
こんなことが現実に起きていた事実には驚かされるが……そこまでで終わる映画、いやこれは「ニュース」である。
なぜ監督は12歳の少女に群がる男たちにインタビューをしないのだろう?
なぜ子供キャンプの運営者はプライベートで少女と遊んでいるんだろう?子どもたちはいつも周りにいる。
なぜSNSを運営する会社に取材に行かないのか?
なぜ少女たちはSNSで中年男性と話すのか?
この問題の本質は何なのか?性欲なのか、浮かばれないストレスフルな社会なのか、テクノロジーの発展に伴う新たな恐怖なのか。
様々な展開が考えられるのに、この映画はとても表面的な「気持ち悪い男たち」の先には進んでいかない。
途中12歳の少女に対して性的な言葉を発しない、画像を送らない、ただ友達になりたいという男が出てくる。
スタッフや監督はこんな良い男性がいたなんてと涙を流しているが、お前らはバカなのか!と言いたくなる(笑)
卑猥な言葉や行為がなくても、言葉巧みな大人たちに騙された友人はいなかったのか? 自分で体験してこなかったのか?
すごく表面的な部分で映画は進行していく。
この映画を気持ち悪い男に見せたとしても、「僕はそこまでやっていない」で終わりである。
人は冷静には自分の行為を振り返れないし、自分だけは特別だと思っている。
この映画を気持ち悪い男たちに見せても、猥褻な行為は阻止できないし、この映画を見ても少女に猥褻な行為を行う男たちはいると思う。
多分この映画の賞味期限は短い。スカイプやfacebookを誰もが忘れてしまったときには、もはやこの映画を誰も見ない。
というか1回しか見ないけど(笑)
もしもっと踏み込んだ議論に映画が進んでいったら、この映画は100年生き残れたかもしれない。
気持ち悪いのその先に、気持ち悪い男たちの数を本当に減らせるきっかけが見つかるかもしれない。
大人たちはもっと深く考えないといけないし、子供たちにも深く考えて欲しい。
そんな深い映画を大人と子供もみんなで一緒に見なきゃいけない。
K.Y
不快度:★★★★★
おすすめ度:×
ドキュメンタリーだからとんでもなく不快。これ以上不快な映画は無いと思う。
児童の性的な虐待がテーマ。
12才の少女がSNSを顔出しでやったらどうなるかと言うドキュメンタリー映画(※実際は童顔の成人女性が12才に扮してSNSに登録)。
「変な人たちを見てみたい」程度の甘い考えでみてはいけない。
「変な人たちを見てみたい」とは、ある種の狂気をみてみたいという意味かと思うが...…この映画に出てくる人は、「ただただ不快な変態」だけ。
狂気は狂気だが、底が浅く、ただただ変態なだけ。そんな人たちが何人も何人も出てくる。
通話をしたら、「脱いで」だけ。会話もみんなワンパターン。ただただ不快でただただ変態。
児童の性的な虐待の実態を知りたいのでしたら、本を読むことをおすすめします。
この映画は真面目に検証しようとしている。しかし、世の中には変態が多すぎた。ただただ不快だった。
人間ってここまで、気持ち悪くなるんだなぁと、ただただ不快だった。
加藤
2度は観たくない度:★★★★★
覚悟をしてみたほうがいい度:★★★★★
総評:★★★★☆
久しぶりに映画を観て、“胃が重たく”なった。
グロ系の映画は何回か見れば感覚がマヒするから、大体どんな映画でも観れるようになるが、この手の映画は本当に耐性をつけることができない。
作り手が伝えたい“シンプルすぎる”メッセージ
この映画が何を伝えたいのか。
これはとても明快で、「ネット上で子どもに対して性的なメッセージを送っている輩がいる。これおかしいよな?」ということだけ。
1年に何回かは、日本でも未成年者に性的な写真を送るように言って……などといったニュースは耳にする。そのたびに、「またか、バカだなぁ。」と思うのは私だけじゃないだろう。
でも、こんなに軽く思えるのは完全に他人事だから言えることなのだと、この映画で自覚させられた。
どこまでがノンフィクションなのかはわからないが、それでも「ありえない」と思わなかったのは、この映画が映していた光景が非日常と言い切れないことを知っているから。
自分が経験をしていないことでも、「このくらいのことをする人は普通にいるだろう」という想像が容易にできる。
「どこまで本当なのかな?」
というのは、観終わった私たちの口から自然とこぼれた言葉だが、少なくとも私は“現実だとは信じたくない”気持ちが含まれていた気がする。
“大人の責任”はどこに?
この映画では、少女に対して性的な要求や写真を送り付ける大人の男性=オオカミの姿を、隠すことなく映している。
鑑賞をするとなれば、そのやりとりを私たちも強制的に見せられることになるが、これが本当に苦しかった。
性的な写真もそうだし、送られてきたメッセージも本当に酷いものばかりで、気持ち悪すぎて、見ながら胃のあたりがズキズキした。まさに、「性暴力」という言葉がぴったりだった。
何とは言わないが、誇張なしに一生分は見たと思う。
大人であってもこんなにヘビーなのに、子どもが、誰にも相談ができない・しづらい状況でこんなものを送り続けられたらどんな気持ちになるだろう。
この人たちは、どうして自分のことだけしか考えられないんだろう。
さまざまに湧いてくる感情のなかで特に強かったのは、「怒り」だ。
子ども時代の出来事は、そのあとの人生に大きく影響を及ぼすことは大人なら誰もがわかっているはず。それなのに、子どもなら自分のいうことを絶対に聞いてくれるからという理由で踏み荒らしていく様が本当に許せなかった。
そんなことをしているのに、子どもに関わる仕事をしている人もいて、これには呆然とした。
頭おかしいんじゃないの? 脳みそ入ってる?
言葉は悪いが、かける言葉がそれ以外に見つからない。
子どもは未来だから大切にしよう! なんて綺麗ごとを言う気はない。しかし、子どもが大人の悪意に傷つけられることは、あってはいけない。
なんでそんなことも分からないのだろう。
全員つかまって、一生出てこなければいいのに。
異常事態を浴び続ければ感覚はおかしくなる
おぞましい性的なやりとりがSNS上で繰り広げられている場面で、スタッフも女優もケラケラと笑っていたことが印象的だった。
たしかに、オオカミたちが起こすアクションは冷静な目で見れば面白い。50歳、70歳の男たちが12歳の少女に向かって「年の差なんて関係ある? 愛してるよ、裸見せて」などと言っている姿なんて、なかなか見れるものではない。
そう思えば、笑えることは確かなのだが、みんな感覚をおかしくしなければ見ていられないのかもなぁとも思った。
そんななか、一人だけオオカミとして扱われない青年が登場した。
この青年は現実世界として見ればまともなことを言っているが、彼も彼で12歳の少女にSNS上で接触していることは事実。異常である。
しかし、みんなが彼の言葉に涙を流して感動し、単純な私もつられて泣いてしまった。
異常な状態を目の当たりにし続けると、感覚はいとも簡単にバグってしまう。性的な要求をしないだけで、なんていい人なんだ! と感動してしまう。
でも、この感覚は完全に危ない。
「この人なら大丈夫かも。」
すんなりと受け入れてしまうその感覚こそ、実は一番疑わなければいけないものなのかもしれない。
とにかく、ショッキングな映像が続くから、気軽に「観てほしい! 」とは勧められない。でも、私の知っている地獄を見てほしい気持ちはあって、語りたいことも確か。
私は、この先この映画をもう一度観ることがあるのかは分からないけれど、この映画に叩きつけられた“弱者として生きる窮屈さ”は忘れられないと思う。
※2021/7公開。2022/7/10再編集。動画・画像はお借りしています。
第9回 映画部活動記録(2021/2/26実施)
『ゲット・アウト』(2017・米)
監督・脚本:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ
アリソン・ウィリアムズ
ブラッドリー・ウィットフォード
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
スティーヴン・ルート
ラキース・スタンフィールド
キャサリン・キーナー
参加者
小林、O.Y、K.Y、O.K、加藤
小林
もう少し度:★★★★★
以下ネタバレあり▼
人種の問題を感じさせるような硬派な作品サスペンスになるかと思いきや、実は突拍子もないホラー(SF?)でした。
脳味噌を入れ替える、操るなんてかなり突拍子もない作品です。笑
でもそこに黒人に憧れる白人や警察に怪しまれる黒人などの社会風刺を入れて新しい作品にしています。
すごく面白い作品だし、話題になった作品ですが、ちょっと浅い、スカッとした感じです。
主張がないというか、じゃあなんなんだよって感じ。笑
主張がある映画はじっと見終わった後も殴られた後のように頭を離れませんが、そこはなかったなって感じです。
そう考えるとジョージ・A・ロメロのゾンビが、ゾンビの姿やショッピングモールを通して消費社会を風刺したのはやっぱり凄い。
テーマじゃなくてゾンビっていう姿も含めて。
O.K
友達を大切にしたくなる度:★★★★★★★★★★★★
もう一度見たくなる度:★★★★★
総評:★★★★★
最近見た映画の中でも1、2を争うおもしろさでした!映画って結構な時間がとられるわりには当たりはずれが激しいと思うのですが、これは完全に当たりです!
意味がわかるとぞわっとする系なのであまり詳しくは言えません。でも幽霊は出てこないので私でも大丈夫でした。(某ダッシュシーンは夢に出てきそうですけど。怖すぎ。)
何かがおかしいけどわからない、不気味なシーンがずっと続くので、みんなで結末を考えながら見るのも楽しいと思います。
本当に、どれもネタバレになりそうで何も言えないのですが、「友達は大切にしたほうがいい」ってことだけは最後に伝えておきたいですね。映画を見た後何度も考えましたから……自分だったらどうしてたかなって。
加藤
総評:★★★★☆
公開当初から超話題になっていた本作。1度観ていたものの、映画部で再鑑賞!
最初観たときとの大きな違いは、やはりラストというか結末を知っているということもあるし、大人数で観ていたということもあって、ラストに感じたのは“後味の悪さ”よりも、コメディ感でした。怖い映画って、どこかで吹っ切れると笑えてきちゃいますよね。不思議。
しかし、脚本の作りこみやタイトルの意味も含め、ラストが見事だった。予算は多くないけど、脚本が作り込まれているし熱くなれる。
とてもいい後味の悪さでした。
※2021/3公開。2022/7/10再編集。動画はお借りしています。
第10回 映画部活動記録(2021/4/9実施)
『世界の果てまでヒャッハー!』(2015年・フランス)
監督:ニコラ・ブナム
フィリップ・ラショー
出演:フィリップ・ラショー
アリス・ダヴィ
ヴァンサン・ドゥサニア
タレク・ブダリ
ジュリアン・アルッティ
クリスチャン・クラヴィエ
シャルロット・ガブリ
予告:
参加者
小林、K.Y、O.K、加藤
小林
藤岡弘、探検隊度:★★★★★
総評:★★★★★
ヒャッハーの続編ですね。
今回は仕事で映画部の皆様と同じタイミングで見ることができず、とても悲しかったです。。。涙
しかし一人で見ても大爆笑の作品でした。
電車の中でスマホで見ながら笑い、深夜に家でも一人で見ながら笑ってました。
もう最近会社であった全てのことを忘れるような至福の時間。
「いやぁ、映画って本当にいいもんですね~」って水野晴郎先生を思い出しました。
伏線があるようでないのが良い。
ガイドは突然洞窟で落ちるし、笑
女の子が投げた缶?が当たって環境団体のおじさんは気絶するし、
ばあさんは案の定、川に流されていくし〜
何か起きそう……起きそう……起きそう……ではなくて、
起きた! 大変だ、もっと大きなことになっちゃった!ってスラップステックが広がっていく様が本当に面白い。
前回と同じ、POVのカメラを拾って、それをリビングで見るという繰り返しもファン向けに作られていて良いですね。
ババァが川に流されたり、吹っ飛ばされたりするような不謹慎なバカ映画を是非、今後も見たいと思います!
K.Y
ナマケモノ度:★★★☆☆
ばあちゃんの強さ:★★★★★
総評:★★★★★
ただただ、バカで何も考えちゃいけない。
前回よりは伏線が弱かったが、期待通りのバカさは健在だった。
何も考えず、「馬鹿だなぁ〜〜、あははは〜〜」って見てたので、深い考察や意見は何もないです。映画って、何かしらのメッセージ性があると思うのですが、それが一切感じられません。
押し付けるようなメッセージもなく、深く考えず、ただ笑えるって、凄いっす。
1点気になったのは、原題は「Babysitting 2」ですが、 「子守してないよな?」って今思ったくらいです。
O.K
この人と結婚していいのか迷ったときに一緒に見て欲しい度:★★★★★★★★
もう一度見たくなる度:★★★☆☆
総評:★★★★★
ついにヒャッハーの第2弾!主人公とその仲間たちが登場した瞬間、懐かしい友人に久しぶりに会ったかのような、なんともいえない感情に。
あいつら、今回もバカやってるなあ~って。そういう意味では、前作『真夜中のパリでヒャッハー』を見ていたほうがより楽しめますね。見てなくても全く問題ありませんが(笑)。
『ヒャッハー』に関しては前作のときも思ったのですが、一緒に見る人を選ぶ映画です。内容は本当に……くだらないので笑える映画ではありますが、だからこそ1人だと寂しいし、だれかと見たとしても、その人と同じテンションで笑えないと妙なもやもや感を味わうことになります。
よく、映画を恋人と見に行って意見が合わなくて別れる……みたいなのありますけど、『ヒャッハー』ってこれに当てはまりそうな気がします。
こんなくだらないことで一緒に笑えるかどうか、結構大事だと思いませんか?(映画部のみなさんどう思います?笑)
加藤
期待を裏切らない度:★★★★★
一生ついていくぞ! 度:★★★★★
総評:★★★★★
前作に引き続き、完全に私の趣味にお付き合いいただきました。
予告を観ていただくだけでもわかりますが、もうめちゃくちゃ下品です(ヒャッハーを超える下品映画は『ソーセージ・パーティ』くらいしか知らない)。
やっぱりヒャッハーって最高!
これ以上の言葉はいらないし、言いようがないです。フィーリングで理解してほしい!
作り手の映画愛はビンビン伝わってくるし、そんなのに触れたら「最高」以外の言葉なんかいらないんですよ。逆にあります? っていう感じです。
この映画は、観ているといつの間にか愛着がわいてしまって、それはまるで手のかかるわが子を見ている気分。どんな酷い展開でも、私の中に湧き出るのは“愛しいなぁ”という気持ちだけ。ヒャッハーなしの人生なんて考えられなくなってしまいます。
ツラいときに思い出すのは、「ヒャッハー」。ナマケモノを見かけて思い出すのも、「ヒャッハー」。マリオカートをすればヒャッハーに思いを馳せ、トランクケースに荷物をつめるたびにニヤニヤしちゃいます。
一度観たら、ヒャッハーの呪縛からは逃れられません。沼が深すぎるよ、「ヒャッハー」!
ギャップ萌え勢は気をつけて!
「女子はギャップ好き」という定説にもれず、私もギャップは大好物です。
想像してください。おちゃらけ男子が真面目な顔で部活に取り組んでいたらきゅんとしますよね? そういうことです。
改めてこのバカ映画を観て、この映画の魅力はそこなんだなぁとしみじみ思いました。どんなにバカをやっていても、愛しさやある種の尊敬を抱いてしまうのは根底にある作り手の映画愛や、彼らからの社会的なメッセージ(?)がにじみ出ているから。
不意に飛んでくる真剣な思いに、思わず心を奪われてしまうんです。
こんなにバカな映画なのに社会的な問題にも向き合ってるんだ……。
まさに「ふうん、お前おもしれーやつじゃん」状態です。とことんバカであるという事実は覆されませんが、こういうギャップには漏れなくトゥンクしちゃう! 本当にズルい男ですよ、フィリップ・ラショーは。
そろそろ気になりますよね? 1回騙されましょう!
会う人会う人に、ヒャッハー面白いよ? 絶対楽しいよ? とささやきまくって、早4年ほど。
フランス映画という最初のハードルが高すぎるのか、なかなか手を出してもらえず……長年自分のプレゼン能力の低さに自己嫌悪に陥っていました。
しかし、映画部という場所で強行突破をして、思った以上に楽しんでいただけて、ヒャッハーとフィリップ・ラショーという存在を知らしめることができて、今私は自分の人生において一つの大きな偉業を成し遂げたという達成感にあふれています。
こういう出会いがあるからB級あさりはやめられないし、駄作への愛も止まらない!
そして、私に映画はひたすらに楽しんでるだけでもいいんだということを教えてくれた作品でもあります。
気になってる方はぜひ騙されたと思って映画を再生してみてください。絶対に、後悔はしないはずです!
※2021/4公開。2022/7/2再編集。画像や動画はお借りしています。
第8回 映画部活動記録(2021/1/22実施)
『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)
監督・脚本:押井守
出演:古川登志夫
平野文
鷲尾真知子
藤岡琢也
参加者
小林、O.Y、K.Y、K.M、T.K、O.K、加藤
小林
悪夢度:★★★★★
もう一度見たくなる度:★★★★★
総評:★★★★★
大学生の時に見てから何百回も見ている。
私は和光大学という学生自治区は24時間過ごせる大学で4年間過ごした。演劇サークルにいたので公演前になると1週間くらい徹夜したり、学校に泊まったりしていた。
学生の演劇サークルで起こることはSEX、SEX、SEX、逃亡、嫉妬、そしてバイオレンスみたいな滅茶苦茶な状況だった。
公演前は滅茶苦茶な人間関係を整理して回ったり、公演を成立するために雑用に回ったり、もうやれることはなんでもしていた。
そして公演当日。打ち上げ。
楽しい打ち上げや公演当日もあったはずだが、今でも覚えているのは公演前の滅茶苦茶な状況なのだ。
サークルだけど公演ごとにメンバーは変わるし、4年になったら卒業するし、舞台が終わったら全ては消えてしまう。
やっぱりお祭りの前が一番楽しかったんだろうな。これがビューティフルドリーマーなんだろうなぁ。
公演のメンバーであーだこーだやって、めちゃくちゃやっていた毎日が。
それとも今会社にいて、子供がいて、新しいサービスを進めている毎日が、実は大学生の私が見ている夢なんだろうか、だからこのサービスは……。
K.Y
ラブコメ度:★★☆☆☆
もう一度見たくなる度:★★★★☆
総評:★★★★☆
落ちを知ってしまえば、そうでもないかも知れないですが、
ラブコメと思っていたが、初見では下手なホラーより恐ろしい。
何がなんだかって感じです。
ラブコメを求めているなら、これではないと思いました。
専門家のT.Kさんの説明を聞くと、思いのほか深い作品だということがわかりました。
また、この作品の監督とは絶対仕事したくないと思いました。
T.K
また観たい度:★★★★★
押井守感(?) :★★★★☆
しのぶさんの可愛さ:★★★★★
ラムちゃんの可愛さ:★★★★★
総評:★★★★★
今回の作品はうる星やつらの劇場版として最も有名で賛否分かれる『ビューティフル・ドリーマー』です。
高橋留美子先生が「これ私の作品じゃなくて押井さんの作品ですよね(意訳)」とキレたという逸話がありますが、押井守作品好きにとってはハマるかと思います。
学園祭前日の友引高校でいつまでも終わらない準備にずっと明け暮れる。オチを言ってしまえばずっとラムちゃんの夢の中でどんちゃん騒ぎし続けているというお話です(ところで皆さん『うる星やつら』シリーズ観てないというのマジなんですかね? 中学の頃とか普通に話通じたもんですが……)。
時間の流れ方というか認識がボケる感じなんですかね。ただ同じ1日を繰り返すのではなく、時間が進んでいる感覚だけがボケている。
今回の映画部で改めて見てみて思ったのですが、『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンドレス・エイトと涼宮ハルヒの溜息は設定的にちょっと似ていますね。
時間を繰り返すのと、妙に都合よく設定された世界、最終的には夢として終わらせるとかとか……
とりあえず何度でも観てほしいシーンがあってですね、ハリヤーで飛んだ翌朝の朝食、あたるの家で大人数でワチャワチャと動いているシーンがあるんですよ。
ここ全員が全員バラッバラかつ繰り返しではない動きしているんですよね〜すごい気合の入った作画でニヤニヤしながら観ていました。
あと作中に何度も出てきますがしのぶさん可愛くないですか? ラムちゃんが可愛いのはそれはそう。そうなんだけど! なんかしのぶさんいいんですよ!
最後の最後、夢邪鬼のやつまだ学園に居るんですよね〜。そのせいで「え、夢から覚めたんだよな?」とラストちょっと不安にかられるあたりも好きです。
夜中に観始めてそのまま寝るとどこまで映画だったのかわかんなくなるのも良いですね!
うる星やつらファンというか、押井守ファンというか、メガネの長台詞のファン(?)の方は是非見てみてください〜
O.K
考えるな感じろ度(TENET?):★★★★★★★★★・・・・
映画部の良さが出ていた度:★★★★★
もう一度見たくなる度:★★★★☆
総評:★★★★☆
考えるな感じろ
「ループもの」の名作と言われているらしい本作。とはいえ「うる星やつら」の劇場版でしょ? と正直あまり期待せずに見始めたのですが、裏切られました。
明るい日常に少しずつ浸食してくる“異変”の描写が怖いし、想像以上に難解だし、たぶんいろんな作品のネタがちりばめられているんだろうな~と思いつつも、途中から頭の中は「考えるな感じろ……」状態(笑)。なんとも不思議で、不気味で、強烈に記憶に残る一本でした。
ちなみに、うる星やつらに詳しくなくても大丈夫ですが、1話だけは見ておいたほうがもっと楽しめるかも。
これこれ、映画部に求めていたもの!
恥ずかしながら今までこの作品自体を知らず、今回の映画部がなかったら見ていなかったと思います。新しい映画との出会いがあるのも映画部の醍醐味ですよね。
鑑賞後のT.Kさんの解説もありがたかったです。できれば副音声で話していただき、もう一度鑑賞したいですね!金曜ロードショーのTwitterも放映中に裏話とかリアルタイムでツイートしていますし、そういうのも楽しそうだなーと思いました。
加藤
そのへんのホラーより怖い度:★★★★★
何が何だか度:★★★★★
もう一度観たくなる度:★★★★☆
総評:★★★★☆
私にとって「うる星やつら」といえば、懐かしのアニメ特集やら、ランキングやらでしか見かけないアニメといったイメージ。
連載されていた年代もあるのかなぁとも思いましたが、80年代に連載されていた「ぼくの地球を守って」や「シティーハンター」は読んでいるので、私がただ触れる機会がなかったというだけみたいです。
とにかく、人生初の「うる星やつら」でした!
パッケージ詐欺甚だしい
今回は最寄りのTSUTAYAにDVDがあるとのことで、私は前日にレンタルをしておりました。
ノーラン作品ぽいとか色々と前情報は聞いていましたが、そうは言っても「うる星やつら」の劇場版なわけで。軽い気持ちで観れるのかなぁと思っていたんです。
パッケージ裏には「時空を超えたドタバタラブコメディ(ハート付き)」なんて書いてあったし。
なんたって、あの「うる星やつら」なわけだし、きっと想像通りのテンションの作品なんだろうなぁ……と。
まあ、そんな私の安心は大きく裏切られるわけですけど。
とはいっても、私がコメディじゃない! と思っているだけで、鑑賞中に小林さんは「笑えるからコメディ」と言っていたので、私の基準がおかしいのかもしれません。
繰り返される日常のなかで、少しずつ違和感に気がついていく感じ……じわじわと“当たり前”が侵食されている感覚って、そのへんのホラーより怖いですよね。
この映画が「うる星やつら」なのかは分からない
観終わって思ったのが、「そもそも、この映画って『うる星やつら』という枠で良いのか? 」ということ。ファンのなかで賛否がわかれるのは、とても理解できます。
作品自体のクオリティは高いですが、原作ありきの劇場版映画で原作のトーンとは異なった作品を出してくるのは、なんとなく違うのでは? という気もしてきます。
しかし、作品としてはとても楽しめたし、押井作品への興味も以前より高まりました。少しずつ手を出しやすい作品も教えてもらえたので、漁ってみようかなと思います。
作品に詳しい方がいると、解説もしてくれるし、次の道しるべも示してくれるし。とても楽しく発見の多い映画部でした!
※2021/1公開。2022/7/2再編集。画像はお借りしています。
第7回 映画部活動記録(2020/12/11実施)
『真夜中のパリでヒャッハー!』
監督・脚本:ニコラ・ブナム、フィリップ・ラショー(『ヒャッハー』シリーズ、『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』)
出演:フィリップ・ラショー
アリス・ダヴィ
ヴァンサン・ドゥサニア
タレク・ブダリ
ジュリアン・アルッティ
予告:
参加者
T.H、小林、K.Y、O.K、加藤
今回もレンタルスペースを借りての鑑賞会でした!
備え付けのゲームは使用自由とのことだったので、鑑賞後は一時ゲーム大会に。……ゲームを通して、皆さんの別の顔が垣間見えた映画部でした。
武井
友達の最低度:★★★★★
ハートフル度:★★★★☆
総評:★★★★★
漫画家になりたいという自分の夢を叶えるために、社長の息子の子守をさせられた主人公とその友達が織りなす、子守の1日を振り返る爆笑コメディですドンドンパフ♪
「Taxi」もそうでしたが、フランス映画ってこういう破天荒キャラがよく出てくるけど、いつもほんまか? と思います。もちろんこんな奴らいないと思いますけど、いくらなんでも……という表現が多すぎる。
裏を返せば、日本の予定調和の戦隊モノとか、時代劇の殺陣なんかもそう見えてるのかもしれませんね。コメディという意味ではドリフのたらい落としとかかな。
出てくる奴らが全員常識知らずだからこそできる、自分の常識という枠をのっけからぶっ壊してくれるその爽快感がとても気持ちいい。途中、倫理観も吹き飛ばされて大笑いできました。
これも、みんなと一緒にワイワイしながら、ちょこっとした感想も言い合いながら見られたのがとてもよかったですね。ひとりで笑いながら見るより、人と一緒が断然いい。
「映画部」としての活動の意義が、一番よく出た作品だったかなと思います。
小林
もう一度観たい度:★★★★★
バカ映画度:★★★★★
次も見たい監督度:★★★★★
総評:★★★★★
映画オタクが作ったアイデア盛り沢山映画
笑って、笑って、そして感動した楽しい映画である。
この映画の根っこのストーリーは昔からよくある「子どもを育てることになってしまった主人公の、子どもとの友情と成長譚」である(クレーマークレーマーとか赤ちゃん泥棒とか……)。
でもこの映画はそれを現代版にするだけじゃない。
POVで撮影された映像から、何が起こったかを推理するサスペンス要素。
主人公や子供視点ではなく、親目線のストーリーも同時に描がかれていて、群像劇の要素もある。
このアイデア盛り沢山の感じが、この映画の新しさにもつながっている。
そしてそれぞれの人物のストーリーや伏線がしっかり回収されていく様は、本当に天晴れである。
脚本や演出をしっかり練ったんだろうなと思う。
バカな映画こそ真面目に作らないと笑えない。
笑われるのと笑わせるのは違う。
POVのシーンも好き放題作っているようで綿密に演出されている。
大人たちが真剣におバカな映画を作るのを想像するのは楽しい。笑わせてくれてほっこりさせてくれてありがとうな良作である。
K.Y
伏線回収度:★★★★★
もう一度見たくなる度:★★★★★
総評:★★★★★
伏線のちらばめ方が凄かったです。
そして、推理小説のトリック説明のような見事な伏線回収をしていました。
狂った人間の凄さ、家族を奪われた怒りなど、内面も見事に表現していました。
最後には、犯罪者は逮捕され、納得の最後でした。
ただし、馬鹿でした。
大笑いしました。
いい映画でした。
O.K
精神安定剤になるよ度:★★★★★
もう一度見たくなる度:★★★★☆(ヒャッハーしたくないときは見なくていいのでマイナス1)
総評:★★★★★
フランス映画ってこんなに面白かったのか!
まさにヒャッハーなお話でした。どんな感想?って感じですが、見たらわかります。
とはいえ、タイトルからは想像できないほど映画の作りは結構細部まで練られていて、気軽に見れる内容だけどちゃんと見てないと面白さが半減しちゃうくらい伏線を回収しまくります。「あれだったのかー!!!」「お前だったのかー!!」と何回ツッコんだかわかりません(笑)。
正直、加藤さんがおすすめしてくれなかったら一生手に取ることはなかったでしょう……フランス映画の難解なイメージがガラリと変わった作品でした!
精神安定剤にもなります※個人の感想です
元気になりたいとき、お腹抱えて笑いたいとき、とりあえずヒャッハーしたいときに観てください。超個人的な感想ですが、笑いが止まらなかったことによる鑑賞後の疲労感で、その日は良く眠れました。安眠剤としての機能もあるのかもしれませんね(ありません)。
余裕のある方は、マリカーもセットで用意しておくことを強くおすすめします。こんなにバナナと亀を投げたい欲求にかられたことは今までの人生でありませんでした。絶対やりたくなります!
加藤
何も考えずに観たい度:★★★★★
騙されたと思って観てほしい度:★★★★☆
推し監督度:★★★★★
総評:★★★★★
タイトルに「ヒャッハー」とかいう訳の分からない単語が入っているせいで、「くだらないんだろうな」と思われてしまう映画ですが……騙されたと思って、ぜひ観ていただきたい映画ナンバーワンです!
でも、くだらないんでしょ?
ええ! とてもくだらないです! くだらないけど、笑いだしてしまったが最後、そこから笑いが止まることはありません。
予告のナレーションは林家ペー&パー(しかもただ笑っているだけ)で狂気満載。どう考えても、つまらない部類ですわー……と思っちゃうんですけど! それが正常なんですけど!! その常識を超えた先にパラダイスが待っています!!
ヒャッハーはヒャッハー以外の何物でもない
これは絶対ハズれ映画だな! と思ってレンタルしたのが、この映画との出会いです。人生にはわざとハズれを引きたいときがありますよね。サメ映画やゾンビ映画を選ぶときは、これは駄作の匂い!!! と嬉々として選ぶことも多々。
タイトルで損してるわな、と思いつつも、これ以外のタイトルってないよねという結果に行きつくのは、この映画を観た人たち共通の認識だと信じて疑いません。
テンションはそれ以上でもそれ以下でもないし、観終わった後の満足度もめちゃくちゃ高いです。
なんとなく笑いたいな~という日、なんとなく物足りないな~と思える日。そんなときに、パッと咲いて散ってくれるのが「ヒャッハー」。今日ってなんとなく良い日だったかもな! と錯覚させてくれるのがヒャッハーなのです。
語れるけど語れない
ここまで感想を書いてきて思ったのは、語りたいことがあるけれど全部語り切れないな! ということです。
ストーリーに触れただけで、なんとなくネタバレになってしまう気がするし、このネタが面白くて! もネタバレなのでは? と心配に。それに、この映画はやっぱり「面白いのか? 」と疑いながら観てほしい気もします。
面白いのか? 面白いかも……。 これめっちゃ面白いじゃん! と、その過程すら楽しめる力を持つ映画だということは、私が保証します。
下品なネタは断る! な方にはあまり強くオススメできないですが、なんか面白い映画観たいな~というときには、ぜひヒャッハーを思い出してほしい……。
一度観てしまったら、ヒャッハーなしの人生なんて考えられません。私たちの人生に寄り添ってくれる存在、それがヒャッハーなのです。
※2020/12公開、2022/7/2再編集。画像と動画はお借りしています。