映画部活動報告

月1くらいで開催される映画部の活動報告場所

第20回 映画部記録(2022/7/29実施)

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーロー』(2022年・日本)

監督田崎竜太

脚本井上敏樹

キャスト:樋口幸平/別府由来/志田こはく/柊太朗/鈴木浩文/石川雷蔵
     富永勇也/宮崎あみさ/タカハシシンノスケ
     駒木根葵汰/姜暢雄岸田里佳島崎和歌子

 

予告:

参加者
T.H(別日)、小林、F.M、Y.N、加藤

T.H

アクション映画としての出来:★★★★★
家族の物語としての完成度:★★★★
脇を固めるキャストの豪華さ:★★★★★

日本の特撮かくありき! 単体アクション映画としても◎ 正直、ここまでいいとは思っていませんでした。予想を覆す素晴らしい映画でした。

特撮ってそれだけで子ども向け=子どもだましだと思われがちですが、全然そんなことはないですね。

変身時の演出、戦闘時のエフェクト、映画ならではの豪華なキャラクター。少数の主人公のはずなのに、敵味方含めてこんなにたくさん出てくるとは思わず。それだけでもワクワクしますよね。昭和ヒーローで止まってる自分には特に。

予備知識なしで見たのでキャストも全く知らなかったんですが、巷で話題の朝倉唯も出てたり。戸次さんも八嶋さんもいい味でしたし。あとはやっぱりケイン・コスギですよね。昔はヒーロー戦隊のレッドやってた彼が悪役でこんなに活躍するのがなんか不思議な感じもしました。

キャストが豪華!

主人公格は新人さんが多いですが、脇を固める役者が豪華!

ヒロイン役は国民的美少女コンテストグランプリの人だし(知りませんでした)、お母さん役が元宝塚トップ女優! なんかやたら演技上手いからおかしいなとは思ったんです(知りませんでした)。

お父さん役の戸次さんもいいお父さんで、しかも変身もして子どもたちと一緒に戦うのは胸熱でした。

ちゃんとしたアクション映画が日本にもあった

考えてみたら、ドラマ、映画含めてこれだけ真面目に肉弾戦のアクションやってる作品ってほとんどないですね。「クローズ」みたいなヤンキーものとかは、あれアクションって言わないし。

ジャッキー・チェンが中国べったりで事実上いなくなり、ジェット・リードニー・イェンくらいしかカンフーヒーローはいなくなりましたが、こんな身近にこんなにいい撮り方する作品があったとは。某5色の戦隊モノと違って、仮面ライダーは昔からアクションを真面目にやってましたけど、迫力は健在だったのがちょっとうれしい。

演出も、多くはCGで爆発とかビームとか入れてますが、全部CGとかじゃなくて実はパンチが当たる時にリアルな火花を出したり、ホコリ(みたいなのを出すバッグとか仕込んでる)が出ている肉弾戦のシーンも結構あるし。なんか背の高いのとかちっこいのとかで、役者の人数もリストラしてる番組もあるみたいですが、CGに頼りきらないところはさすが。

そして、一番の見どころはやっぱり、主人公とケインの肉弾戦一騎打ち! アクション俳優も使ってるんでしょうが、カメラワークも演技もすごく迫力感じました。

アクションって攻撃よりもやられ方なんですよね。敵の圧倒的な強さがちゃんと伝わる吹っ飛び方と、吹っ飛んだ時に生身に戻ってて役者が転がる演技もちゃんとしてる。多少のすり傷とかもあると思うんですが、役者にやらせてるところもありそう。こだわってる感じがわかります。

仮面ライダー」といういい意味でのエクスキューズの使い方がうまい

矛盾もたくさんあるんですが、脳内では「まあ、仮面ライダーだからね」と納得させられてしまうところは、良くも悪くも仮面ライダーならではだし、だからアイドルとかをアテンドできる。無理にマジでやりすぎるよりもこれくらいの方が、ファンも安心してみられていいですね。

ただし、戸次さんとか映美さんみたいなちゃんとした役者が傍にいるから、作品としては素人丸出しの若手ばっかりには感じない。そこもうまく見せてる部分ですね。

映画だけの新キャラもたくさん出てきていて、次作のキャラもちょこっと出てきたりもして、客を飽きさせずに次につなげるための工夫もされてるところがさすがは何年も続くシリーズ。数えてみると、5人で1人を倒す卑怯なシリーズよりも、ちゃんとした造形がされたキャラクターの数は敵味方含めて圧倒的に多いんですね。力の入れ方も予算もしっかりかかってる感じしました。

子どもの頃、ブルース・リーとかジャッキー・チェンのアクションシーンだけ何度もビデオで見たりしてた時代を思い返す、いいアクションでした。ストーリーも理解できないところは少なくて、テレビシリーズを見てない初見の自分でもちゃんと関係性とかいろいろわかったし、この1作品だけでちゃんと完結する映画になってます。

ドンブラザーズ? 牛丼、豚丼、鰻丼の兄弟の話?

そういえば、今回の映画って同時上映というか、おまけ映像もついてたんですよね。なんか桃太郎のパクリみたいな話でした。いや、よく知らないんですけど。

そうそう、ドンブラザーズだ。イモ演技な人たちがたくさん出てる映画でした。

変わり映えしない5色のヒーローが出てましたが、2匹はCGだったんでコスト削減が進んでるのかなと思ったりしました。劇中で映画撮影もしてましたが、あのイモ演技が演技なのか素なのかわからなかったですね。

一緒に見たせいか、仮面ライダーの映画としての完成度の高さが否応にも比較されて際立ちました。多分そういう狙いだったんじゃないかな。

内容はな~んにもなくて、テレビシリーズと同じように敵が1人いて、いろいろあってそいつを倒すってだけの話。映画ならではの秘密がわかったとか、テレビにつながる伏線があったとか、そういうのも一切なし。出てこないキャストもたくさんいました。巨大化してロボットで倒す演出も全カット。唯一よかったのは5人のキャラ紹介がまともにされてたことくらいでしょうか。

もはや、仮面ライダーに予算かかりすぎてどうしようもなかったのかなと勘繰りたくなるレベルの手抜き感、チープ感でした。

そう、これこそが、ドンブラザーズの魅力。

まともな人間が考えないような演出。ヒーローは仮面ライダーに任せとけとキャストに言わせる神経。ヒロインに後世トラウマになるであろうひどい演技をさせる演出。終わった瞬間に、「30分しかないならテレビでよくない? 」とすべての観客に思わせてしまう完成度。

これらすべてが、ドンブラにハマるための仕掛けだったことに気づいたのは、おそらく10人いない映画館の中で自分だけだったでしょう。

今のご時世、年間50話も使ってこんなことできる狂気の番組はほかにないです。キャラクターだって過去の戦隊モノをそのまま持ってくる以外に新しさはないし。

そこまでしてやりたいのがこの映画だったわけじゃないはず。もしかしたらテレビの終盤でこの映画の伏線を回収する可能性もあるかもしれません。てか伏線もなかったけど。

そういえば、劇中映画に出てきたゾンビの演出は、これまで見てきたゾンビ映画よりはまともに動いてた気はしますね。メイクもちゃんとしてたし、津波でわっさわっさ押し寄せてくるゾンビとかいなくてよかったです。

自分は、ここ数年でB級映画を見慣れてきたから心の準備ができてましたが、これをまともに子どもと一緒に見に行ったら、お父さんは「なんだこれ!」と激怒するかもしれません。評価を見ても賛否まっぷたつ。そんな映画なかなかないです。

ある意味では、大人にも「まあまあ、これくらい肩の力抜いて映画みようよ」と、自分がどこまで許容できるかのレベルを試されているのかもしれません。

そして、多分ここまでの展開をすべて、監督は見越した上で意識してやってると思われます。

一般人がみたら駄作以外の何者でもなく、単体映画としては今年見た中では最低の作品だと思います。でも、そこまで理解している人からしたら、今世紀最高の映画の1本かもしれない。

ちなみに、2本立ての1本目がドンブラでしたが、親子連れの子どもの大きな笑い声が聞こえて、ドンブラだけ見て帰っていました。

どちらも男の子向けなイメージが強いですし、わけがわからないドンブラは大人でないと理解できない、カッコよくて完成度の高い仮面ライダーは子どもでも楽しめるという感じが一見しますが、実際の子どもの評価は多分真逆。

大人が考えがちな「子ども向け」が「子ども騙し」でしかなく、大人が本気で楽しむために作ったものがむしろ子どもにもウケるという点で言えば、ドンブラザーズは多分、ジブリ映画と同レベルにターゲットをしっかり狙って考えた作品になってると思います。

 

小林

元ネタはなんだっけ?度★★★★

暴走ええやないか

ドンブラザーズのメンバーが映画の撮影に参加することに。そこで映画のシナリオを無視した暴走ドタバタ喜劇が始まるというストーリー。ドタバタ喜劇は面白かったけど、決定的に何かが足りない。

それは元ネタのあらすじがよく分からないと言うことに尽きると思う。

「新初恋ヒーロー」という所謂、高校生恋愛映画が元ネタなんだろうがよく分からない。シーンとしてはパロディをしているのは分かるがストーリーに比べると弱い。不治の病とか記憶を忘れる●●みたいなストーリーはどこへ行ったのか?

これが桃太郎や浦島太郎なら誰でも結末まで知っているから、何が狂って暴走しているのかが分かりやすい。今作は架空の物語をさらにパロディにしているので、後半になるとどこへ落ち着くのかが全く分からない。

同じ脚本家のシャンゼリオンという作品に「友情ええやないか」という回があった。こちらは走れメロスの映画化に対して、主人公と腐れ縁の友人が役者で参加するという話だった。

良い加減でお調子者で女好きな主人公をひたすら真面目すぎるバカが待ち続ける。主人公は案の定、女の子に声をかけられて友情そっちのけでデートに明け暮れて、約束を忘れてしまう。友人は一途に待ち続けた挙句、怪人に殺されかけるストーリーだった。こちらは走れメロスという非常にわかりやすい物語が下敷きになっているから、暴走っぷりや結末を読者が知っているからこそ笑いが増幅する。たしか冒頭にも走れメロスのあらすじ紹介があったはずだ。

ビートたけしの「赤信号みんなで渡れば怖くない」と一緒でパロディはみんなの常識の上に成立しているのだ。

今回は新初恋ヒーローのあらすじ紹介もなかったし、非常に雑な印象を受けた。

元ネタのあらすじが分からないから最終的なゴールが見えない。ゴールが見えないから主人公たちが映画作りを通して何が変わったかよく分からない。

そこがこの作品の物足りなさに繋がっているんじゃないだろうか。

 

Y.N

マジで何を見せられているのか分からない、何も残るところがない映画だった。

 

加藤

意味不明度:★★★★★
ジロウ足りない度:★★★★★
もう一期観たい度:★★★★★

ドンブラザーズに求めてたものは“コレ”なんよ

「おい、ニチアサが今めっちゃやべーの知ってる? 」

隣のデスクからの、この呼びかけが私とドンブラザーズの始まりである。なんとなく1話を観て、そのまま2話、3話……と重ねていけばいくほど、ドンブラの意味不明さにドハマりしていった。だって、あんなに意味の分からないヒーローいる? トッキュウぶりに日曜日が楽しみな生活を送ってる。

さて、本作。ドンブラザーズのカオスを集めて煮詰めたみたいな映画でした。本当に30分の内容か? ってくらいに賑やかで盛りだくさん。いや、いうて意味が分からないんですけど。

アクションシーンは見どころたっぷり!

今回のアクションシーンは、戦隊ファンにはおなじみの“あの”採石場で撮影されたらしい。映画監督のヒトツ鬼化ということで、戦闘シーンは最初から最後まで映画っぽさにこだわっていたのが個人的には楽しかった。

全員でそんなことするの? とも思ったし、まさかのヒトツ鬼がヒーローの指示だしをしだすし、まさにドンブラでしか許されない所業だらけだった。こんなに敵もヒーローも一丸となって戦えるのは、ドンブラだけなのでは? というレベルに、ひたすらおかしいシーンが続いていた。もちろん、私は大爆笑である。

カオスにカオスを重ねた結果

意味が分からないものになってた。最初から最後まで笑いっぱなし。

私は何の学びにもならないコメディ映画が好きなのだが、本作はまさにそんな感じだった。これまでの歴代、学びのないコメディは「ヒャッハー!」シリーズだったが、それを上回る何も残らなさ。

若手のイケメン俳優とかこれから羽ばたいていく女優たちの登竜門的なヒーローシリーズなのに、こんなに変顔をさせていいのか? ってくらいにずっと変な顔してる。私の大好きなジロウも最後変な顔をしていた。そういえば、ジロウの出番少なくてちょっと寂しかったな……。

しかし、映画を観る直前にテレ朝の夏フェス(?)的なものに参加したおかげで、イヌブラザーへの愛は爆発していた。指名手配犯だというのに、ずっと可愛かったし、白タイツも似合っていた。馬の被り物も似合っていた。

結果、みんな可愛かったというのを総括にさせてもらう。

 

※画像はお借りしています。

第19回 映画部記録(2022/7/15実施)

『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021年・アメリカ)

監督:ケヴィン・ルイス

脚本:G・O・パーソンズ

キャストニコラス・ケイジ
                  ベス・グラント
     ケイリー・コワン

 

予告:

参加者
T.H、小林、K.S、T.K、O.K、加藤

T.H

ホラー度:★☆☆☆☆
ニコラス・ケイジの存在感:★★★☆☆
ぜひ見てほしい度:★★★★★

映画部の歴史上最大の駄作(誉め言葉)

シボレー・カマロで疾走する主人公。こんなクルマに乗れるくらいだからまあまあ金はあるはずだ。

それが、とある街を通りかかったときにタイヤのパンクに見舞われ、なぜか修理するまで一晩、レジャー施設を掃除すればタダになるという。この時点で、この映画の設定にかなり違和感を感じた。

北米のスポーツカーブランドであるシボレー・カマロは新車で600万円以上する。
現地で買ったとしても500万円はくだらない。

標準タイヤはフロント245/40R20、リヤ275/40R20。
当然ながら、こんなタイヤでパンクなんかしたら命に関わるので、パンク時に内部からゴムで穴を封じてある程度の距離を走れるようにするランフラットタイヤを標準装備している。

LTグレードには、グッドイヤーの「イーグルF1」が、SSグレードには、ブリヂストンの「ポテンザS001」が標準装備だった。 

https://response.jp/article/2015/05/22/251732.html

https://www.taiyakan.co.jp/shop/nanrinji/tech/showcase/1347095/

百歩譲って、今回のまきびしが大きすぎてタイヤ交換が必要だとして。1本あたり4〜5万円、交換工賃も含めれば20万台後半はいく作業を、80年代くらいのトラックに乗ったおやじに任せる気が知れない。当然クルマ自体が盗まれる方を心配するに決まっている。

この時点で、映画を作った人間が無知なのか、この主人公がおかしいのかの2択になった。

「恐怖」は「勇気」で打ち消される

この映画で一番違和感を感じたのは、恐怖を感じなくなってしまうこと。

ひとつは、死ぬ人間が圧倒的に少ないこと。
実はやられているのは人形が多く、壊れ方も油が飛び散っているものの、血ではないので恐怖心は煽られない。

確かに途中から人も死ぬのだが、その死に方に怖さが感じられない。怖さを感じさせないために遊園地をロケートしたのかも知れないが、血が飛んだり体が飛んだりする様子も描かれている。正直狙いなのかよくわからない。

もうひとつは、一切恐怖心を抱いていない主人公の存在だ。

街の人間たちは、その昔起きた凄惨な殺人事件と、その恐怖に脅かされ続けている。
しかし主人公は彼らを怖がらない。最初は少しはビビるのかと思ったが、一切それがない。

ピンボールとビールの合間に人形を片付ける。まさに掃除でしかなかった。

主人公が人形に立ち向かってくれるおかげで、観客には勇気が湧いてくる。
頑張れ、負けるな、なんか人形怖くない、だんだんそういう気持ちにさせてくれたのは、もしかしたらニコラスケイジの演技力のおかげかもしれない(いや違う)。

トラウマを映画内で解決してしまう自己矛盾演出

極めつけは、序盤で人形に追いかけられる男女が逃げる廊下で、人形を引きずり回してぶっ壊すシーン。

普通、前半に出した恐怖シーンと同じ場所を後半で出すのは、前に見せたあの場所で「ああ、またこの場所で……」と怖がらせるためだ。

なのにこの映画では、前半のトラウマシーンを、後半で「こんなん怖ないわ」と主人公自ら乗り越えてしまった。

このシーンまではまだホラーだったかもしれないが、このシーンから後はただのアクションになった気がする。明確にそういう演出だったのだろうとも思う。

結局、何十年前の人殺しのおばけなんかよりも、狂った生の人間の方が何百倍も怖いってことを痛感した。そういう意味では結論として「ホラー映画」なのかもしれない。

ニコラスをしゃべらせないことでB級映画になった

(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

全体的に映像はしっかりしていたし、カメラワークとかもB級映画ではなかった。
キャストとしてはニコラスケイジ以外はほぼ知らないので、圧倒的に主人公にフォーカスが行ってしまうように仕向けている。

なのに、まあまあ名俳優なのに、ひとこともしゃべらせない。

その無駄遣い感が、B級の証しともいえるのか。「大怪獣のあとしまつ」とかにも近い、期待を裏切られる感がどこかに残っているような気がする(ニコラスケイジに期待なんてしてないんだけど、どこかにあるような)。

これらすべてが計算されていたのだとしたら、監督はもしかしたらすごい人なのかもしれないとも思う。でも、儲かる映画は撮れないんだろうなぁ。

とここまで書いてみて、この映画を見たことがない人にはぜひ見てみてほしいと勧めたくなっている自分に気づいた。

「駄作」というのは、演出がダメなのでも、映像のクオリティが低いのでもなく、こういう映画のことを言うんじゃないかと思う。そのことを誰かと分かち合って話してみたい。そのために、いろいろな人にぜひ見てみてもらいたいと思ったりする。

 

小林

ヒーロー映画度:☆☆☆☆★

ただただ王道のヒーロー映画

流れ者のヒーローが、狂った街の秩序を壊し、正義を貫き去っていくというという西部劇や時代劇の王道ストーリー。本作はまさにその王道に則った正統派ヒーロー映画だ。

狂った犯罪者たちが作った遊園地で起きた連続殺人事件。犯人たちは捕まる直前に闇の儀式で遊園地のぬいぐるみたちに乗り移る。ぬいぐるみたちは傍若無人な振る舞いの限りを尽くす。

街は犯罪者のぬいぐるみたちを抑えるために「生贄」として通りがかった人間を罠に嵌めて差し出すことを繰り返していた。そこに主人公であるヒーローが偶然通りかかる。

主人公がとにかく強い。無敵。

(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

素手でぬいぐるみ(ロボット?)をバンバン倒していく。
葛藤もない。
ピンチも一瞬ですり抜ける。
もはやぬいぐるみをぶっ壊すニコラスケイジを見るだけの映画だ。笑

そして街はニコラスケイジのお陰で平和を取り戻す。主人公だが名前すらよく分からない。凄い、よくこんなにシンプルな映画の企画が通ったのかと驚くほどだ。

日本ならくだらない説明がたくさん入るはずだ。

主人公は何者だ?
背景は?
なぜこんなに強いのか?

そんなことなどどうでも良いと言わせられるくらいのカッコいい映像と音楽でニコラスケイジがぬいぐるみをボコボコにしていく!
もう爽快感だけを楽しむ映画なのだ。

確かに物足りない。
オリジナリティを感じる要素はない。
狂気を感じる要素もない。
そこがあれば更に傑作だったのだが……。

だが90分弱を飽きることなく楽しめるB級の良作も必要だと思う。日本にも90分現実を忘れさせてくれて、何も残らない。ただのエンタメ映画が見れる時代が来ることを願っている。

 

K.S

ニコラス・ケイジが悪魔にとりつかれたロボットを淡々と殴り殺していく映画です。
ジャンルはホラー映画なのですが、あまりに淡々と殴り殺していくので怖さは無いです。

個人的な意見なのですが、悪魔とか幽霊は物理で倒されて欲しくないです。
超常的な存在なので、霊能力とか、お祓いとか、物理でなくて何かこう超常的な力で倒してほしい……

寺生まれのTさん 的な倒し方が好きです。

余談ですが、主演のニコラス・ケイジB級映画に出演しまくって、借金を完済したそうです。

 

T.K

オススメ度:★★★★★(ニコラスケイジの元気な姿を観察できます。一言も喋りませんが)
ドキドキ感:★★★★★(最後まで「何かあったら良いな」って期待するだけで終わりました)

(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

AmazonPrimeとかで見るとざっくり紹介文があるじゃないですか。だいたいあれが本編のすべてを説明しているのでオチらしいオチを期待していると肩透かしになります。
驚くほど特徴なくすぅ〜っと終わるので、とりあえず映像ダラダラ再生するのには良いかもしれません。

ニコラスケイジ……ナショナルトレジャーの印象のまま観始めると「あれ、こんなにムッチリしてたっけ?」ってなります。良くも悪くも印象は薄いですね。

 

加藤

B級映画度:★★★☆☆映画
完成度:★★★☆もう一度
観たい度:0

で?っていう

一切言葉を発しないニコラス・ケイジ。最後まで何者なのかは明かされないし、そもそも一晩であんなに綺麗に掃除できるものなのか?3日位泊まったんじゃね? という疑惑がぬぐえない。

(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

マジのマジでB級映画。心に残るものが何もなく、淡々と文字通りにニコラス・ケイジが悪霊を殴るだけの映画なので期待以上の何も得られずに終わる。
高校生たちもただ殺されるためだけに出てきて、もう少しストーリー広げられるんじゃない?みたいな余白をのこして死んでいく。いや、せめて告白くらいはさせてあげなよ……。

ホラー映画に欠かせないセックスシーンも微妙。服を脱がせるところまでは良かったのに……。そもそもなんであの部屋でクラクラ来てたのかも説明されないし、ヒロイン(?)にあの女の子が妙に優しい理由もわからなかった。消化不良〜〜〜!

じゃあ、悪霊が怖いかっていったら、これまた絶妙なラインで怖くねぇのよな。着ぐるみめいたロボットたち、CGが鮮やかすぎて怖くない。着ぐるみ特有の狂気がゼロ。
モデルにしてるシリアルキラーは、ジョン・ゲイシーかしら……とドキドキしてたのに、深堀はせず。そもそも仲間も何人いて、どんなキャラクターで、背景は?みたいなのがゼロだから恐怖心が煽られなかった。

尺的なことを考えれば淡々と見れるしテンポも崩れないんだけど、そうじゃないんだよねぇ……な雰囲気が延々と続いて、もう一度観たいかと言われるとそんなことはなく……。シャークネードのほうが心に残っているという、残念な後味だった。

 

※画像はお借りしています。

第18回 映画部記録(2022/6/24実施)

『ゾンビ津波』(2019年・アメリカ)

監督:アンソニー・C・フェランテ

脚本:アンソニー・C・フェランテ
           ダービー・パーカー
           ジョシュ・ルブラン

キャスト:アイアン・ジーリング
                  エリック・チカシ・リンズビクラー
     シェルトン・ジョリベット
     チェリー・キャシディ
     テイタム・チニキー

予告:

参加者
T.H、小林、K.Y、K.S、O.K、加藤

T.H

B級度:★★☆☆☆
アメリカ映画の王道度:★★★☆☆
タイトルもう少しどうにかならなかったのか度:★★★★★

ゾンビと津波、どうつながるのか

原題「ZOMBIE TIDAL WAVE」と聞いて一瞬頭がバグりました。ゾンビと津波がどうつながるのか、大量に押し寄せるという比喩の意味での「津波」なのか、はたまた津波によって病原体が撒き散らされてゾンビ化するという意味なのか。

B級、C級ばかり見てきたこの映画部の活動の中で、ある種の刷り込みをされてしまっていたのかもしれません。

本当のところは、なぜか海にゾンビが現れて、津波によってゾンビが街に押し寄せてくるという、これだけ聞いたら「?」が止まらないわけのわからない設定です。

ところが、映画としてはとてもしっかりした脚本と演出、カメラワーク。設定にもゾンビが存在する世界線ということ以外、それほど無理がなく、登場人物たちの関係性なども自然とわかります。いわゆる「普通の映画」です。

「ゾンビ」の存在を肯定するための設定も、ある程度映画なりゲームなりをやっていれば、「ああ、そっち系ね」とすぐ理解できるレベルでした。

いい人もやな奴もバランス良く登場する幕の内弁当

役者さんもしっかりした人が揃っていて、あまりイモ役者はいません。よほどおかしい演技もないし、アングロサクソン、ヒスパニック、アジアなど人種のバランスも取れている気がします。

恋愛、親子愛もあれば、生存のために他者を犠牲にするひどいやつも登場して(ちゃんと伏線も回収)、いい意味で観客の感情の起伏をうまくコントロールしてくれました。脚本家とプロデューサーがしっかりした人なのでしょうね。

とはいえ、ゾンビ映画なので時には亡くなってしまう人も出てきます。身内がゾンビになったり、恋人を犠牲にしたり、人間の方を殺してしまったり、無駄死にみたいな人も結構いるので、そういう茶番が好きな人も楽しめる部分は結構あります。

最終的にゾンビをどう滅ぼすのか、対抗策を考える部分も、まあまあちゃんとしてるかなと。最後はキスで終わるのも、「バックトゥザフューチャー」や「ゴーストバスターズ」や「スピード」なんかと同じで、アメリカのパニック・アクション系映画の王道ですが、めでたしめでたしって感じです。

予想を裏切る展開がないことの「退屈さ」

映画の構成もとてもセオリー通り。最初に嫌なやつを懲らしめるいい主人公が出てきて、恋人もいるけど、この街を出ていくことになっている。仕事は警備みたいなもので、恋人が医者、警察とも知り合い、それぞれ大きな子どももいてと、少しずつ登場人物が出てきます。

そして、関係している人の中で比較的ショックが少なそうな人から犠牲になっていく。恋人の娘とつるむバンドマンは、3/4くらいで突然始まるミュージカル調のオリジナルソングに絡んできます(これが出てくるとそろそろ終わりだーって気がする)。

唯一B級感を感じたのは、ゾンビの動きとキャラクター性。初期の血が濃い(っぽい)ゾンビは肌も青くて体も欠けてたりしますが、2代目、3代目になると血色もよくて動き以外はゾンビに見えない。普通に見えるこの人たちが恐怖と違和感を台無しにしてくれました。

文化祭の出し物で記念出演でもしたのか、人数が足りなかったから身内を急遽集めたのか、素人っぽい演技が逆にゾンビらしさだと思ったのか。いい演出とも言えるかもしれませんけど。

もっともっとB級っぽさがないとバカにするポイントが少なくて逆に退屈、というのは、完全にこの部活動に毒された証拠でしょうね。

(良くも悪くも)印象に残ることとは

普通の映画を普通に1本見終わったという感想でしたが、ふと冷静に考えてみると、なぜこのタイミングでゾンビが出てきたのかとか設定が怪しい部分もいろいろあります。でもまあ、そこは言わない約束なのかな。

ただ、これだけおかしなところが少ないと、印象に残るシーンがあまりないのも事実。しっかり楽しめはしましたが、記憶に残る映画でもないんですよね。

誰かの印象に残るものって、言動も、メイクも、映像も、言葉も、音楽も、いわゆる「フック」が必要だと思うんです。その意味ではあまりにも予定調和なアメリカの映画って感じで、とても気持ちよくスルーっと流れていってしまった。

意外な秘密の暴露もすぐに解決してしまって、後に残る謎もそれほどない。となると、印象に残らないのも仕方ないですかね。

多分、インパクトを残すこと自体は簡単です。超絶有名な俳優、超絶グロテスクな映像、超絶やきもち焼きな女性、超絶チープなサメ、超絶意味がわからないハンドスピナーを回すおじさん……

でも、「ゾンビ津波」はあえてそれをしなかった。きっと正統派の映画として評価してほしかった、そんなスタッフの思いを感じます。

だから、やっぱり「B級映画」なんでしょうね。

 

小林

面白い度:★★★☆☆ 
語りたくなる度:★☆☆☆☆
ジャケ再現度:★★★★★

ジャケットへの裏切り

遂にゾンビが海からやって来るようになった。それもゾンビが大波に乗って海岸の街に襲いかかるのだ。

大体この手の映画はジャケットにあるビジュアル、今回で言うとゾンビが津波でやって来るようなシーンが無かったりするのだが、今回は文字通り大量のゾンビが津波と共にやって来る。

東日本大震災を思い出すので、正直ゾンビよりも津波の方が圧倒的に怖いが…津波の跡に、街にゾンビが襲いかかるのは、傷口に塩を塗るような感じで怖い。

よく考えられたシナリオだと言えるし、ゾンビを感染症だと位置付ける医師の対応など、東日本大震災やコロナを意識したシナリオなんだろうと思う。

でも全体的に真面目な展開で、90分飽きずに見られ反面、あまり語る気が起きないのはなぜか……。

一応B級ですよ。とギャグもあるが面白くない。語る気は起きないという映画って本当に難しい。

おそらく展開通りにストーリーが運び過ぎなんだろう…

  • 自分探しで街を出たい主人公
  • ゾンビ出現
  • ゾンビが街を襲う
  • 街を守らざるを得ない状況に陥る主人公
  • 街を守り、街へ残ることを決める。エンドロール

オーソドックスな西部劇のようなストーリーで破綻がないけど、新鮮味も無い。シンウルトラマンみたいにディテールやジャンルに対する愛のある描写もない。

ウィジャシャークやランドシャークには徹底的なz級作品、サメ映画への愛を感じた。めっちゃ楽しそうに作ってるだろう。

今作にはそれを感じなかったのが、1番ジャケットに裏切られたと思ったところかもしれない。

と書いていて思ったが、邦題をつけた日本の配給会社が悪い気がしてきた……笑

 

K.Y

三流度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★☆☆☆

深く考えなければ楽しめる、深く考えたら負け

あまり考えず見ると、みんな演技(一部エキストラは除く)しているし、特殊メイクもしているので、それなりに楽しめました。

でも、ちょっとでも深く考えたら負けです。

津波の被害少なすぎない?」「逃げる時、ドア閉めて時間稼ぎしろよ」
「ゾンビ弱くない?」「そもそも津波要らなくない?」

など、引っかかりは満載です。

ちょっと金をかけたコントとしてみれば、なかなか面白かったです。

ただ、真のクソ映画ハンターには中途半端な作品と見られてしまうので、あまりおすすめしません。

 

K.S

映像がきれいでしたが、ツッコミどころも多い映画でした。

なんの前触れもなく起こる津波津波に巻き込まれても、砂浜に打ち上げられて普通に助かる主人公たち。

地震のない国では、津波をただの大きな波としか思っていないのか……?と考えさせられました。

ドラマーがスティックを武器にゾンビに立ち向かうシーンが、個人的に一番好きなシーンです。

スティックでポコポコ、ゾンビに攻撃をするんですが、すぐ負けます。

スティックじゃ無理だろ……なんでいけると思ったんだよ……

 

O.K

もう一度見たい度:★☆☆☆☆

B級にしてはキャストがしっかり演技をしており、ストーリー展開もまあまあちゃんとしていたので“ちゃんと見られる映画”、悪く言えば平凡な映画でした。

後半にかけて突き抜けた何かが欲しい!と、どこか物足りなさも感じてしまい……。

あ、見られる映画とか言ってますが、当たり前にCGは粗いし緊迫感もないのである意味期待通りです。ゾンビのクオリティに関しては動きなど統一されていないのが気になりました。

でも今思えば、足の速い子、遅い子、武器で戦う子などゾンビにも個性がある、ということだったのかもしれませんね。

個人的に好きなシーンをまとめておきます。

  • しょっぱな津波に襲われたのにほぼ濡れずに生き残った主人公。強運すぎる。
  • 周りをゾンビに囲われたため、苦肉の策(?)で車の屋根に乗りギターをかき鳴らす青年。ちょっとかっこよかった。爆笑したけど。
  • 妙に力の入ったゾンビ粉砕ソング「ミートマシン~♪」

今回少し厳しい評価となってしまいましたが、これは今作の前に『ウィジャシャーク』を見てしまい、ハードルを上げてしまった私がいけなかったのだと反省しております。

『ウィジャシャーク』未見の方とは意見が異なるかと思いますのでご了承ください。

 

加藤

B級映画度:★★★★☆
映画完成度:★★★☆☆
もう一度観たい度:0

出来過ぎてもつまらない

私自身、新たにB級映画に向き合うことができた作品でした。

B級映画に求めるもの、それは監督のこだわりを詰め込んだ“ハチャメチャ感”である。

そりゃあ、脚本に矛盾がなければこっちは変なところで突っかかりもしないし、なんだか満足! みたいなテンションにもなる。役者の演技だって、巧いに越したことは無い。

はずなのだが、それをB級に求めるのは間違っている。小ぎれいなだけの作品には面白みを感じない。

本作はよくまとまっていたと思うし、それなりにツッコミどころもあった。でも、それが心に響く“粗さ”だったかというとそんなでもなく……。

アクションだって悪くないし、役者だってそこそこカッコいい。ストーリーだってしっかりとしてるし、予算がたっぷりあることも伝わってくる。

それなのに、どうしてこんなにも微妙な後味なんだろう。

とりあえず、ツッコんでみよう

ある意味スムーズに進んでいくので、正直そこまで残っているシーンがないことは確かなのだが、とりあえずいちいちツッコんでみようと思う。

津波を何もわかってない

改めて、アメリカって津波とは無縁の国なんだなぁと思った。私たち日本人が思い浮かべる津波といえば、東日本大震災などそりゃあ大きな大災害である。

巻き込まれたら最後。二度と平気な顔をして歩くことはできない。

しかし、この映画では歩けちゃってるんだなぁ……。ゾンビが歩けることは100歩譲っても理解できるけれど、津波が起こったときに浜辺にいたら、人間は二度と大地に足をつけることなどできないだろう。

ゾンビ映画にリアリティを求めるなんて間違っているかもしれないが、ゾンビ映画だからこそ、そういうリアリティは大事にしていきたい。

青血ゾンビ、赤血ゾンビ……違いは?

冒頭で登場する青い血のゾンビは、諸々あって海のなかで生まれた初期ゾンビ。しかし、その青血ゾンビに噛まれたゾンビシーズン2の血は赤色。

私が(寝ていたわけではなく)白目をむいていた可能性は否めないが、このへんの説明ってされてますか……?

一応その後も2周くらいしたが、全くその辺に触れられている感じはせず。だから、なんでそういうところを抜かすのよ! と私はむかむかしちゃうのである。

ゾンビのクオリティ

ゾンビ映画に欠かせないものはなにか?

これは、ゾンビ映画愛好家の人なら十分ご存知の通りだと思う。

まず、「ゾンビの設定」だ。ここに矛盾があるだけで、ゾンビの存在意義について視聴者が考える隙を与えてしまう。絶対に適当にしてはいけない。

そして、「ゾンビの演技」も大切だ。
本作では適当に歩いているゾンビが多すぎた。ゾンビの演技は、ゾンビの存在意義そのものである。

適当に歩いているゾンビが散見されるようでは、極上のゾンビ映画にはならない。

また観たい映画とは

あまり実感としてはわからないが、私はB級映画が好きなタイプの人間だと思う。

少女漫画原作の予算たっぷりかけた、ヒットがある程度約束されたアイドル映画を観るのなら、監督がやりたいことをやりたいだけ詰め込んだトンデモ映画を観たい(超大作が嫌いだということではない。MARVELとか大好きだし……)。

今回、スタッフの熱意が伝わらなかったかといったら、そんなことはない。やりたいことやってることは分かるし、「こんな奴いたら笑えるよね? 」みたいなシーンだってある。笑えたシーンだって、ないわけじゃないのだ。

しかし、もう1度観たい! という欲求は生まれない。

これは、私のほうが製作スタッフよりもゾンビ愛に溢れているということなのかもしれない。

当然だがゾンビを堪能したくて、ゾンビ映画を観る。そこが満たされなければ、もう1度観たい作品にはならないだ。

第17回 映画部記録(2022/5/20実施)

『ランドシャーク / 丘ジョーズの逆襲』(2017年・アメリカ)

公式サイトhttps://landshark.crayonsite.com/p/2/

監督:マーク・ポロニア
脚本:マーク・ポロニア
キャスト:サラ・フレンチ
     ピーター・バルド
     キャサリン・スー・ヤング
     エリック・スプディック
     アンマリエ・リン・グレイシー

予告

参加者
T.H、K.Y、K.S、小林、加藤

T.H

サメのチープ度:★★★★★
ロマンス度:★★☆☆☆
おすすめ度:★☆☆☆☆

「サメ映画は裏切らない」

サメなのに陸。この時点でもうハラハラドキドキワクワクですよね。

サメがどうやって陸を動くというのか。人工的に足が生えた? あるいは空を飛べる? どんな展開が待っているのか、胸が勝手に膨らみます。

ネタバレになってしまうので、多くは語れませんが、この映画のサメはとある大きなプロジェクトのために人間によって飼われています。少なくとも野生のサメではありません。

そして、とある能力を持っている凶暴な種です。血しぶきも結構派手に上がるので、スプラッターが苦手な人にはちょっとつらいかも……覚悟して見てくださいね。

サメ映画特有(?)のお色気シーンももちろんあります。サメといえばビーチ、ビーチといえばムチムチの水着美女! ヒャッホーイ!

……って、いまのご時世、こんなことを言っちゃセクハラで訴えられちゃいますよね。でもやっぱり、伝統的に美女とサメは仲良しだから仕方なし。

ジョーズ」で培われたサメという種族への根源的な恐怖とスプラッター表現、後半にかけてのたたみかけるような驚く展開と、息つく暇もありませんでした。

そんな本作ですが、ひとつだけ残念だったのはロマンス描写が少ないこと。

登場人物の中で、元恋人の女性所長(メガネ)と、男性の研究員(ヒゲ)、そしてその部下の女性研究員(メガネ)が出てくるのですが、きっとこのヒゲは元カノメガネに未練たらたらで、でも部下メガネも絡んで……と思っていました。危険を救ってくれてありがとうぶちゅーみたいな。

ところが、クールビューティーな元カノメガネも、メガネを外したらそうでもない部下メガネも、全然ヒゲとの絡みはなし。やっぱ恋愛要素は必須ですよねぇ。まあ、未来的な武器も登場するので、その演出やCGに予算が取られてしまったことも理解はできるのですが。

というわけで、サメと陸というミスマッチから想像した以上の素晴らしいキャストと完成度の低さを誇る映画でした。

なので、まだ見ていない人は永遠に見る必要はありません。今すぐこのタイトルとともに忘れることこそが、唯一の幸せへの近道です。

K.Y

感想を川柳にまとめました。

  • サメ映画 質の低さは 保証済み
  • 撮影が 楽な設定 陸ザメは
  • 伏線が バレバレすぎて 伏せてない
  • サラサラな 血が流れてる 死体役

以上です。

K.S

海辺を歩く水着女性(セクシー要素)、人が死ぬシーンは血糊だけで表現し経費削減、サメが迫ってくるシーンはサメのヒレだけを映すことで表現する。以上、B級サメ映画の基本は抑えている。

しかし、映像がチープすぎる。ウィジャシャークのようなとんでも要素もなく、笑えるシーンがあるわけでもない。

サメ映画の最低辺を見た気がします☆

小林

ランドシャークを勧める度:★☆☆☆☆
シン・ウルトラマンを勧めない度:★★★★★

ハラハラドキドキさせる映画の種

ランドシャークはドキドキする映画だ。最後まで私はハラハラしながら見た。クオリティは酷い。いやわざと酷く作っているんだろう。

陸に上がってくるサメはぬいぐるみだ。何回も言うが着ぐるみではない。ぬいぐるみである(笑)

どう見てもオモチャにしか見えないレーザー銃を手に持って、2010年代とは思えない効果音とともに主人公達は陸に上がってくるサメに立ち向かうのだ! 笑いも絶えないが、ハラハラして楽しめる。素晴らしい時間だった。

何でハラハラしたのか?

それは観客だけが知っている秘密を握っているからだ。そして秘密を知らないことで主人公はピンチに陥ることが想像できるからである。映画を見ながら、観客は目の前には見えていないものを同時に見ている。

ここで改めて映画の発端を説明すると、生物兵器として改造された陸に上がるサメ3匹が研究施設から脱走。人を食い殺しまくる。

研究施設の職員の男女は逃げたサメを駆除するため、レーザー銃とサメセンサーを携え、追いかける。

2人のバディムービーとしてストーリーは進むが、実は男の研究者には秘密があった。

実は密かに改造されたサメのDNAを注射しており、自らを被験者としてサメ人間になっていたのだ(大爆笑)

大爆笑と言えば大爆笑なのだが、実は1番危険なヤツが主人公の1番側にいるのはスリリングだ。サメを倒す度に鳴り止まないサメセンサーの音で観客はドキドキする。男の様子も後半ドンドンおかしくなっていく。主人公の女性に危害を加えるのは容易に想像ができる。

我々は主人公の女性に言いたい。

「1番ヤバいのはあの男です」と……「サメ人間だ!」と!(大爆笑)

そして想像通りだが、映画のラストはサメ人間に変身した男に襲われる。

危ない!言わんこっちゃない。

いや言ってはいない。想像していただけだ。笑 しかしラスボスなのに、このサメ人間がめちゃくちゃ弱いので、この映画はギャグで終わる。

だが私にはここまでハラハラドキドキさせてくれただけで映画としては一本の筋が通っていたと思う。

同じようなアイデアをA級のスタッフと天才グローネンバーグ監督が奇妙なラブストーリーにしたのが「ザ・フライ」なので、ランドシャークもしっかり作ればA級だったろう。

恋人がハエ男になってしまうのはとても怖いし、悲しい。

ザ・フライ
https://filmarks.com/movies/22918

ところで大ヒット中の「シン・ウルトラマン」なる映画を見たが、私にはランドシャークよりも遥かにつまらなかった。

何故だろう。

やっぱりハラハラドキドキがストーリーに全くないからなのだ。

基本的にはTVシリーズウルトラマンに忠実なストーリーをオムニバスの総集編の如く詰め込んでいる。

私がもちろんウルトラマンTVシリーズを事前に見たことがあると言う前提はあるけれど、新しく映画を作る意義として、ここまで同じものを作る必要があるのだろうか?

またTVシリーズから抜粋した4話程度の話を詰め込んでいるが、それを貫き通すテーマや課題がなくバラバラ感が拭えない。

主人公は元々非人間的なキャラであり、ウルトラマンであってもなくても奇人なので、正体がバレるようなハラハラもない。

新しいアイデアや展開も無ければ、観客だけが知っている秘密もないので、全く盛り上がらない2時間だった。映画を2時間見なければ解決しない映画の中の課題が全くないのだ(分からなかっただけかもしれないけど)。

それはランドシャークで言うなら、逃げた3匹のサメを殺す。そしてサメ人間を殺す! ということなんだけど。

シン・ゴジラには、それがあった。

人類の叡智を結集して、最後の最後まで最強・最悪の怪獣に戦いを挑む人間たちという分かりやすいストーリーにハラハラした。

ランドシャークにもあった。しかしシン・ウルトラマンにはなかった。

何で無かったのかはよく分からない。

諸事情なのか。庵野秀明が元々ウルトラマンに興味ないのか。監督が樋口だからなのか。

でも大ヒットしているから良いのか?笑

ランドシャークを見て、学ぶべきところは沢山ある。映画を見て観客をハラハラ・ドキドキさせるという根幹を私は改めて見つめ直すことができた。

皆さんには★1つでランドシャークをお勧めしたい。

加藤

期待して後悔度:★★★★★
もう一度みたい度:☆☆☆☆☆

つまらないだろう、と思って観たものの、期待以上につまらなくて悲しくなりました。ツッコもうと思えばできるけど、それをしても「そうなんだよねー……」とテンションが下がるので始末に負えません。

そう考えると、ウィジャ・シャークってかなりのエンタメでした。ラスト10分は未だに思い出すと観たくなるし、そう考えると「アベンジャーズ エンドゲーム」的な要素もある気がします。

以下、感想です。

  • 水槽にすっぽりとはめ込まれた殺人サメ
  • 水槽にはまったサメの映像が酷すぎてツッコミ不可避
  • 笑えないのに、登場人物はみんな笑ってるジョーク
  • 怪人サメ人間
  • 王道ラブシーンは始まらない

次はスノーシャークか、ゾンビシャーク、ダブルヘッド・ジョーズあたりを観ましょう! きっと本作より面白い……はず!


※2022/5公開。2022/7/18再編集。動画・画像はお借りしています。

第16回 映画部記録(2022/4/21実施)

『ハッチング―孵化―』(2022年・フィンランド/スウェーデン

公式サイトhttps://gaga.ne.jp/hatching/

監督:ハンナ・ベルイホルム
脚本:Ilja Rautsi
キャスト:シーリ・ソラリンナ
     ソフィア・ヘイッキラ
     ヤニ・ヴォラネン
     レイノ・ノルディン
     Oiva Ollila

予告

参加者
T.H、K.Y、F.M、加藤

T.H

ホラー度:★★★★★
化け物よりも人間の方が怖い度:★★★★★
男子の無能度:★★★★★★★★★★★

ネタバレにならないストーリーだけを説明すると

  • 幸せそうな四人家族の物語
  • 娘が拾ったなんかのタマゴがでかくなって育つ
  • なんか生まれて、なんかやらかす

まあ、そんな感じです。

この映画部で見ている映画のほとんどは、予算の少なそうなB級ですが、その中でも本作はまともな映画としての体裁が保てているように感じました。

「生まれたなんか」も、まあ変ではあるけど、そんなにCGとしても悪くないと思うし、怖さの表現とかカメラワークもちゃんとした映画って感じがします。

ただ、「グレムリン」とか「ET」みたいなクリーチャーものかというとそうではない。ホラー要素の基本は、人が心に抱えている欲望を具現化するとどうなるか、ということなのかな。

家族にも見せない心の奥底を代弁するタマゴ

映画ならではの設定ですが、主人公の女の子が育てるタマゴと生まれた何かは、家族になかなか見つかりません。普通ならすぐ見つかるだろうけど、巧みにバレない。

それは、単に「生まれた何か」が俊敏で隠れるのがうまいとかいうわけではないんです。映画の設定として徹底的に隠されているということだと思う。なぜか。

その「生まれた何か」は、女の子が心の奥に秘めた、家族にも言えない思いを象徴している気がするんです。

人は、本音は言わないけど心ではいろいろ思っていることがあります。でも、見え隠れはしても決定的なことは言ったりしません。うまく心の中でバランスを取りながら、家族とも友人とも社会とも関係を築いていく。

でも、この作品はホラー映画。その狂気の部分が表出するのは、身勝手な母親と、それを止められない無能な父親と、ただわめくだけの幼稚な弟の姿が極まって、「ダメな家族だな」と観客も納得してしまった最後のシーンあたりでした。

女の子は、「タマゴから生まれた何か」に対して、そんなことしちゃダメ、悪いこと、と思ってはいますが、その悪いことをする「タマゴから生まれた何か」に決定的な罰を与えるわけでもありません。それは、自分のつらい思いを代弁してくれる存在だから。

そう思う理由は、最後のシーンでわかります……。

何が怖いってやっぱり人間やな

登場人物としてはこの4人家族とそこに少しだけ関わる人たちだけなんですが、結局はこの4人家族、中でも母と娘の関係に戻ってきます。

同性だからこそ生じる母と子、女と女の関係性の怖さ。それが口答えできない年齢の娘というところがまた、狂気の度合いを増しています。

ただし、この母親は決して娘には手を上げません。むしろ最後は守る側に回っている。母としての最低限の責務だけは放棄していなかったところは、まあ認めてやってもいいでしょう。

そのおかげで苦しんだ部分もあるでしょうけど……

いわばポケモンみたいなもの?

単純に化物が出てきて人を食い散らかすだけならなんの問題もないのですが、こういう人間の内面を見せつける系の映画は結構きついです。

ただ、「ミザリー」とか「シャイニング」みたいに、個人の内面がさらされるのとは違って、人の負の感情をクリーチャー化して、そいつに戦わせたり暴れさせる。言ってみれば、ポケモンみたいなものですよね。

そのおかげで、主人公の女の子自身はか弱い存在として描かれていて、それほどショックは受けません。最後の最後までは、ね。

ともあれ、感情を象徴する存在を切り分けることで、主人公のか弱さと怒りと狂気の部分を両方見せることには成功している気がします。

だから、最後まで女の子の美しさはそのままだった。それだけが唯一の救いと言われれば救いかな。

まあ、後味のいい映画ではないし、あまり深く振り返らなければ「なんだこの映画」と思われても仕方ないかもしれません。

もっかいみたいかと言われればあまり見たくない。いい意味でホラーの怖さをしっかり自分に伝えてくれた映画だったのかなと思います。

K.Y

ホラー度:★★★☆☆
いい感じによく分からない度:★★★★☆
おすすめ度:★★★★★

孵化した化物と自己愛強めの母親が主人公を追い詰める

主人公が拾った卵から孵化した鳥の化物が暴れ回るホラーと思ったのですが、鳥の化物は主人公を母親と思って懐いており、最初は可愛かったです。

母と思う主人公のために、吠える犬を殺し、邪魔な同級生を襲い、どんどん主人公の手に追えなくなっていきます。

母親も、最初はちょっとだけヤバい人なのかな?と思っていましたが、自己愛が強く、主人公に完璧な娘でいることを望み、不倫もしている。
ホラー映画によくある、何考えているかよく分からないサイコパスとは言い切れない、どこか、身近に居そうな、既視感のある怖さを感じました。

そんな2人に精神的に追い詰められていく主人公。
この主人公がどうなるのか、徐々に姿を変えていく鳥の化物がどうなっていくのか、ワクワクしながら見れました。

映像はB級かもと思っていたのですが、綺麗で、無駄に恐怖を煽ることもありませんでした。
ホラー映画としては、驚かせる演出が少なく、見やすかったです。
その分、母親から溢れ出す身近な恐怖が際立った気がします。

いい感じに謎が残り、最後も「このあと、どうなるんだろう」と思える内容になっており、個人的にはこのようなちょっとよく分からない余韻がある映画は大好きです。

加藤

ホラー演出:★★★★★
北欧映画らしさ:★★★★☆
もう一度みたい度:★★★★☆

久しぶりに「ホラー観たなぁ~」と思えるくらいに、どっぷりホラー演出満載。最近観たなかで、ホラーとして楽しめたのはエドガー・ライトの「ラストナイト・イン・ソーホー」くらいだが、それとはまた違った趣でよい。

「ラストナイト~」はかなりの没入型ホラーだったが、個人的には本作はかなり考察がはかどる作品だと思った。一つひとつのカットはもちろん、色ですら意味を持つ(はず)。

思春期にさしかかった少女が気づいているような、気づかないような……絶妙なラインで現実から目を背けて苦しむ。メタファー盛りだくさんで、ちょうどこういう映画を欲していた私はかなり満足だった。

北欧らしさがふんだんに盛り込まれたボディホラー。個人的には、かなり良作だと思う。

SNSに生息する「完璧な家族」

誰かがブログなどで完璧な生活を発信しているのを見ると、色彩なども完璧にマッチしすぎていて、私は逆に笑ってしまうんです。

子どものために尽くす母、穏やかな父、無邪気な弟。そんな家族の一員である、美しい少女ティンヤ。彼女が本作の主人公だ。

ティンヤの母親は、完璧な家族の姿をSNSで発信し続けている。どこに行くにも、なにをするにも、インテリアですらきっとSNSのために整えられたもので、彼女は、SNSに生息する“キラキラママ”のイメージそのままだ。

そんな母親の興味の対象は自分だけ。子どもたちを愛していると自負しているようだが、彼女の中心にあるのは“自分”だけ。それ以外の存在は、自分の幸せ成立させるための道具にすぎないのである。

だから、自分の理想を崩す存在は許せない。それが、血をわけた娘であっても。主人公であるティンヤは、彼女のエゴに振り回されている被害者なのだ。

愛されるための努力

主人公であるティンヤは、ティーンエイジャーであり、ちょうど思春期に差し掛かるくらいの年齢だ。彼女は予告で膨らませていたイメージ以上に美しく、健気で、はかなかった。あの年ごろだからこそのシルエットも美しく、新体操に取り組んでいる姿には惚れ惚れする。

ティンヤは劇中、どれだけ傷ついても母親に愛されるために努力する。母親のために行動し、すべての気持ちを抑えて、無理やりに笑顔を作る。

そんなティンヤの心の拠り所になるのが、ある日森で見つけた奇妙な卵である。家族に隠しながら、その卵を自分のベッドで育て、孵化させる。ティンヤは、この卵にすべての愛情を注いでいく。そして、愛情を受けた卵は、ティンヤのすべての気持ちを受け入れて、成長し、孵化する。

ティンヤの気持ちの全てを汲んでくれる、卵から生まれた“それ”を、ティンヤはとにかく受けれいて愛していく。異常さなどは大きな問題じゃなく、成長していく“それ”を慈しみ、餌を与えて、見守っていく。それは、きっと自分が母親にしてもらいたいことだ。

日常にひそむホラー

ホラー映画といえば、薄暗く陰気なイメージを持つ人が多いだろう。往年の名作ホラーはまさしくそんなイメージ通りの映画が多い。近年では「ミッドサマー」といった、明るくすべてが見えることが“売り”な映画も出てきているが、非日常を描いているものである。

しかし、本作で描いているのは“日常”に潜むホラーだ。

常に愛されるにはいまの自分では足りなくて、もっと頑張らなければならないと思わされることもホラーだし、受け入れられるためには自分の全てを見せられず、ある側面を隠すのも恐ろしいことだと思います。

すべてを完璧にコントロールしようとする母親と、それに答えようとする娘。本作の主題には、「母と娘の関係のいびつさ」がある。

そんな2人をとりまく不気味さは、ファンシーでフェミニンな世界観が巧く作り出している。多くの人が想像する“北欧らしさ”がふんだんで、目に楽しく漂う空虚さに不安が煽られる。

小道具の使い方にもこだわられており、特に私が刺さったのは「鏡」の使い方だ。一度観ただけなので確認作業が必要だが、ティンヤと母親の関係性をうまく表現していたと思う。

随所にちりばめらた王道のホラー演出に、余白のあるラスト。ラストシーンの解釈は、観客それぞれの経験が大きく反映される気もする。

“少女”の今を切り取った本作、観ておいて損はないだろう。

※2022/5公開。2022/7/18再編集。動画・画像はお借りしています。

第15回 映画部記録(2022/2/18実施)

『ウィジャ・シャーク /霊界サメ大戦』(2020年・アメリカ)

公式サイトhttps://landshark.crayonsite.com/p/10/

監督:スコット・パトリック(ブレット・ケリー)
脚本:デヴィッド・A・ロイド(ジュラシック・シャーク)
   ジョン・ミリオーレ
キャスト:ジル・・・ステフ・グッドウィン
     キム・・・ロビン・ホッジ
     ジェン・・・ゾーイ・タウン
     ティファニー・・・エイミー・オズボーン
     ドナ・・・クリスティーナ・ローマン
     ジルのパパ・・・ジョン・ミリオーレ(ロスト・ジョーズ
     警官・・・ピーター・ウィテカー(ジュラシック・シャーク)

予告:

参加者
T.H、小林、K.Y、K.S、O.K、加藤

T.H

息ができないくらい笑いました。

一緒に見る人を選ぶ度:★★★★★
見事に期待を裏切ってくれる度:★★★★★
(いい意味で)おすすめ度:★★★★★

間違いなく人生で一番笑った映画です。息ができなくなるくらい、ここ数年で一番笑いました。娘が初めて立ったときよりも、小学校に入学した時よりも笑顔でした。

ただし、見ている間ではなく、見終わってみんなで話をしようと思った瞬間に、作品の魅力が溢れてきて、思わず笑顔になってしまった(あほらしすぎて笑うしかなかった)という感じです。

この映画をまともな映画として構えてみると、多分肩透かしをくらいます。

例えて言えば、「普段は悲壮感しかない奴が、文化祭で突然コントをやると言い出したんだけど、あまりに真面目にコントに取り組み過ぎて、しかも壇上でマジでこけたりして『なにがおかしい〜〜〜〜!』とかキレたその姿が一番ウケた」って感じの映画です。

ホラーとかスプラッターって、一歩間違えるとユーモアになっちゃうんですよね。そこがいい。

見どころ1:あられもない女子たちの姿

序盤はひたすらビキニの女子が露出してくれます。スーパーモデルみたいな俳優じゃなく、庶民的な人ばかりです(かなりオブラートに包んでいます)。

そんだけ女子が出てきたら、普通なら非日常感とか、ロマンスを予感させるものなんでしょうけど、残念ながら隣で車を洗ってるメンズ(腹は出ている)に魅かれて物語から外れたメガネ女子以外は、まったく男子との絡みがありません。ある意味では、本当にどこにでもいる普通のマリファナ漬けの女子たちの休日って感じ。

その彼女たちのひとり(元々の連れじゃない)がなぜかウイジャ盤を拾い、遊ぶことからいろいろなことが始まります。

だいたい、冒頭のところがストーリー的におかしいんですよね。誰かと待ち合わせしている様子で森に入っていって、湖らしきところでおもむろに脱ぎ出して泳ぎ始め、でも泳ぐという感じでもなく出てきてウイジャ盤に出会う。

なんか、コミュ障が休みをもてあましてフラフラ出歩いて、何をするでもなく帰ってきたって感じに近いです(ソースは俺)。

この辺からもう「この映画、なにかがおかしい……」と思わされ始めます。

見どころ2:多彩なアングルから魅せるサメ

サメ映画といえば、尾ビレを水面から出して向かってきたり、口を大きく開けて襲いかかってくる姿のイメージがあります。

しかし本作では画期的なアングルに挑戦しています。

サードパーソンサメイング

キャラクターが画面内にいるシューティングゲームを「サードパーソンシューティング」と言いますが、本作もそれに則った演出がされています。カメラの脇から強靭なアゴが見え隠れし、人間を追いかけ回す姿はまさに昨今のeスポーツブームを受けた演出。

このままゲーム化されてももうちょっとマシなグラフィックになるでしょうけど。

アンダー・ザ・サメ

海の中であれば、サメのお腹側を見ることなんてほぼできません。だってその時点で食われちゃうし。

ところが本作では、サメが主人公たちの上を泳ぐ姿が見られます。「こんな尖ったかたちしてるんだぁ」なんて思っても、なぜかサメは襲ってきません。

猫を透明な板に座らせて、禁断のお腹の下を覗く写真が一時期流行りましたが、まさかサメでそれが実現できるなんて。

https://karapaia.com/archives/52260266.html

この演出は、サメと人間との邂逅が、水面付近でしか行われないという社会通念を見事にひっくり返してくれました。サメは飛ぶからです。理屈なんてくそくらえだ。

サウンドエフェクト・オブ・サメ

もうひとつは、サメが発するあらゆるSEの秀逸さです。

そもそも水中のサメが声を発することはありませんし、泳ぐ音も噛む音もありません。

つまり、映画の中で出てくるSEはすべて、想像上のものでしかないのです。

しかしそれが見事にマッチしています。

人を噛み殺す時の「カプ」っという気持ちいい切断音。人を追いかけ回す時の車や飛行機のような移動音。そして、地獄の底から響いてくるまるでトラかライオンみたいな咆哮。

どれをとっても想像上の生物=サメというゆるぎのない定義がなされていて、視聴者はその想像力に身を委ねるしかありません。

これらの相乗効果により、所構わず人を襲い、食らおうとするサメの真骨頂ともいえます。

裏の裏をさらに裏に回った撮影技

作者は見事に視聴者を裏切ってくれます。

それが「演出」です。

素人が運動会を撮った時のような三脚による固定カメラと、固定でいいだろうにわざわざ手持ちで撮った微妙なブレ映像を混ぜたり、多分撮影したカメラの機種が違うんだろうなという逆光(光がボヤーっと広がってシラっちゃける現象)の耐性のなさがシーンごとにガラッと変わったり、ホワイトバランス(場面による白の色の温かさ、冷たさの違い)のズレ、白飛びなどの映像が、見事なくらいにごちゃごちゃに組み込まれてきます。

特に屋外でその傾向が強い理由は、多分安っぽいカメラをつかっているせい。主にレンズ性能が足りてないんだと思います。パープルフリンジも出てたし。

もちろん、これらのことはすべて「演出」です。素人っぽく見せることで恐怖心などを煽ったりしているわけです。決して低予算だから仕方なく、ということではなかったはず。

その証拠に、後半になるとこれでもかというくらいにCGを多用してきます。サメが登場するシーンは当然として、霊能力を用いた演出やサメの口からでる攻撃などにも使われているのですが、それがまるで8mmフィルム時代の二重露光(1枚のフィルムに2つのシーンを物理的に撮影することで、幽霊などが現れたような演出をする技法のこと)のようなクラシックな雰囲気を醸しています。

すでに「ゴーストバスターズ」でももっとしっかりしたCGを使っていましたが、監督の狙いはまさにそこにあったのでしょう。

どうしようもないほどのレトロ感を盛り込むことで、文明に疎いかよわき人間の姿を描こうとしたのだと思います。昼間っから飲んでるポリスも、マリファナ漬けの女子たちも、シャマランっぽいインド系の霊能者も、そんなところまであえて稚拙な映像表現によって伝えようとするなんて、監督は相当なキレ者なんでしょうね。

作品の根底にある「人間の潜在的な攻撃性としてのサメの存在」

人は突然攻撃性を表すことがあります。普段は物静かだけど、コントローラーを持つといきなり声を荒げる女子とか、ステアリングを握ると周りの車のグチばかり言い始めるご婦人、大勢の前であえて大声を上げて叱ることで「怒られているのはこの人ですが、あなたたちも一歩間違えれば同じなんですよ」と伝えようとする経営者とか。

http://blog.livedoor.jp/itsoku/archives/56245426.html

そう、これらはまるで、突然そこにサメの幽霊が現れて、なんの脈絡も説明もなしに誰かをカプカプ噛みまくるかのような、根源的で衝動的な攻撃性を示しているのだと思います。その時の気分だけ、理屈とかどうでもいい、周りに誰がいても気にしない、ただ襲いまくるのみ、という超攻撃的な性格を表しているのだと思います。

最後はとんでもない黒幕の存在がわかり、観客は「どっひゃー」と思わされます。最後は巨大な権力の陰謀だったのかーという、なんの伏線もないどっちらけの終わり方がむしろ清々しい。

難しいなぁと思ったのは、これを誰と一緒に見るのがいいかってこと。家族は無理だし、恋人と見ると喧嘩になるかもしれない。親友とみても「なんでこんなの勧めるの?」と激怒されかねません。

その意味では、会社の同僚とみるって言うのは、実は一番ベストな映画なのかなと思ったりもしました。

とりあえず、駄文を書き散らしたことでもうこの映画のことは忘れて日常生活に戻れそうです。執筆の機会をいただきありがとうございました。

小林

何が起こるか分からない度:★★★★★

すごい!もはや何が起こるか予想がつかない。

とりあえずウィジャ盤?と呼ばれるこっくりさんみたいなやつで女の子たちが、サメの亡霊?を蘇らせてしまったことはわかった。

サメの亡霊が人を食い殺すのもギリギリわかった(このギリギリ感は見ないと分からない。笑)。

死んだお父さんは娘のために亡霊ザメと戦うことも分かった。

だが一番分からないのは、そのカメラワークだ。意図がない。いや我々を挑戦するようなショットだ。

いや何も考えてないのか?
それともこれは????

やたらと長いロングショット、じわじわと何かが来るのかと思いきや何も起きない(笑)私のような映画マニアにとってはいろんなことを予想しすぎて、その度に裏切られる。

会話もそうだ。何か恋愛的なものが始まるかと思いきや何も起こらない。

カーウォッシュでエロいことが始まるのかと思いきや、ただシャワーを掛け合うだけで、もう~期待外れである(笑)

もはや我々の想像力と戦っているとしか思えない作品である!

こんなに前衛的な作品を作る余裕があるハリウッド? って、まだまだ懐が広くて羨ましくなる。

ぜひコロナに負けずにウィジャシャーク2を作って欲しい!

K.Y

オススメ度:★★★★★
チープ度:★★★★★

映画の価値観を変える作品、映画好きなら1度は観るべき

今や1ジャンルを形成しているサメ映画の1作。
映画好きなら、騙されて1度観て欲しい(無料の時に)。

  • 無駄に長いオープニング
  • 主役を含め、全員に漂うエキストラ感
  • 字幕でも棒読みなんだとわかる演技
  • 全力感がまるでなく、ランニングだろと思える逃走シーン
  • 細い木の影に隠れて、隠れている感がない隠れるシーン
  • 「今時、逆に難しいのでは?」と思うチープ過ぎるサメ
  • チープ過ぎて、出るだけで笑えるサメ
  • 見終わってから分かる、無駄・意味不明なシーンの多さ

こんなに低レベルの映画が存在したことに驚きです。

今まで、つまらない映画を何本か見てきて、
「監督何やってるんだ。」
「この演出ないわぁ〜。」
と思っていたのですが、この映画を見ると、まともな作品だったんだと思えました。
なんか、映画の縦幅が一気に拡がった気がします。

次に観る映画に寛大になれ、楽しむことができるでしょう!

K.S

サメ度:★☆☆☆☆
ホラー度:★☆☆☆☆
B級映画度:★★★★★
オススメ度:★★★★☆

サメ映画には絶対的な安全地帯がある。それは、海から離れた場所である。
サメは海にいるので、海から離れればサメに襲われることはない。当然である。

そんなサメ映画の常識を覆し、全世界を恐怖に陥れたのが本作「ウィジャシャーク」である。
本作ではサメの幽霊が登場し、山・湖・階段の踊り場・家の中でガブガブ人間を食べていく。

もはや海から離れても安全ではない。サメの幽霊はどこにでも現れる。
なんなら作中に海など登場しない。

どこにいてもサメに襲われるという恐怖から逃れられないのだ……。

という感じで、設定的にはとても怖いが映像のチープさ、チープな効果音、役者のやる気のなさ、などなどのおかげで全く怖くないです。

ホラー映画が苦手な方でも楽しめる映画です☆
約1時間無駄にしたい方には特にオススメできます!

作中でショットガンを撃つシーンがあるのですが、排莢がなかったことが気に食わないので、星一つさげて星4です。

O.K

おすすめ度:★★☆☆☆

人生もこれくらいでいいのかもしれないと勇気をもらえる作品

なぜこの映画がアマプラで配信できているのか、本当に不思議な気持ちになる作品でした。

妙に長いオープニング、中途半端に挟まれるお色気シーン、回収されることのない意味深なひとことや人間関係のもつれ……。何よりサメ映画の要であろうサメ襲撃シーンまでがめちゃくちゃ長い……。いくら低予算とはいえ、カメラワークも音響も、もうちょっとどうにかなっただろと思わずにはいられません!

“低予算風”をあえて作っているのではないか……?いや、“風”を装うなんて、実は高度なテクニックなのではないだろうか……なんて思えてきてしまうほど。

予算ないだけどあるもので工夫して頑張ったね!的な映画ではなく、お金ないからお金ないまま作りました!どうだ!って感じです。

クライマックスに向けてカオス度はさらに上昇!
私の頭の処理能力はすでに限界。

最後にはそれまでを超える衝撃のオチが待っており、思考は完全に停止。映画を見て考えることを放棄したのは初めてでした。

鑑賞後、映画部のみんなが笑って楽しそうだったのが印象に残っています。70分を無駄にした自分を慰めるために笑うしかないんですよね、わかります。

ウィジャシャーク。記念すべき私の初サメ映画となりました。

誰にでもおすすめできるわけではないですが、ウィジャシャークもあんな感じだったしな~と肩の力を抜いて生きていけるような、勇気をくれる作品です。

人生、きっとこんな感じでいいんですね。すべてに疲れた方は見てみては?

加藤

人生観を変えてくれる度:★★★★☆
誰かを巻き込みたい度:★★★★★
オススメ度:★★★★★

申し上げます。申し上げます。私は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。クセになってしまうことを知ったうえで、5人の人間に『ウィジャ・シャーク』を布教してしまいました。ずたずたに切りさいなんで、殺されても仕方がありません。

観れば観るほど病みつきになる、なにがなんだか分からないホラーSF超大作! 「ウィジャ・シャーク/霊界サメ大戦」は、日本で一体どれほどの人間が観たのでしょうか。

ウィジャ・シャークの魅力といったら麻薬のようなもので、とにかく誰かに勧めたくなるのです。観た人から観ていない人へ……もはやねずみ講のように、大きく広げたくなる映画なのです。

常人には難解

常人には追い付かない発想が楽しめるのが、ウィジャ・シャークの良いところです。

「サメ=海の生き物」……そんな固定観念に侵されていませんか?

以前、湖にサメが出てくるパニック映画を観たことがあります。海に竜巻が起こったせいで、空からサメが降ってくる映画もあります。

この2つの例ですら、意味が分からないと思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、これらの意味不明さを超えてくるのがウィジャ・シャーク。

ウィジャ・シャークに登場するのは、ウィジャ盤に呼び出された「サメの霊」です。大変凶暴で、制御するのが難しいとされています。

湖の浅瀬で、必要のない肌見せシーンのついでに拾われたウィジャ盤を使って、ヒロインである【GOAT GIRL】がサメの霊を呼び出したことが、この映画の悲劇の始まり。

湖にウィジャ盤なんか落ちてねーだろ、とか、出てくるウィジャ盤めちゃくちゃ100均クオリティじゃん、とか、そんなツッコミはウィジャ・シャークを前にしたら最弱。マップ1のボスにすらなりえません。

映画製作の大変さが実感できるのはウィジャ・シャークだけ!

映画の広告で、「〇〇円を投じた超大作」といった文言をよく見かけますよね。低予算映画にも良作がたくさんありますので、金を使えばいい映画ができるわけではないことは断言できますが、私が今まで低予算だと思っていた映画には“金が使われている”ということが、この映画を観て本当によく分かりました。

すべてのCGが安っぽいし、サメに食われたと言っているのに血糊が使われたシーンは2つだけ。最終的にはイラストで描かれた血しぶきが、画面端から飛び出してきます。最初の方に予算を使ったせいで、金が足りなくなったんだろうなぁということが想像に難くありません。

予算の話をはじめると止まりませんが、特に見どころなのは食事シーン。全員が皿を舐めたのかな? というレベルにピカピカの皿を見ることができます。

また、パパが使っているタロットカードもぜひ注目していただきたいです。どっかから素材を拾ってきてコピーしただけの代物なのか、裏が真っ白……! おいスタッフ、タロットカード見たことないのか。

でも、この狙って出しているわけではない(はずの)低予算感がかなりクセになるのです。

超大作を観た後には、どこに金がかかっていたのかという話をよくします。やれCGが神がかっていたとか、衣装のシルエットが美しかったとか、どこでロケしたらしいとか……。

しかし、ウィジャ・シャークは違います。

「どこに金が掛かってなかったのか」
「逆にどこに金が掛けられていたのか」

我先にと、みんながこぞって話したくなってしまう。

もしも話してみたい人がいるなら、ウィジャ・シャークを一緒に観ることを強くオススメします。この映画を観て、会話がつきることはないと断言できるからです。

ミスティックシールド、愛の力、オカルトの家系、ホワイトハウス、続編制作決定済み……。

ほら、なんだか気になってきましたよね? それなら、今すぐにウィジャ・シャークを再生したほうがいいです。

ウィジャ・シャークだけが持つ、Z級映画の波動を少しでも多くの人に感じてほしい!

「今回の映画、つまらなかったな」

そう思ったら、ぜひウィジャ・シャークを再生してください。この映画を下回ることはそうそうないはずです。

これからの人生を大きく支えてくれる、それがウィジャ・シャークという映画なのです。

 

※2022/2公開。2022/7/18再編集。画像はお借りしています。

第14回 映画部記録(2021/11/11実施)

『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』(2021年・日本)

公式サイトhttps://sumikkogurashi-movie.com/

監督大森貴弘
脚本:吉田玲子
ナレーション:井ノ原快彦
      本上まなみ

予告


参加者
T.H、小林、K.Y、O.K、加藤

T.H

すみっコたちのかわいさ:★★★★★
報われないエピソード度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★☆☆

報われない結末に憤る人が続出した、見た目とストーリーの乖離っぷりが話題となった映画「すみっコぐらし」の続編です。

といっても、メインキャラが一緒なだけでストーリーはまったく別の日の話。

ものすごく深読みをしていけば、それぞれのキャラが持つ悩みに共感できる部分も出てきます。ただ、作者はおそらくそんな大人の深読みを期待しているわけじゃなく、キャラを作る際に、身近にいるそういう「すみっこに行ってしまいそうな人たちの特徴」を拾ってヒントにしたんだろうとも思うんです。

この部分をどっちにとらえるかで、「すみっコぐらし」の映画は見る人によってまったく逆の感想をもたらします。

「相手のためを思って」やったことの末路

そして、今回の主人公は、魔法がうまく使えない魔法使いの「ふぁいぶ」。すみっコたちのところにやってきて、すみっコたちの悩みを解決したくて使った魔法が、いろいろな問題をさらに引き起こします。

「相手のためを思って」やったことがプラスにならない例は2通りあります。

ひとつは、相手にとって直接的にマイナスになってしまうこと。「余計なお世話」ってやつで、これはやった側の失敗です。

もうひとつは、本当は相手にとってもプラスになることなんだけど、相手が直視したくなかったり、認めたくなかったりして結果的にマイナスになってしまうこと。善意が悪意に感じられてしまうようなケースですね。

そしてやっかいなのは、この「魔法」はその人自身を変えてしまうということです。その場だけで済むことじゃなく、永続的にその人の行動を変容してしまうので、なんとか解決しないといけません。

キャラに与えられた境遇を「不幸」と思うと見られない映画

「すみっコぐらし」は、ひとりひとりのバックストーリーはほぼひとことで終わるものですが、実はその裏にある「秘密」が作品ごとに少しずつ描かれていきます。

ただ、それが多分子どもにはとてもわかりにくいかたちでしか表現されません。大人ならわかるいろんな心の機微は、小学生くらいの子どもたちにはシンプルにしか伝わらないでしょう。

だから、今回のお話は、ドジな魔法使いが使った魔法で、みんながおもしろおかしくかわっちゃった。でもそのことで、ちょっとだけ悲しい境遇の子もいた、くらいなのだと思います。

子どもたちは多分この映画を、まさにカメラマンとおなじ立ち位置で見ていると思います。つまり、感情移入するのは魔法で変えられたすみっコ側ではなく、そんなすみっコたちと一緒にそれを見ている人=カメラマンの立ち位置で物語には登場しない誰か。

なので、すみっコひとりひとりに感情移入することは、多分この映画を見るときには余計なんでしょう。まあ、大人はえてして、子どもの思いに共感したりしてしまうので、仕方ないんですけど……

そういう意味で、この作品を見るときに大人的な目線ですみっコたちを「かわいそう」な子たちとして「おもんぱかってしまう」と、作品の本質が見えなくなってしまう気がします。

いろんな境遇の子たちがいて、ちょっと傷ついてるけど、みんなでなかよくやってるお話。

それくらいの感度まで下げて見てみると、素直に楽しめるような気がします。かくいう自分は、そんなに感情移入せずにふわっと見ることができました。

誰の立場に寄り添うのかで、見ている人の感想が大きく変わる、そんな作品なのかなと思います。

小林

キャラクター癒され度:★★★★★
呪いの恐怖度:★★★★★
考えさせる良い映画度:★★★★★

夢と呪い

仮面ライダー555という番組のキャラが「夢は呪いだ」と言ってた。ミュージシャンになるという叶わない夢に呪われ続けるというシリアスなストーリーだった。

今回のすみっコの映画では、見習い魔法使いがすみっこたちに魔法をかけた。どんな魔法かと言うと、叶わない夢を消す魔法である。叶わない夢は消してあげた方が幸せなはずだ。

そのせいで魔法をかけられた、すみっコたちはキャラが変わってしまう。

魔法をかけられていないすみっコたちは、キャラが変わってしまったすみっコ達を元に戻そうと奮闘する。

夢とキャラの設定が結びついているのは面白い。夢がすみっコたちの生き方やキャラ付けをしているので、夢がなくなってしまうとすみっコ達は別なキャラになってしまう。

この映画の中では叶っていない夢でも、それがすみっコたちらしさなのだから、夢を消してはいけないとなる。

でも現実はそうなのだろうか……。

いつまでも役者の夢やミュージシャンの夢を追い続けて、周りに迷惑をかけている人も呪われてるんじゃないかと思う。

もうその生き方しかできないって、突き抜けられる人もいるけど、自分を変えられないって思いこんで不幸そうにいつまでも役者やミュージシャンをやっている人もいる。

同じ呪いを同じタイミングで受けていると演劇ユニットだったり、同じバンドのメンバーだったりで仲良くなることもある。

でも呪いが少しずつ解けていくと1人また1人と去っていく。呪いが解けても一緒にいられる友達とは違うのだ。

すみっコたちは夢の世界の住人だ。彼らはいつ会いに行っても、同じ姿で同じ性格で同じ夢を同じメンバーで見ている。だから僕たちは癒される。安心だ。

でも現実の僕らは、同じ夢を見ていても、歳もとるし、それぞれ違った病気になり、少しずつ変わりながら生きていく。

現実は厳しい……。

だからこそ、すみっコたちキャラクターはいつまでも変わらない姿で、私たちに夢を与えて欲しい。

K.Y

癒し度:★★★★★
トカゲ度:★★★☆☆
おすすめ度:★★★☆☆

絵本をよんでもらっている感じの癒しがある映画

すみっコたちが平和に暮らしている感じがすごい癒されます。
少し癒され過ぎて、うとうとしそうになるかもしれません。

多少のトラブルは起きていますが、進撃の巨人などに比べると平和!
ただ、刺激は少なめでした。

仕事帰りだと、うとうとなります。

途中、とんかつの端を見て、とんかつ食べたくなったのですが、脂身らしく、申し訳ないですけど、食べる気がしなくなりました。
そのため、星3つです。

加藤

癒され度:★★★★★
応援したくなる度:★★★★☆
夢ってなあに?度:★★★☆☆
古傷えぐられた度:★★★★☆
総評:★★★★☆

待望の『映画 すみっコぐらし』の第2作。

個人的に心に傷を負わされた前作のことはほぼ無かったことになっているのか、平穏なすみっコたちの日常から始まりました。

すみっコスーパーの新装開店大安売りやら、すみっコたちがいつも遊んでいる公園やら、キャンプで行った「すみっ湖」の紹介に、そこに住むすみっしーととかげの関係など、とにかくすみっコたちの毎日が盛りだくさんの前半。
そういえば、こんな世界観だったよなぁ……とぼんやり、ふわふわ。

いろいろおかしなところもありましたが、それもすみっコぐらしの醍醐味。メインすみっコたち以外は、ちいかわみたいに顔なし・モノクロになっていても気にしてはいけません。

誰かの立場に立つ難しさ

今回のゲストキャラクターは、5年に一度の青い満月の夜にすみっコたちの街に遊びに来る魔法使いのきょうだいたち。

5人きょうだいで、名前から上から順に「わん」「つー」「すりー」「ふぉー」「ふぁいぶ」です。上の4人はそれぞれ得意な魔法がありますが、まだ小さな「ふぁいぶ」はまだまだ上手にできないようで……とにかくいろんな失敗をします。

ティーセットを出すつもりがバケツを出しちゃったり、ホールケーキのカットすらうまくできません。

しょんぼりと落ち込むふぁいぶを、わんたちは優しくなぐさめてフォローしてくれます。このときのふぁいぶの気持ちは、うれしいよりもきっと「なさけなさ」が勝ってしまうんだろうなぁ……と、ちょっとだけ悲しくなりました。

こちらから見れば、「ふぁいぶ」はまだまだ小さくて、そんな背伸びしなくていいよ~できることからやっていこう? って思います。それはきっと、わんたちも同じ。だから、フォローしてくれるのでしょう。とってもかわいい末っ子なのです。

そんななか、いろんな手違いですみっコたちの世界に残ってしまったふぁいぶ。すみっコたちは優しいけれど、気軽に頼れるきょうだいたちはいません。

ふぁいぶはきょうだいたちの前でも“きちんと頑張れるコ”。でも、これまでとは違う環境で“きちんと頑張る”って疲れちゃいます。

とかげはずっといいコ

そんなとき、ふぁいぶに優しくしてくれるのは、家族と離れる寂しさを知るとかげ。前作から感じていましたが、自分の経験から誰かの寂しさに寄り添ってあげることができるとかげは本当にやさしいコです。大人でもなかなかできることではありません。

今回の映画では、特にとかげのやさしさが際立っていました。

いいところも、だめなところもまるっと自分

ひとり残されたふぁいぶは、すみっコたちにやさしくしてもらいます。うれしかった気持ちを返したい! そう思ったふぁいぶは、こっそりと夜に魔法の練習に励みます。

まだまだ小さなふぁいぶ。そう簡単にはいきません。でも、一つの魔法だけはうまくいってしまいました。

ふぁいぶの魔法がきっかけで、あるすみっコたちの性格がガラッとかわってしまいます。これはみんなの個性が消えたということだから、元に戻したいね! と奮闘するのが、この映画の大きな山場の1つ。

すみっコは、消極的なこじんまりした場所が好きなコたちの集まり。ふぁいぶの魔法のおかげで、前向きに変わったコもいました。
それでも、元のみんなに戻ってほしい! とほかのすみっコたちはいろいろと頑張るのです。

果たして、前向きになることは悪いことなのでしょうか?

そういうことではないとはわかっているのですが、個人的にはぺんぎん? は多少前向きになっても問題ないのでは? と思いました。ひよこ? のような被害者を増やさないためにも、少しはポジティブ野郎になったほうがいいです。

少し脱線しましたが、生き物だからいいところもコンプレックスもある。好き嫌いはさておき、それもまるっと自分だと受け入れることが大切。

子どもたちには、そのマインドをぜひ標準装備してほしいです。たぶん、楽しく生きていくうえで一番大切です。

がんばることはカッコ悪くない

「夢」って難しいですよね。本人の気力(と体力)次第で、いくらでも“期限”を延ばすことはできます。

すみっコたちは、それぞれいろんな夢をもっています。いつか叶う! とまっすぐに信じるコ、今は仕方ないと受け入れるコ、漠然と願っているだけのコ……それはすみっコそれぞれです。

でも、どんな夢を持っていても「ふぁいぶ」のように努力しなくてはいけないということは変わりません。

ふぁいぶは頑張り屋さん

中学生と話しているとよく「頑張るのってなんかダサい」と言われます。でも、夢のために頑張ることは何もカッコ悪くありません。そのことを大人が一所懸命に言葉で伝えても、ピンとこないようです。

漫画では描写されにくい、「努力する姿」をふぁいぶが見せてくれたことは、この映画で一番意味があることだったのかもしれません。

※2021/11公開。2022/7/18再編集。動画・画像はお借りしています。